記事

トランプ氏が勝つために必要な3つのこと

 数週間前、ドナルド・トランプ氏が米大統領選の共和党候補指名を確実にした後の一連の世論調査で、トランプ氏の支持率は民主党候補指名争いでリードするヒラリー・クリントン前国務長官とほぼ互角か、やや上回っていた。これを受け、民主党は軽いパニックに陥った。

 先週、クリントン氏が民主党候補指名を確実にした後の一連の世論調査で、トランプ氏はクリントン氏に大きく水を空けられ、うち2回は12ポイントの差をつけられた。共和党は完全なパニックに陥った。恐らくその対応策としてトランプ氏は20日、長らく選挙対策責任者を務めていたコーリー・ルワンドウスキ氏を解任した。

 今は深呼吸をし、基本的な事実を思い起こすいい機会だ。最近の世論調査の一部動向は、両候補が各党をまとめるためにやってきたことの必然的な結果である。一部はトランプ氏のオーランド銃乱射テロへの下手な対処や連邦判事に対する攻撃がもたらしたものだ。

 一方、基本的な事実はこうだ。本選まで4カ月ちょっととまだ長い期間が残されている。クリントン氏は本選に向けた争いで明らかに先頭に立っている。しかし、トランプ氏が勝つ可能性はある。そうなる可能性が最も高いか? 恐らくノーだ。この異例の年においてそれは可能か? もちろん可能だ。

 単純な政治的計算をすれば、トランプ氏が勝つために必要なことは3つあることが分かる。

 まず1つは、白人の大卒女性の支持率を上げることだ。この有権者層はトランプ氏のアキレス腱になっている。

 世論調査によると、トランプ氏は高卒以下の白人男性の支持率では約40ポイント、高卒以下の白人女性の支持率では約10ポイント、それぞれクリントン氏を上回っている。

 しかし、大卒の白人女性の支持率では2桁近く下回っている。4年前の大統領選で共和党候補ミット・ロムニー氏はこの有権者層を勝ち取っている。ペンシルベニアやコロラドなどのスイングステート(大統領選挙で優勢な政党が一定しない州)で重要な郊外地区を制するには、この有権者層の支持率を上げる必要がある。

「第3の候補」に期待

 2つ目は、第3の政党がクリントン氏の票を奪うことに期待することだ。

 今回の選挙戦で最も目立つ点の1つが、両候補者に対する反感の大きさだ。そのため、通常よりも多くの有権者が「第3の候補者」を検討することに前向きになっている。

 第3の候補者は2人いる。リバタリアン党から出馬しているゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事と、アメリカ緑の党の候補指名が確実とされるジル・スタイン氏だ。初期の世論調査は、民主党の候補指名を争うバーニー・サンダース上院議員の支持者のうちクリントン氏に不満を持つ有権者を中心に、両者がクリントン氏からさらに票を奪う可能性があることを示唆している。州によっては数ポイントで均衡が崩れる可能性がある。

3つ目は、適切な州で支持を確保することだ。

 これは厄介な作業だ。主要州の現在の人口動態や投票傾向を考慮すると、共和党候補が誰であるかにかかわらず、選挙人地図は民主党に有利だ。しかし当然ながら、異例の選挙戦を展開するトランプ氏が異例の地図を作り上げる可能性はある。その地図は同氏にとって良くも悪くもなり得る。

 本選の選挙人計算をするに当たって妥当な起点となるのが2012年の大統領選だ。この年はオバマ大統領が共和党候補のロムニー氏を獲得選挙人332対206で破り、当選に必要な270人を優に上回った。

 オバマ大統領が勝利した州は民主党の基盤を把握する上でかなり役に立つ。それにはコロラドやアイオワ、バージニアといった重要なスイングステートが含まれる。トランプ氏はロムニー氏の戦いぶりを再現した上で、さらに勝利州を増やす必要がある。

フロリダ州を制するか

 トランプ氏はニューヨークとカリフォルニアの両州で民主党に圧勝し、ニュージャージー州も制すると述べている。最初の2州の圧勝は幻想でしかなく、ニュージャージー州での勝利は無理難題だ。

 彼はそうした奇跡に頼らずにどう勝つかを考えるべきだろう。そのための基本的な道は2つある。1つはフロリダ州で勝利し、選挙人29人を手に入れる「フロリダの道」。そしてもう1つはフロリダではない道だ。

 フロリダの道の方がはるかに簡単だ。トランプ氏がフロリダ州で勝利し、さらに例えばオハイオ、アイオワ、ニューハンプシャー、メーンの各州でも勝った場合――いずれも可能性はある――獲得選挙人は267人と、当選に必要な人数までわずか3人となる。そうなれば、後はペンシルベニア、ミネソタ、ウィスコンシン、コロラド、ミシガン、ニュージャージーのいずれか1つの州で勝利すればいいだけだ。

 フロリダでない道を選んだ場合ははるかに大変だ。トランプ氏がフロリダ州で負け、アイオワ、メーン、ニューハンプシャー、オハイオ、ペンシルベニアの各州で勝利した場合、獲得選挙人はわずか258人にしか届かない。270人を得るには、さらにバージニア、ニュージャージー、ミシガンのいずれかの州を制するか、その他のスイングステート2州で勝つ必要がある。しかも、アリゾナ、ジョージア、ユタの3州が民主党になびかないようにする必要もある。3州はかつて共和党が優勢だったが、現在は揺れているようだ。

 これは非常に厳しい仕事だ。しかし、既にあり得そうもないことが起こっている今年においては、不可能なことではない。

(筆者のジェラルド・F・サイブはWSJワシントン支局長)

By GERALD F. SEIB

あわせて読みたい

「ドナルド・トランプ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。