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「アーリーリタイアが幸せ」という幻想

先日、ask.fmでも愚問ともいえる質問をもらいました。

Q:梅木さんは日本の気候が合わないように思います。40歳ぐらいでシンガポールやハワイに引越しし、セミリタイヤなどはしないのでしょうか?

A:かなり余計なお世話かと思いますが、セミリタイヤという文字は辞書にないですし、海外生活が楽しそうとも思っていません。日本で粛々と仕事したいです。

「リタイア=仕事からの引退」という考え方について、まず歴史的経緯から考えてみましょう。昭和的価値観では60歳までシャカリキに働き定年を迎える。その後、サラリーマン時代にはできなかった趣味などに没頭し余生を楽しもうとする。

現代的価値観では、起業や外資系金融などで30代で資産数億円の富を築いた人が仕事を辞めてハワイとかに隠居しだす。おそらくこれを「セミリタイア」と呼び、学生や若手社会人には「早く稼いでセミリタイアしたい」と言う人も存在する。

ということで「仕事から逃れたい」という人は、昔も今もそれなりの数存在するのだと思います。そしてその多くの意見は「仕事から逃れたことがない人」の意見であると思われます。

私自身は独立して5年経ちますが、平均すると稼働率は50%程度です。効率主義で生産性が高いため、50%の稼働でも一般的なサラリーマンの数倍の稼ぎはコンスタントにありました。

しかし正直にいうと、それで心が満たされるわけでもないのです。

感覚的には稼働率70%くらいで「自分の仕事が相手の役に立ってる気がするな!」くらいの時が一番幸福度は高かった気がします。一方で稼働率が30%くらいの時は「いやあ、マジでヒマ。死にそう。死にたい」となっていました。この「マジでヒマ」は私の場合は四半期に1度くらいは周期的に巡ってきます。

仕事は慣れていけばいくほど生産性が上がっていくので、新規の仕込みをしていない時は、どんどん生産性が上がり、ヒマな時間が増えてしまいます。とはいえ、「作業」をやれば良いわけではないとわかっているので、「やることがない苦痛な状態」を我慢しつつ、考えるという作業に取り組もうとしています。

私は夏場は平日でも鞄も持たず短パンで食事の場に現れたりします。するとそれを見た知人は「何にも縛られてなくてEXITした人っぽい雰囲気を感じますね」と言うこともあります。

数億円の資産を持つわけではないですし、今後も働き続けないと生活が不安なわけですが、それでも「100%縛られた労働」をしなくてもなんとかなるという5年を経てきたわけで、良くも悪くも「なんとかなるさ感」はあるなと思います。

しかし、独立後の5年を振り返って稼働率が30%くらいの「ハーフリタイア」な時期もたまにあったことを鑑みると「アーリーリタイア」が幸せだなんて、私にはとても思えません。毎日本読んでランニングやゴルフしてご飯食べる「だけ」の生活の、何が一体面白いのでしょうか。檻が広い牢獄に入れられているのとさほど変わらない気もします。

それよりは、仕事を通してお金を稼いだり、誰かに自分の存在価値を感じてもらえた方が、精神的な満足度は高いのではないかと思います。

やることが思いつかなくて「ああ、ヒマだ。やばい」と思うことはあるものの、私の辞書には「仕事から解放されたい、稼ぎまくった暁には引退したい」という発想はありません。

昭和的価値観には「サラリーマン時代に失われた時間を老後に楽しんでやる」という発想があると思いますが、今この瞬間にやりたいことは我慢せずにやるというのが私の価値観です。労働体系も柔軟な時代になったことですし、「やりたいことをたくさん見つける力」が今後ますます重要になる気がします。

アーリーリタイアが幸せとか、そういう発想は仕事を能動的にできていない、やらされている感のある栽培マンの発想なのでしょう。仕事も遊びもやりたいことをバランスよくやるのが、一番幸福度が高まる気がしますけどね。

「稼ぎまくってアーリーリタイアしてえ!」という発想から、本稿を読んで「アーリーリタイアがいかにつまらない」かを理解いただき、アーリーリタイアを考えるくらいなら、リタイアしたくないくらい楽しめる仕事を一刻も早く探したほうがいいなと認識を改める人が増えるといいなと思います。大抵の創業経営者は「体の調子が悪くなる直前まで」仕事していますよね。それは彼らが仕事を楽しんでいるからだと思うんですよね。

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