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英格下げ、影響より根拠が重要な理由

 欧州連合(EU)離脱に絡む英国の信用格付けの引き下げは同国にとって痛手だ。だが、そのダメージは財政面より心理的、政治的影響で大きい。

 S&Pグローバル・レーティングは27日、英国のソブリン格付けをこれまでの「AAA」から一気に2段階引き下げ「AA」とした。その後、フィッチ・レーティングスも、「AA+」から「AA」への1段階の引き下げを発表した。いずれも格付け見通しは「弱含み」。格下げの理由に意外性は全くない。EUを離脱した後の英国に関する見通しが不透明であり、経済成長の減速と借り入れの必要性が増すことで債務負担増につながるというのである。巨額の経常赤字のため、英国は海外からの資金調達に対する依存度が高いことを踏まえると、これは潜在的な懸念事項だ。

 だが、今回の格下げ自体はあまり大きな影響を持たないだろう。引き下げはすでに予想されていたことであり、また、金融危機後は世界的にトリプルA格の資産が減っている。極めて重要なことだが、近年格下げの対象となった日本や米国と同様、英国は自国通貨を管理することができるため、信用力の問題は、支払い能力というより支払う意欲に関する問題と言った方がいい。また、投資家が問題のある国から資金を引き揚げてそれをドイツなどに移動させたユーロ圏債務危機と異なり、便利な代替手段として機能する、大規模で流動性の高いポンド資産というのは存在しない。

 英国債利回りは28日に上昇したが、これは株式が上昇し、ポンドが安値から持ち直すといった広範な金融市場の反発を受けたものだ。国債利回りは、ドイツと米国でも上昇している。国民投票後の混乱時、英国債は安全資産として機能した。バークレイズの指数データによると、24日と27日の2営業日における英国債の投資収益率は4.2%、償還期限25年以上の国債においては7.9%となった。これはまた、一部で量的緩和(QE)再開がささやかれているように、イングランド銀行(中央銀行)による金融緩和観測を反映したものだ。

 格付け以外の尺度もより重要になるだろう。ポンドの急落は海外投資家への痛手となった。ドルやユーロに比べれば存在感の小さいポンドだが、国際通貨基金(IMF)によると、世界の外貨準備の4.9%を占める準備通貨だ。長期的には各国政府のポンド保有高が、ポンドの通貨としての健全性を映すバロメーターとなる可能性がある。

 政治的に見ると、今回の格下げは新たな環境で自らを再定義しようとする英国に痛烈な一打となった。投票結果は出た。だが、国民が下した決定の長期的影響が分かるのは数年後だろう。

By RICHARD BARLEY

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