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「世論調査」か「世論操作」か 〜 「二匹目のドジョウ」を得た新首相が迎える「内憂外患」

野田新内閣誕生に伴い、各メディアによる緊急世論調査が実施され、その結果が一斉に報じられている。

「ドジョウ演説」の効果なのか、総じて言えることは、新内閣の支持率が意外と高いこと(日本経済新聞67%、朝日新聞53%、読売新聞65%、毎日新聞56%、共同通信62%)。

「こういうルックスなので、総理になっても支持率は上がりません。だから解散はしません」という「脱解散・総選挙」を訴えた「ドジョウ演説」で「解散・総選挙恐怖症」に陥っている民主党国会議員の支持獲得に成功した野田新首相。自虐的とも言える「ドジョウ演説」は、2代続けて「ペテン師首相」に騙され続けた謙虚さを美徳とする国民に、「首相の人柄が信頼できる」という曖昧ながらも好イメージを植え付けるという副次的効果も発揮したようだ。野田新首相にとっては「二匹目のドジョウ」がいた格好。

とは言え目を引くことは、高支持率と言え、政権発足時の支持率において「菅超え」を果たせないか、「菅並」に留まったこと。日本経済新聞の調査では「野田内閣の支持率は調査開始以来、政権発足時としては歴代6位」という高さではあるものの、「鳩山内閣の 75%、菅内閣の68%には届かなかった」。

こうした結果が示唆していることは、有権者の間で「民主党政権に対する期待が徐々に剥げ落ちて来ている」こと。毎度のことであるが、「人柄が信頼できる(日経50%)」「政治のあり方が変わりそうだから(毎日61%)」という、実態を伴わないメディアを通して作り上げられるイメージが新内閣を支持する最大の理由であるところに、日本の政治の不安定さが現れている。

同時に、各社の「世論調査」の結果をみて感じることは、「世論調査」が本来の有権者の「声なき声(サイレントマジョリティー)」を「見える化」する役割よりも、マスコミによる「世論操作」の浸透度合いを図る道具としての重要性が増して来ているということ。

今回の各社の世論調査の質問項目を見ると、「野田佳彦首相は民主党の小沢一郎元代表とどのような関係を保つべきだと思いますか(日経)」「政治資金問題で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表は、判決確定まで民主党の党員資格が停止されています。小沢元代表の党員資格停止処分を見直すべきだと思いますか(毎日)」というような、改めて「反小沢」意識を喚起させる質問を用意し、「反小沢」方向に回答を誘導する仕立てとなっている。そして仕上げは、誘導した調査結果に基づいて「『小沢元代表と距離を』 65%」(日本経済新聞)と大きく報道し、有権者に世論は圧倒的に「反小沢」であることを印象付けるというお決まりの構成になっている。

首相でも閣僚でも、党役員でもない一政治家に関する誘導質問を世論調査項目に潜り込ませ、その結果を大々的に報道する必要がどれほどあるのだろうか。

「脱小沢」を叫ぶ大手メディアが何時までも「小沢離れ」出来ないことこそが日本の政治レベルを低い次元に留まらせている大きな要因でもある。穿った見方をすれば、「国民軽視の官僚・大企業主導社会」を目指す日本のメディアは、政治家が「担ぐ神輿は軽い方が良い」というのと同様、「洗脳する国民はレベルが低い方が良い」と考えていると勘ぐられても仕方がない。

自虐的な「ドジョウ演説」で国民のイメージアップに成功した格好の野田新内閣であるが、行く手にはイメージダウンに繋がりかねない厳しい試練が待っている。

まずは3日、野田新首相が2001年〜03年、在日韓国人の男性から158,000円の献金を受け取っていたことが明らかになった。政治資金規正法の公訴時効3年を既に経過しているとはいえ、民主党代表選挙での野田代表誕生をアシストしたのは、「本命」と目されていた前原前外務相の「外国人献金問題」に関する自爆であったことも事実であり、この「ドジョウ汚染」に対する「説明責任」の果たし方は難しい。

さらには、この週末に細川元首相が久しぶりにメディアの前に姿を現し、民主党代表選の最中に「野田、小沢会談」を設定したことを明らかにした。5人の候補者のなかで唯一「小沢詣で」をしなかったとされて来た野田新首相が、秘密裏に「小沢詣で」をしていたことが明らかになれば、「ノーサイドにしましょう、もう」という言葉も単なる「小芝居」だったことになってしまう。

「外国人献金問題」と「隠密裏の小沢詣で」は、対応次第では「実態を伴わないメディアを通して作り上げられるイメージが最大の支持理由」である野田新内閣にとって打撃になりかねない出来事。

これに加えて、実態を伴う面での不安材料は、9日〜10日仏マルセイユで開催されるG7。欧州の財政問題が金融市場での「懸念」から「危機への具体的対応」段階へ移り、米国ではFRBが「雇用なき景気減速下のインフレ」に有効な処方箋を出せずに苦慮している中で開催される今度のG7は、「国益」がぶつかり合う厳しい会議になることが想像される。

野田新「軽量」内閣の中で、最も「軽量」である安住財務相はデビュー戦に向けて「日本の立場をG7でしっかり話す」と意気込みを見せているようであるが、「国益」がぶつかり合うG7で、国会対策委員長という「内向きの政治経験」が通用するかは怪しい限り。

「安住氏は経験が豊富ではなく、実は野田佳彦首相が重要事項を判断する」という見方もあるようであるが、「重要事項を判断する」野田新首相(当時財務相)も8 月の為替介入時には「各国と緊密な連絡をとっている」としながらも、結果的に全く理解を得られずに「孤独介入」に追い込まれた「前科」があり、総理大臣としての能力は未知数ながら、財務相としての能力不足は既に周知の事実となっている。

財務相就任時に「これからは政策の安住」とアピールした「素人財務相」が、どのような「政策」を打ち出せるのか。財務相としての能力不足を露呈済みである野田新首相の後ろ盾に期待しているとしたら、日本のG7における地位の「軽量化」は避けられないだろう。

内憂外患。今週の野田新首相は、国内で「外国人献金問題」や「隠密裏での小沢詣で」に関する説明に苦労することが予想されるうえ、週末のG7では、「素人財務相」を任命してしまった自らの判断の誤りに苦慮することになりそうだ。野田新「軽量」内閣には、意外に高かった内閣支持率に安心していられる時間は殆どない。

⇒【参考】
適材適所 〜 「市場を注意深く見守る」と「必要な時には断固たる措置をとる」の2つフレーズを覚えてしまえば「素人」でも務まるポスト

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