- 2016年06月23日 10:07
ロンドン市長にイスラム教徒初選出その意外な理由 - 藤原尚美 (フリージャーナリスト、元毎日新聞記者)
英国で5月にあったロンドン市長選で、野党・労働党のサディク・カーン氏が、与党・保守党のザック・ゴールドスミス氏に勝利し、イスラム教徒初のロンドン市長となった。
ゴールドスミス氏はユダヤ財閥出身でイートン校を薬物使用で中退した。カーン氏は人権派の弁護士でパキスタンからの移民を親に持つ。専門家は、ゴールドスミス氏の差別的な発言が裏目に出た一方、カーン氏の経歴がロンドン市民の“革新性”という気風にマッチしたとする。
ゴールドスミス氏はカーン氏の過去を持ち出し、イスラム教の過激派と結びつけるイメージ戦略を展開。保守層に訴えかける戦略に出た。保守党の選挙参謀、リントン・クロスビー氏の振り付けによるものだが、この狙いは裏目に出た。労働党は、保守党が「イスラム嫌い」のキャンペーンをしていると大批判を展開した。だが特定宗教や人種を批判する戦術は、失敗するのが通り相場だ。
実は移民とイスラム教徒に支えられるロンドン
そもそもロンドンにおける移民の割合は39%に達し(13年)、飛び交う言語は150カ国語に及ぶ。とりわけ外国人やイスラム教徒に支えられている金融街シティーは、英国の国内総生産(GDP)の1割超を生み出す。イスラム教徒の議員や政府高官は当たり前になっている。それもこれも、「国際金融都市ロンドンを維持する」という目的のためだ。
選挙戦後半には保守党内部からも「財閥の御曹司に足をすくわれたくない」(保守党関係者)とゴールドスミス氏へ批判の声が強まった。
「人権派弁護士」「バス運転手の息子」「パキスタン移民2世」「イスラム教徒」。いくつものキーワードを有し、大きな期待を背負ったカーン氏だが、実際の政治的手腕は未知数だ。
イスラム教徒にとっての断食月に当たるラマダンが始まったが、イスラム国(IS)がこの時期、ロンドンを攻撃するとのうわさも飛び交っている。また、国内外の富裕層の資金流入でロンドンの住宅価格と家賃は上昇を続け、庶民の不満は高まっている。
ロンドンの安全と市民生活をどう守るのか、カーン氏はのっけから試練と向き合うことになりそうだ。
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