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イギリス国民選挙に見る高齢者とアイデンティティの問題

関西のとある地方で客商売をしている。

薬局という商売柄、いろいろな年齢層の客と世間話をするが、年齢別で対応する感覚がずいぶん違うな、と感じる。

若者の男性はほとんど話をしたがらない。
若者の女性は自分の身体の話はよくするが、それ以上の話はしない。
中年の男性は自分の身体の話はしたがらないが、少し親密になると仕事や税制や政治の話にのってくる。(特に儲け話には大抵のってくる。)
中年の女性は自分の身体の話に加え、家族、見た目等の話をしたがる。
老年の男性は自分の身体と社会に対してネガティブな話をしたがる。
老年の女性は自分の身体の話に加え、家族、天気、近所づきあい等について話をしたがる。

対応する側としては、若者と老人では(返答までのスピードや突っ込み方など)モードを変える必要がある。

しかし、最も顕著な違いはこういった会話の内容ではなく、テクノロジーの使い方にあることは見ているだけでわかる。

雑誌を手に提げているのは(電子書籍の選択肢のない)中年以降、ガラケーを取り出して人差し指でギューッと押しているのは老人、座った途端スマホをいじり始めるのは中年(女性)以下、店の電話で問い合わせすると小銭を置いていくのが(従量制がデフォルトな)老人。

東京でも同じ商売をしていたが、やっぱり同じような感じだったと思う。

さて、6月23日イギリスで投開票されたEU離脱・残留を問う国民投票では、双方の有権者の偏りが指摘されている。

都市部では住民の7割近くが残留に票を入れたが、郊外や地方都市では離脱が上回るケースが目立った。世論調査によると、学歴による支持の差は顕著で、離脱派は大卒以上で29%だが、義務教育修了では66%。年齢別でも18-24歳では離脱派が25%で、65歳以上では61%と圧倒的だ。
アナリストのサラ・マーティン氏は「保守的な高齢者に(現状への)不満と反発が強かった。」と分析する。
(毎日新聞 6/25)

あまり学力の高くない高齢者の怒りが国民投票の結果に表れた、という分析が可能だが、この年齢層に欲求不満がたまっているという状況はよく理解できる。

彼らはテクノロジーが配給する(ボーダーレスの)サービスの蚊帳の外に置かれており、アイデンティティの軸足は昔からなじみのある国民国家(や崩壊しつつある家族)にある。

彼らにとって押し寄せる移民は単なるカオスの襲来であり、新しい活気による社会の再生という意味は見いだせない。
(仮にテクノロジーによる再生があったとしても、そこに彼らの居場所はない。)

選挙前の大衆紙SUNのタイトルがこれを象徴している。

リンク先を見る

メインタイトルがヒット映画にひっかけた「独立の日」(Independence Day)で、サブタイトルが「今日、EUのくびきからイギリスを解放できるのは君だ」(You can free UK from clutches of the EU today.)。

解放された後がどうなるのか、イギリスの独立とは何を意味しているのかの考察ではなく、アイデンティティの危機と救済のヒロイズムを煽るほうがSUNの主要購買層(高齢右派層)にアピールするのは明白なので、これはこれで戦略としてありなのかもしれない。

(一方、左派の大衆紙ミラーは主要購買層を見越して残留のアピールをしていた。)

You can free UK from clutches of (the EU) today.
のthe EUをとってしまうと、現代(という時代)のくびきからイギリスを解放できるのは君だ、となってしまい、これはこれでかなり皮肉の利いたアピールになってしまう。

(テクノロジーが主導する)時代から解放されることはないのだから。


蛇足

女性は自分の身体周辺の話をしたがるが、男性は身体の外側の話をしたがるのはなぜなのだろう。
性差って絶対あるよな、と思う。

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