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バナナの曲がり方までイチャモンつけるEU……でもイチャモンつける側の事情を察しないとEUは理解できない

僕は「お役所仕事」が大嫌いです。

だから、これから書くことは、決して官僚制(bureaucracy)の擁護ではありません。

英国がEUを抜けたいと考えるひとつの理由に「EUは、色々うるさい」というのがあります。例えば、「バナナの曲がり方にまでイチャモンつける」ということが、よく引き合いに出されます。

もちろんそれは過剰なルールだと思います。

でもEUがなぜ「官僚制の怪物」になってしまったのか?……その経緯を少し考えてみる必要があると思うのです。

たとえば日本では「中国からあやしい食品が入って来るので食の安全が保てない」という議論がありますよね? 

それが事実なのかどうかは、僕はアメリカに住んでいるのでわからないけれど、自分なら(最低限の食の安全は、やっぱり確保して欲しいな)と思います。

ひとたびEUの内側に入ると「ヒト、モノ、カネ」の動きが自由になってしまうので、共通の基準、あるいは一定の水準をクリアする規定を設ける必要がどうしても出るのです。それはバナナにもあてはまるし、ありとあらゆる品目にあてはまります。

これはEUの内側だろうが外側だろうが避けて通れません。

EUは、もともと欧州鉄鋼石炭共同体(ECSC)という生産調整の組織が発展して出来た機構です。

鉄鋼のダンピングが経済戦争の火種になりやすいことは、いまの中国とアメリカが、まさしくこの問題でもめていることを見ればあきらかです。

炭田の立地などの関係で、ドイツは粗鋼を過剰生産しやすい立場にありました。そして、それが市場を求めた侵略へとつながりやすかったです。

第二次世界大戦の後、ドイツを復興させるにあたり、この点をしっかりおさえておく必要があったのです。

ECSCはそのための方便であり、それの「発展型」であるEUは、ひとつの建国の理念、ないしは単一の民族の下で出来た国とは違うのです。

欧州は前世期に2度もひどい大戦を経験し、単にひとつの国がデモクラシーの下で、ちゃんと運営されているだけではダメで、もっと広い視野に立った、超国家的な調整弁が、どうしても必要だという反省が生まれました。

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(全権委任法可決を議会で訴えるヒトラー 出典:ウィキペディア)

ECSCは、そんな欧州人たちの知恵だったのです。

それが超国家的な安全弁、つまり追加的な機構である以上、それ自体はデモクラシーとは何のカンケーもないし、むしろ民主主義だけでは解決できない調停の場だったのです。

だからECSCは最初からテクノクラートたちの活躍の場であったことは当然であり、その意味において、エリート的でもありました。

それ以降、欧州では大きな戦争が起きてないことから考えて、この調整弁は一定の効果を発揮したと考えるべきでしょう。

ECSCがEUに発展する途上で、どんどん新しいメンバー国がふえたので、ルールブックは膨大になりました。

英国の中小企業の中からは「EUから色々なルールを押し付けられて、ペーパーワークが半端ない」と不満が出ています。それは僕も困ったことだと思います。

でもだからといってEUから離脱すればペーパーワークから解放されるか? と言えば、それは甘いです。

今度は関税障壁や輸出に際しての書類整備などに追われる可能性が出てくるわけです。

もちろん、それを克服するために自由貿易協定を結び直すことをこれからやるわけですけど、それには長い年月を要するし、新しい協定はEUメンバー国全てから承認される必要があります。

その間、ビジネスは不確実性に晒されます

経営者は先行きが不透明なときは新規の投資はしないし、採用にだって慎重になります。これは、経営者を責めてもどうしょうもないです。

だから「リスボン条約第50章に基づく離脱の申請をして、2年間の猶予がある」ことをプラスの要因だと勘違いしている人は、会社を経営したことのない人でしょう。

それは不確実性がいつまでもつきまとうことを意味し、スランプが長期化する原因になります

とんでもない不確実性の種を自ら蒔いてしまった英国は、急いでその始末をしなければいけないのです。

今回のイギリスの決断が賢明だったかって?

その審判は、もうマーケットが下している気がします。

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