おやっとさあ、小里泰弘です。
川内原発のあり方が選挙の争点になっていますが、イメージや情緒論だけが先行し、本質論が伝わっていってないのが心配です。
まず原発の再稼働については、原子力規制委員会において「福島の原発事故の100分の1程度の事故でもこれが起きる確率を100万年に1度以下に抑える」という世界最高レベルの審査基準で審査を行い、これに合格しないと再稼働できません。
川内原発はこの審査を経て再稼働したものであり、もちろん考えうる最大レベルの地震や津波にも耐え得る立地や構造になっています。
同時に、万が一の事故にも備えるべく避難計画を策定し、防災訓練を実施しており、鹿児島県の避難計画は他県のモデルとなっています。
一方、「安全」と「安心」は別であって、いかに安全が確保されても、ぬぐいきれない不安感というものがあります。あれほどの原発事故を受け、「脱原発型社会」を目指していかなければならないという点では大筋において皆共通していると思います。経済産業省でも原発依存度を可能な限り低減していくとしています。
ただ、その道筋は単純なものではありません。コストや地球環境への影響を考えながら、理想とするエネルギーミックス(電源構成)を段階的に目指していかなければならないからです。
例えば、現在の電源構成の9割を占める石油や石炭等の火力発電はコストが高く、CO2を大量に発生させます。自然再生エネルギーは地球環境に優しいし、安心ですが、コストが高くつきます。原発は地球環境に優しいしコストが安いものの、不安感がぬぐいきれません。
ちなみに民主党政権下でのベストエネルギーミックスは、電源構成の5割を原発で賄うものとなっていました。
もし、脱原発型社会を急激に目指すがあまりに、今以上にコストがかかり、電気料金が高くなっていく姿になっていくとすれば、生活への影響はもとより、企業の経営悪化や企業や工場がコストの低い海外へ出て行き、国内の雇用が失われる「産業の空洞化」に拍車がかかりかねません。
自然再生エネルギーのコストダウン等の努力も併せて行いながら、段階的に「脱原発型社会」を目指していく必要があるわけです。
「原発反対」の4文字で選挙を誘導することは簡単ですが、責任ある姿勢ではありません。
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- 2016年06月26日 15:15