- 2016年06月23日 08:30
アップル・マックブック vs HPスペクター 極薄の闘い
これをうまく表現できるだろうか。あなたのノートパソコンはあと数十グラムやせられる、とでも言えば良いのだろうか。
だが、それが事実なのだ。最近発売されたとんでもなく薄いノートパソコンと比べると、かつてスリムと言われていたマックブック・エアやデルのXPS13は、ランチに好物のラザニアを食べた後のガーフィールド(漫画の猫のキャラクター)のように太って見える。このコメントで開発者の自尊心を傷つけたとしたら謝罪するが。
HPは今月、「スペクター」の販売を開始した。これは同社いわく「世界最薄のノートパソコン」で、薄さは0.41インチ(約1.04センチ)と、朝食のパンケーキ1枚分(バナナは除く)だ。さらに印象的なのは、その薄さが処理能力の低下につながっていないことだ。アップルの新型マックブックとはその点で異なっている。
HP幹部は、高級ノートパソコンメーカーのアップルをイノベーション面で追い越す努力に集中してきた。確かにアップルのマックブックは、ウィンドウズ10搭載のスペクターよりも0.1インチ厚い。ただ、その差はぱっと見ただけでは分からず、5倍の拡大レンズとメジャーを使ってもほとんど違いがないほどだった。
これが、ハイテク業界のいわば「薄型オリンピック」が時間の無駄だと私が長年主張している理由だ。「当社の新製品は競合他社製品よりこんなに薄いので、あなたのメッセンジャーバッグに紙をもう1枚入れられるようになります。ですが、別に充電器を入れられる場所を取っておく必要があります。なぜなら、電池の容量を少し削ったからです。ごめんなさい!」とでも言うのだろうか。
薄型化の方程式は長年、「薄型+軽量=処理能力低下+電池寿命短縮」というものだった。スペクターも4月に新型が出たマックブックも、あなたに多少の犠牲を強いている。だが、それらのトレードオフは、超薄型ノートパソコンを保有する恩恵を超えるものではなくなった。現在の超薄型ノートパソコンは、お望みならばチーズ用ナイフとしても兼用できるかもしれないほどだ。
肝心なのはポートの数
ポートとノートパソコンの関係は、アイスクリームと、ダイエットしようとする人間の関係のようなものだ。その量を制限して、制限前の写真と制限後の写真とを比較すると、ショックを受ける。
マックブックには、ヘッドホン用のジャックを除けば、USBポートが1つしかない。しかも、それは見慣れた種類のものではない。チックタック(ミント味の菓子)ほどの大きさのUSB-Cポートは、パソコンの充電や外付けディスプレーなどの付属品の接続に使う。
われわれはいつかポート数の制約という状況を乗り越えられるだろう。DVDドライブの消滅を乗り越えられたように。だが、現時点では2つの問題点がある。
まず、このポートは見慣れないものであるため、これまで当たり前のようにやってきたことができない。例えば、普通のUSBケーブルでパソコンにiPhone(アイフォーン)をつなぐといったことだ。2つ目は、私には1つのポートでは足りないという問題だ。お薦めの解決策は、「Hyperdrive USB Type-C 5-in-1 Hub」など、フルサイズのUSBポートとSDカードスロットがあるハブを購入することだ。
アップルはHPからポートに関するアイデアを少し拝借すべきだろう。スペクターは、背面に3つのUSB-Cポートがあり、うち2つはマックブックのポート以上のパワーを扱える。しかも、ベスト・バイでスペクターを購入すれば、USB-Cポートから通常のUSBポートに変換するアダプターが付いてくる。
性能で優先することは
ノートパソコンが薄くなると、バッテリーを置けるスペースが狭くなるため、比較的処理能力の低いチップが搭載される傾向がある。ただし、マックブックとスペクターに搭載されている最新チップは、比較的効率性を保ちながら、処理能力を上げている。
アップルは最近、マックブックにインテルの新型プロセッサー「コアM」を搭載した。これは昨年のチップより20%高速だ。私は使っていてこれに気が付いた。以前のモデルでは、アプリケーションを開いてマルチタスクをするのにあまりにも長い時間がかかっていた。新型は、私がいつも通りに複数のブラウザを開けたままアプリケーションを使っても、より速く動く。動きが遅くなるのは、(アドビの画像編集ソフト)フォトショップで画像中心の作業をしているときだけだ。
スペクターにはインテルのミドルレンジチップ「i5」を搭載するモデルと、ハイエンドの「i7」を搭載するモデルがある。これらの処理能力は、コアMを最大で25%上回る。私がテストしたところによると、ウェブサーフィンをしたり、アプリを立ち上げたりしたときの速さは、スペクターもマックブックも同じくらいだった。だが、フォトショップで複数の大きな画像を編集するとなると、HPの方がはるかにやりやすかった。
この速さにはデメリットもある。スペクターのファンは、ときどきオフィスの空調が始まるときのような音を立てる。音はソフトウエアの修正で少しおさまったが、いまも音を立てる場合がある(マックブックにはファンが付いていない。本体が熱くなったときには、プログラムを閉じることを推奨している)。
スペクターはバッテリーの点でもマックブックに劣る。私はテストを行った。それは画面の明るさを80%前後に設定して一連のウェブサイトを表示させておくテストだ。スペクターの稼働時間は6.5時間、マックブックは昨年のモデルより1時間長い8.5時間だった。しかも、マックブックはHPより画面の画素が細かいにもかかわらず、そうだった。日常的な使用でも、マックブックはスペクターより長時間動いた。だが、両者とも、より大型のマックブック・エアやデルのXPS13の11時間には届かなかった(電池寿命が気になるなら、ネイティブのブラウザを使うことをお勧めする。ウィンドウズならエッジ、マックならサファリだ)。
スペクターとマックブックはコンピューターの進歩の象徴であり、その発売はウィンドウズないしマックのハードウエアを探している人にとって朗報だ。マックブックの性能と電池寿命が1年でこれほど改善したことは注目に値する。
それでも、その薄さに誘惑される前に、ポート・性能・電池寿命を踏まえた上で持ち運びやすさ(薄さ)にどれほどの価値があるかを自問し、どの程度なら妥協できるかについて考えるべきだろう。スペクターの価格は1170ドルから、マックブックは1300ドルからだ。ただ、これより分厚いノートパソコンなら1000ドル未満で買える。
By JOANNA STERN- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)
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