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英国離脱でも、冷静に見たほうがいい

若い世代が多いロンドンなどの都市部での開票が先に進み、残留とする投票が優勢のようでしたが、地域によって差があり、開票が進んでいけば結果がどうなるのかは、まだわかりません。いずれにしても世界の目が英国の国民投票の結果に釘付けとなり一喜一憂し、為替や株価が動く様子は、いかに世界の経済がつながっているのかを示しています。

AFPによれば、オンライン専業のブックメーカー(賭け業者)、ベットフェア(Betfair)の払戻金総額は最高記録を更新し、6000万ユーロ(約71億2000万円)近くに達しているとか。祭りですね。ベットフェアは投票前日の時点で、74%の確率で「残留」との予測を示しているそうです。

英国民投票、賭け史上最大の政治イベントに 払戻金70億円超:AFPBB News :

しかし、世論調査では、調査の誤差の範囲となってしまうほど残留と離脱で拮抗しており、結果は実際に開票されないと結果がわかりません。

開票が進むに連れ離脱票が増えてくることは予測通りのようですが、日産の工場があり日産の城下町であるサンダーランド市で離脱が残留を20ポイント以上と予想以上の大差で上回ったというのは驚きです。離脱すれば、EU向けの自動車は輸出となり関税がかかるようになるので、日産の工場がフランスに移転してしまう可能性がでてくるというのにです。

英国民投票、開票続く 234地区で終了、離脱がリード:朝日新聞デジタル : 

さて、現代は、グローバル化、国民主権、民主主義、この3つのうち2つしか同時に実現できない時代だとも言われていますが、「残留」は、グローバル化と民主主義の2つをとることになり、国民主権は犠牲になってしまいます。なにせ些細なことまでEUの規制に従わなければならないのですから。それは英国としてのアイデンティを失っていくことにもつながり、アレルギー反応も起こってくるのでしょう。「離脱」はEUという広大なマーケットを自由に耕せ、グローバル経済を広げることは犠牲にしても、国民主権と民主主義は守れます。

それよりも面白いのは、イギリスが離脱した際の影響について、マスコミに登場してくるコメンテーターの人のなかには、リーマンショック級の悪影響を受けると煽るだけで、なぜそうなるのか、また為替や株価以外の日本が被る具体的影響についてはまったく語らない人もいてがっかりします。

おそらくまだ結果がもたらす影響がイメージが出来ないのでしょうか。もちろん短期的には、ポンドやユーロが売られ、それが安全通貨の円に流れるために、円高・株安となる公算が極めて高いことはいうまでもありません。先進国のなかではいまだに経済が停滞したままで、しかも金融政策以外に効果があがっていないアベノミクスはその影響をもろに受けそうです。

また日本にかぎらず、さまざまな金融取引に思惑が交錯してカオスのような状況になって予測がつかない混乱が生じるということはあるかもしれません。

正直に言えば、英国国民にとっても、その結果やその影響がわからない、予想がつかないから、残留と離脱が二分されてしまうのです。

離脱の悪影響ばかりが強調されていますが、離脱派のほうが対EUとの交渉での立ち位置では残留派よりは有利になる可能性もあって、残留を主張するキャメロン首相よりも巧妙かもしれません。残留にしても、離脱にしても、EUは、英国とどのような関係を保てばいいのかの模索しなければならなくなってくるからです。



短期的には混乱があっても、中長期的には、英国のEU離脱が英国にとってプラスになってくる可能性もなきにしもあらずだという見方もあります。荒唐無稽ではなく、説得力があると思います。金融市場の短期的・あるいは中期的なトレンドの変化で世界を眺めるのか、経済全体の構造変化で世界を眺めるのかでも見方は違ってくるのではないでしょうか。

いずれにしても、複雑性がかつてないほど増してきた現代は、一方的に危機を煽ることは健全な思考や議論に水を指します。

英EU離脱で「英連邦」が超巨大経済圏として出現する|上久保誠人のクリティカル・アナリティクス 

 

それにしても国民が参加して国の進路を決めることは民主主義の観点では素晴らしいことです。大阪市では都構想をめぐる住民投票がありましたが、日本の参院選のように、与野党ともに、なにを争点としようとしているのかがよくわからない選挙よりははるかにいいのではないでしょうか。

いずれにしても、今回の国民投票で、EU残留となっても、離脱になったとしても、EUという理想主義が揺らぎ、その揺れ幅が増幅されてくることは間違いないでしょう。

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