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子宮頸がんワクチン研究班が捏造 厚労省、信州大は調査委設置を 利用される日本の科学報道(続篇) - 村中璃子

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明らかな意図

 池田教授がいいデータを出せと指示したのか。A氏自らがチャンピオンデータを出したのか——。A氏によれば、実験について池田教授に説明したのは昨年12月28日の1時間ほどの一度きりだという。

 A氏とは、池田教授への説明に使ったという、A氏の立場を証明することになるオリジナルのスライドを見せてもらう約束で別れた。

 しかし、「今日中に送ります」と言ったスライドは翌日になっても届かず、リマインドのメールを送っても返事がない。非通知でかけた電話にやっと出たが「確認して送るところです」と言ったきり、連絡がつかなくなった。最終的には、編集部からの電話を「出す必要ない」とだけ言って一方的に切ったという。

 A氏は、N=1であることも、脳切片と血清の出所が別であることも、他のワクチンでも緑色に染まることも、問わなければ答えなかった。

 ではなぜ「飛躍があり、リンケージもない」とA氏自らが認める実験が、計画され、実施されたのか。

 そして、何百万人という人が視聴する主要ニュース番組を通じて、池田教授があのような発表を行ったのか――。

 不自然な実験内容、池田教授のテレビでの表現、すぐ出せるはずのオリジナルスライドを一切出さなかったことなどを総合すると、これは「子宮頸がんワクチンを打ったマウスの脳に障害が起きた」と言うために造られた実験であり、“捏造の意図”があったと結論付けざるを得ない。

辞任でうやむや?

 本誌ウェブWedgeInfinityで「子宮頸がんワクチン薬害研究班に捏造行為が発覚 利用される科学報道(後篇)」が公開された翌6月18日、池田教授の地元、長野県飯田市では、信州大学第三内科の同窓会が行われた。冒頭の挨拶で池田教授は、なぜか「お叱りを受けた」という言葉を繰り返しながら、自らの去就について述べた。

 その内容は、ウェブ記事公開の2週間以上も前の5月下旬、「同窓会員の皆さまへ」というタイトルで医局員宛てに送られたメールとほぼ同じで、近く第三内科の主任教授と医学部長を同時辞任するつもりであるというものだった。

 池田教授は2度の挑戦で医学部長となり、学長選に立候補して敗れ、副学長となっている。メールが送られてきた5月下旬、あれほどまでに執着して就任した医学部長を任期前に辞めると言いだした池田教授に一体何があったのかと医局内は騒然としていたという。

 この問題が明るみに出る前から辞任の意を表明していたという池田教授。信州大学には、ガバナンスの甘さが深刻な問題を生んでいる現状を自覚し、池田教授が辞任してしまう前にしっかりとこの問題を追及し、信頼を取り戻してほしい。

 大学の信頼だけでなく、アカデミア全体の信頼のためにも、だ。

 池田教授は、医学部長で副学長であるだけでなく、数千万円の税金を使いながら子宮頸がんワクチン副反応問題という、公衆衛生行政の要である“定期接種ワクチン”の研究を行っている厚生労働省指定の研究班の班長である。

 子宮頚がんで失われる日本人女性の命は年間約3000人。

 命に責任を持つ仕事をする医師の1人として、HLA型(関連記事)もマウスも「知らなかった」「勘違いだった」「予備段階の実験だった」では済まされない。

 また、「論文に出したわけではない」「メディアが報じただけ」という弁明も通用しない。成果発表会より前に、論文をはるかに上回る社会的インパクトのあるTBSの取材をわざわざ受けたのは池田教授自身だ。

当事者たちに反省なし

 池田教授の言動は、アカデミアに不正問題に迅速に対応する制度がないことや、科学が分かりにくいことを上手に利用した、科学者として許しがたいものである。

 このような医師・研究者を、雇用している信州大学や、研究班長に指定して税金を使って研究を行わせてきた厚生労働省は、調査委員会を設置して、直ちに調査に入るべきだ。

 ウェブへの転載にあたり、A氏に追加の質問と、抗議や加筆すべき点を訊ねるメールを送った。A氏からの返信は以下のとおりだ。

村中先生
御世話になっております。
私といたしましては、先日御会いした際、御話しをした内容が真実で、だいたい全てです。信州大学医学部産婦人科講座といたしまして、「子宮頸がんワクチンの接種」には賛成です。ただ、ごく一部で、同ワクチン接種後に、副作用が認められます。これが、何かしらの遺伝的素因が原因かもしれません。
ですので、自己免疫疾患の素因を有するマウスを用いて検討を行っておりますが、まだ、パイロット実験の状態で、有意差を認められるような結果は得られていません。将来、何かしらの情報が得られれば、医療機関で同ワクチン接種の際、付加コメントが出来れば良いかと思っています。宜しく御願い致します。
A

 Wedge編集部は7月号発売直前の6月17日、厚労省担当課に記事の内容を説明しに行った際に、池田修一教授から厚労省に対し電話が入ったと耳にしたという。

「ウェッジは人権侵害である」と池田教授は言ったそうだ。

 編集部は、「このような方が副学長、医学部長の任にあることは大きな問題であると考えます。大学として何らかの措置をとられるべきではないかと存じます」との手紙を添えて、信州大の学長宛てにWedge7月号を6月17日午前着の宅配便で送付している。学長に呼び出された池田修一教授は、このような手紙を学長に送ることは人権侵害だと言っているらしい。

 記事で問われた実験内容については一切のコメントなく、人権侵害だという怒りの電話をなぜか厚労省にかける池田修一教授。何が人権侵害なのか不明だが、万が一そうだとしても、言うべき相手は編集部だろう。

 編集部は、池田修一教授にも同日着でWedge7月号を届けている。「先日は当方の取材に対して誠実なご回答がいただけませんでしたが、どういうお考えでこのようなことをなさったのか、ぜひ改めてきちんとお答えいただけないでしょうか」という手紙を添えて。

 まもなく1週間が経つが、池田教授からリアクションはない。

 それぞれの立場と動機から、捏造に手を染める研究者たち——これが国費を投じた子宮頸がんワクチン薬害研究班の実態だ。子宮頸がん罹患リスクを負ったワクチン未接種の少女たちとワクチンに人生を奪われたと苦しむ少女たちの未来は、こんな大人たちの手に委ねられている。

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