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政局絡みのキナ臭さ 〜 「財政再建原理主義」の大手新聞子会社が唐突に発した「日本国債格下げ警告」

米格付け機関フィッチ・レーティングズは16日、米国は資産と金融上の柔軟性から見て、引き続き世界で最も信用できる借り手の一つであると指摘、債務水準が予想以上に拡大した場合にはアウトルックを「ネガティブ」に引き下げる可能性を示唆しつつも、米国債の長期信用格付けを最上位の「AAA」に据え置くと発表。5日に、議会の歳出削減策は過去最高の財政赤字を削減するのに不十分であることを理由に挙げ米国債の格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げた S&Pとは対照的な判断を示した。

それもそのはず、S&Pの格下げを受けて懸念された長期金利の上昇は全く見られず、「米国債格下げ」後米国10年債利回りは2.2%台と極めて低い水準まで低下して来ており、「格下げ」は金融市場に完全に無視されている。ブルームバーグと欧州証券アナリスト協会連合会(EFFAS)がまとめた指数によると、米国債の年初からのリターンは6.4%と、日本国債の同1%、ドイツ国債の同 4.6%を上回る高パフォーマンスを記録し、S&Pは世間に恥を晒した格好。

S&Pの「米国債格下げ」が金融市場で無視される中、日本の大手格付け会社である、格付投資情報センター(R&I)は、「来年度の予算に想定以上の緊縮財政措置が盛り込まれない限り」現在最上級に格付けしている日本国債の格付けを引き下げると警告を発した。そして「日本国債格下げの確率は50%以上」と、「日本国債格下げ」の可能性がかなり高いことを示した。

「格付け機関の理論」に従えば、公的債務残高(Gross)がGDPとほぼ同規模(IMF WEO April)の米国債が格下げされており、公的債務残高(Gross)がGDPの約2.3倍(同)まで膨れ上がって来ている日本の「国債格下げ」はごく当然のことだと言える。しかし、今回のR&Iの「日本国債格下げ警告」からは、「政局絡みのキナ臭さ」を感じずにはいられない。

「政局絡みのキナ臭さ」を感じてしまうのは、そのタイミング。2001年3月から10年以上の長期間に渡って日本国債格付けの見通しを「ネガティブ」として来たR&Iが、何故ここに来て唐突に「日本国債格下げ警告」を発したのだろうか。

折しも現在は「本命なきポスト菅レース」が行われている。そのレースの有力候補となっているのが「大連立による増税路線」を掲げる「財政再建原理主義者」である野田財務相。R&Iが表明している「来年度の予算に想定以上の緊縮財政措置が盛り込まれない限り」という条件は、野田財務相以外の「反増税候補」が首相の座に就いた際には「日本国債格下げ」を実施するという「脅迫」とも受け取れるもの。

因みにR&Iは、国内での「財政再建原理主義」布教活動の先頭に立っている日本経済新聞社が議決権の過半数以上を握る連結子会社である。日本経済新聞が、自らの主張する「財政再建原理主義」を推し進めるために、連結子会社である格付け会社R&Iに「予想以上の緊縮財政措置を盛り込まない限り日本国債を格下げする」と警告を出させることで「財政再建原理主義」の世論を煽り、それによって「財政再建原理主義者」の野田財務相を次期首相に就かせようと画策していても不思議ではない。

為替市場ではまたジリジリと円高が進んで来ている。円の供給量が相対的に少なく、資金供給面から円高圧力がかかり易い状況下で「財政再建原理主義者」の首相誕生となれば、政治面からも円高圧力が加わることになる。

米国ではオバマ大統領が「増税による財政赤字削減」を提唱したことで「政治的デフォルト」の危機に見舞われたし、欧州では「実質的デフォルトした国」で緊縮財政政策に反対する大規模なゼネストが起きた。欧米で「増税に対する拒絶反応」が強まっているのに対して、マスメディアに洗脳されてしまっている日本では、国民の多くが増税に理解を示し、「財政再建原理主義者」の首相まで誕生させようとしている。「増税による財政再建」のハードルが高くなっている欧米の投資家の目に、日本のこうした状況が「国民が保証人になってくれる希少な国」と映ったとしても不思議ではない。「国民が保証人になってくれる」という点において、日本は間違いなく「世界で最も安全な国」なのである。

「財政再建原理主義」が浸透する日本では、円高が今後想定されている「高めの成長」のリスク要因だとされている。もし、円が「世界で最も安全な国の通貨」として買われているのだとしたら、一日も早く円を「安全ではない国の通貨」にしなくてはならない。そのために必要なことは、「脱、財政再建原理主義」により、「国民が保証人になってくれる希少な国」という看板を下ろすことである。

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