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復刻版スニーカーが「ドル箱」に、購買層変化

Tシャツ、ジーンズと並び、カジュアル衣料の中で確たる地位を築いたスニーカー。ストリートカルチャーにとってはもちろん、最新ファッションに敏感な人や会社員にとっても欠かせない存在となった。スーツにスニーカーという組み合わせを目にすることも多い。

 今、シューズメーカーの事業を支えているのがレトロスニーカーだ。スケーターや著名人、花嫁までが、バスケットボールのスター選手カリーム・アブドゥル・ジャバーや女子テニスのビリー・ジーン・キングのシグネチャーモデルといったスニーカーを履いた写真をソーシャルメディアに投稿している。

 都会の文化を紹介するサイト「コンプレックス」のシニアエディター、ラス・ベングトソン氏は、これらのモデルは「もうクラシックと言っていいほど昔からある」と語る。

 市場調査会社NPDグループの推計によると、「ヘリテージ」シューズともいわれる復刻版は昨年、米国の靴市場の中で最も高い成長率を記録した。NPDの推計では、復刻版は売上高が前年比50%以上増加し、172億ドル(約1兆7800億円)の米スポーツシューズ市場の約20%を占めている。

アディダスにとってドル箱



 過去の名作の復刻を進めているドイツのスポーツ用品メーカー、アディダスとプーマにとっては朗報だ。両社は市場の競争が激化するなか、かつての自信を取り戻そうと努力している。過去の製品ならそれぞれ70年分もある。

 米ナイキに次ぐスポーツウエアメーカー世界2位のアディダスにとってのドル箱は、1960年代に発売された革製のテニスシューズやバスケットボールシューズだ。同社「オリジナルス」部門のゼネラルマネジャー、アーサー・ホールド氏はこれらのモデルが「成功を支えている」と話す。

 アディダスによると、昨年の売上高が20%近く伸びたのはオリジナルスの売上高が急増したため。2015年の全体の売上高は169億ユーロ(約1兆9800億円)で、オリジナルスの売上高は2桁の伸びを示した。同社が苦戦していた米国でも好調だったという。

 アディダス「スタンスミス」の販売数は半世紀で累計約5000万足だったが、昨年は1年間だけで800万足となった。アディダスのトレードマークともいえる3本線を配した「スーパースター」の販売数も昨年は1500万足に上ったという。どちらのモデルも価格は平均で約70ドルだ。

 オリジナルスのホールド氏はこのどちらも「最優良資産」と語る。

 一方、プーマのビヨン・グルデン最高経営責任者(CEO)は慎重だ。

 グルデン氏は「ヘリテージスニーカーは事業にとって重要な存在」だが、人気は長続きしないだろうとみている。「流行はやってきては去るものだ」と語るグルデン氏によると、レトロシューズでも今はバスケットボースシューズが人気だが、最近まではランニングシューズのほうが流行っていた。

 昨年のプーマの売上高は34億ユーロで、前年の29億ユーロから大幅増となった。

 レトロスニーカー人気には数十年の歴史がある。1982年にはラップグループ、Run-DMCの「マイ・アディダス」がヒットし、アディダスの「スーパースター」が注目された。メンバーのダリル・マクダニエルズ氏は「ブレークダンサーやDJたちが履いていたスニーカーをポジティブに表現したかった」と語った。マクダニエルズ氏は今もアディダスを愛用する。

 その10年後、マドンナが古いアディダス・ガゼルを履いて舞台に登場すると、同社は過去にヒットしたスニーカーを増産した。

 1980年代にマイケル・ジョーダンの名を冠したバスケットボールシューズ「エアジョーダン」を発売したナイキは、ジョーダンの2度の引退に際して復刻版を販売した。

 現在のスポーツシューズは大まかに言って、スポーツ選手向けの機能重視モデルと、必ずしもスポーツを目的としない消費者向けの「ライフスタイル」シューズに分かれる。今、ライフスタイルシューズとして販売されているスニーカーの多くは過去にスポーツ選手向けとして販売されていたモデルだ。

 メーンファースト・バンクのアナリスト、ジョン・ガイ氏によると、ナイキは以前から、アディダスやプーマよりレトロシューズのマーケティングや活用に積極的だった。NPDのアナリスト、マット・パウエル氏はレトロスニーカーの販売数はナイキが最も多いと話す。

ナイキは傘下ブランドのコンバースに、約100年前に発売されて今も根強い人気を誇る「チャックテイラー オールスター」も持っている。

 ナイキの広報担当者は、復刻モデルでも新しい新素材や構造は採用しているが、「当社が持つ遺産を称えることに大きな価値がある」と述べた。現在、ナイキの「エアマックス」は約150ドル、エアジョーダンはおよそ100ドルで販売されている。

新境地開拓で変わる購買層



 今のレトロスニーカーブームを特徴づけているのは購買層の変化だ。アディダスやプーマのレトロスニーカーはフォーマルシューズを脇に追いやり、ファッションの新境地を切り開いた。

 アディダスが2014年にスタンスミスを復刻すると、ファッション業界が反応した。高級ブランドのデザイナー、フィービー・ファイロ氏やラフ・シモンズ氏、マーク・ジェイコブス氏がこぞって白とグリーンのスタンスミスを履いた。米国のデザイナー、アレキサンダー・ワン氏はスタンスミスをヒントにファッションショー向けの作品を発表した。

 一方でナイキのレトロスニーカーを買っているのは主にスポーツをする若者だ。スニーカーに特化したサイト「ナイスキックス」の創業者マット・ハーフヒル氏は「アディダスのほうがより広い消費者を狙っている」と話す。

 レトロスニーカーではアディダスがナイキより有利との見方がある。コンプレックスのベングトソン氏はアディダスのモデルが「流行が生まれる以前のもの」で、アディダスのレトロスニーカーを履いて「街を歩いても『ひどいね』とは言われない」と話す。

 レトロスニーカー人気への対応で各ブランドが気を付けているのが製品の過剰露出を避けることだ。アディダス幹部はRun-DMCのおかげで高まったアディダス人気への対応を誤り、製品を過剰に供給してせっかくの人気をつぶしてしまったことを認めている。

 アディダスのホールド氏は消費者の関心を維持するため、さまざまな種類の製品を常に供給して、全体を見ながらレトロ人気に対応していると話す。

 プーマのグルデン氏はそれ以上に、過剰なマーケティングを抑制することと、機能性シューズと 新たなライフスタイルシューズ、ヘリテージシューズの「バランスをうまくとる」ことが重要だと語った。

By ELLEN EMMERENTZE JERVELL

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