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リーマン・ショックと英国ショックの違い

 6月23日の英国の国民投票によりEUからの離脱が決まった。開票時間に市場が開いていた東京市場では、日経平均が1000円以上も下落し、ドル円は一時99円台まで下落するなど、ややパニック的な動きとなった。24日の欧米市場でもリスク回避の動きが強まり、ダウ平均は610ドル安となるなどしたが、肝心のロンドン株式市場はいったん急落したものの、英国の通貨ポンドも急落したことで輸出株などが買われて、こちらは下げ幅を縮小させた。ただし、27日のロンドン株式市場は続落となっていた。

 2008年9月15日にリーマン・ブラザーズが破綻し、大規模金融機関が破綻したことで金融市場は極度の不安に陥り、これはリーマン・ショックと呼ばれた。巨大金融機関の破綻がもたらす影響を懸念した米政府は金融機関を破綻させない方針に転じ、FRBは9月16日に米国の大手保険会社AIGに対して緊急融資を行うことを表明した。しかし、緊急経済安定化法案が9月29日に下院で否決され、これは金融市場に再び大きなショックを与えることとなり、29日のダウ平均株価は終値で777ドル安と史上最大の下げ幅を記録した。

 英国のEU離脱について、事前の世論調査ではかなり拮抗していた。ただし、2014年におけるスコットランド独立の有無を決める住民投票においても結果として反対派が勝利していたことで、これも踏まえ今回の国民投票も離脱は回避されるとの楽観的な見通しが多かった。このため、開票途中で離脱派の優位が伝えられたことで、市場はパニック的な様相を強めたのである。しかし、英国の国民投票結果により、金融市場に直接何かしらの影響があったわけではない。必死で作り上げたEUという組織の崩壊の兆しに歴史の変化を感じ、先行きの不透明感を強め、急激なリスク回避の動きが起きたものと思われる。

 これに対してリーマン・ブラザーズの破綻は金融市場において直接的な影響を与えることになった。大手金融機関の破綻が金融システムそのものの危機となったのである。例えば日本でもリーマン・ブラザーズ証券の破綻の際に、「正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する」旨が発表され、約定済みの国債取引が一切履行されないという非常事態が発生したのである。

 今回の英国のEUからの離脱により、ロンドンに拠点を置く金融機関などに何らかの影響は出たとしても、金融システムを揺るがすほどのものになるとは思えない。また、英国国民投票で予想外の結果が出たことで、米国の大統領選挙でも予想外というか、なってほしくない候補が大統領になってしまうかも、との懸念も出たようだが、これも選挙結果をみるまでは当然わからない。

 英国のEU離脱により世界経済にも影響が出るのではとの懸念もある。伊勢志摩サミットの首脳宣言でも「成長に向けたさらなる深刻なリスク」と明記されていた。ところが肝心の英国の株式市場をみると懸念などより、24日はポンド安による輸出企業への恩恵が意識されて、下げ幅を大きく縮小させていたのである。むしろ急激な円高も加わっての日本経済への影響の方が大きいのではないかとも思われるぐらいであった。

 英国のEU離脱により、たとえば英国の信用が大きく低下し、英国債が売られるようなことも考えづらく、英国債は買い進まれていた。27日にS&Pは英国の最上位トリプルA格付けを2段階引き下げ、AAとしたがこれにより英国債への影響も限定的ではなかろうか。このあたり2010年のギリシャ・ショックとも異なるところである。金融システムへの直接的な打撃、もしくは国の信認の急低下といった事態は金融市場を直撃し、世界的な金融経済リスクを生じさせる。しかし、今回の英国のEU離脱については、その懸念が全くないわけではないものの、ショックの質が異なるように思われるのである。

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