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【自衛隊と熊本地震】首都直下地震・南海トラフ地震に備え法整備を〜折木良一・元統合幕僚長に聞く

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行方不明者捜索(出典:陸上自衛隊)
5月30日、熊本県の蒲島郁夫知事の要請を受け、中谷防衛相は災害派遣されていた自衛隊の撤収を指示。これにより熊本地震の発生当日以来、延べ81万4千人にのぼる自衛隊の災害派遣が終了した。今回の災害派遣では、米軍による輸送支援支援での「オスプレイ」使用、海上自衛隊の護衛艦との連携も議論を呼んだ。

筆者の家族は、熊本地震で被災し、自衛隊の支援を受けた被災者の一人。現地で自衛隊の様々な活動を見聞きし、災害派遣の実情に強い関心を持った。そこで、東日本大震災の災害派遣において自衛隊制服組トップとして指揮を執った折木良一・元統合幕僚長に、自衛隊の災害派遣の実情や、今後の課題について話を聞いた。【大谷広太(編集部)】

■ニーズは尽きず…難しい「撤収」の判断

-蒲島知事が自衛隊の撤収を要請するにあたり、5月29日の会見では「ずっと頼るわけにはいかない。自分たちでやっていく時期に入った」と述べました。そもそも自衛隊の災害派遣にあたっては「緊急性」「公共性」「非代替性」という三つの要件があります。地元自治体や民間による対応にある程度メドが立った、ということだと思います。

折木:派遣するのは簡単なことなのですが、撤収、つまり出口をどうするかの判断はものすごく難しいんです。

被災した方々には「まだ居て欲しい」と言って頂くことが多いですし、人間ですから、支援するうちに皆さんとも顔見知りになっていきます。現場の自衛官としては「もうちょっと残って支援したい」という気持ちが出てくるんですね。

道路啓開(出展:陸上自衛隊)
ただ、やはり"自衛隊で無ければできないこと"とをやるのが目的です。地元の建設会社ができることまで自衛隊がやっていいのかというと、そうではありません。民間の力を活かすことが復興にもつながっていくわけですから、自衛隊としては出来る事を精一杯やって、全体の状況を見て撤収させていただく、ということになります。

ー私が地元・熊本で聞いた話に、こういうものがあります。

友人がいる南阿蘇村方面の避難所に物資を持って行こうとしたところ、道路が寸断されるなどして難しかったと。そこでたまたま通りがかった自衛官に事情を話すと「避難所までであれば、お届けします」と、持って行ってくれたのだと。


折木:あまり大っぴらにしてもいけないのかもしれませんが(笑)、東日本大震災の際にもそういう話はいっぱいありました。現場の判断で、機転を利かせ柔軟に、ということですね。

ただし、不公平があってはいけません。ですから、やってあげたいけれどもできない、という場面も数多くあります。

ー私の両親は、入浴支援をしていた自衛隊が撤収してしまったため、銭湯に行かなければならなくなって困ったと(笑)。

入浴支援(出典:陸上自衛隊)
折木:お風呂は被災した方々に喜ばれるし、憩いの場でもなりますから、ものすごく大事なんですよね。ただ、基本的に入浴設備は、部隊に一つしかないので、今回も北海道を含めて全国からかき集めたと思います。また、もちろん災害派遣が優先なのですが、自分たちが訓練をする時に使う装備でもあります。よく「増やせばいいのに」と言われるのですが…。

ただ、地元の温泉や銭湯が徐々に再開していくのであれば、少しずつそちらが利用されるようになっていくことも復興にとって大事だ、という考え方もあります。自衛隊としては、なかなか心苦しいのですが…。

ー私が現地で見て驚いたのは、その入浴支援をしていたのが青森県の八戸から来ていた海上自衛隊だったことです。地震の災害派遣と言うと、陸上自衛隊のイメージがありました。

海自「いずも」輸送支援(出典:陸上自衛隊)
折木:陸・海・空それぞれに特性がありますからね。海上自衛隊は基本的に陸上での活動は行わず、艦船による生活支援や、水の支援など、間接的な活動が中心でした。しかし最近になり、直接的な活動もするようになりました。東日本大震災の際も、陸上での活動を行っているんです。

ー一方で、やはり即応という意味では、被災地最寄りの駐屯地の部隊が先頭を切って活動しますね。 今回も、自分自身が被災者で、余震も続く中、家にしばらく帰れなかった自衛官のご家族の話を耳にしました。

折木:もちろん全員が本音では後ろ髪を引かれる思いでしょうが、それが仕事ですからね。

東日本大震災の際も、自分が被害を受けながら派遣された自衛官が大勢いました。ただ、そういう隊員についてはフォローアップをしなければなりません。当時、カウンセリングのチームが現地に派遣されましたが、そうした心のケアも重要です。

現地調整所(出典:陸上自衛隊)
私が気にかかるのは、やはり家族への支援です。自衛隊の官舎に入っていれば同じ境遇の家族同士として助け合いもしやすいのですが、熊本のようなところでは、持ち家でバラバラに住んでいるケースが多いと思います。今回も、ご近所の方に声を掛けてもらって有り難かった、というご家族の話を聞きました。

その意味では、平時からの自衛隊員の家族同士の絆というのが大切でしょうし、災害派遣はもちろん、有事の際には本人や家族のケアがより重要になってきますから、自衛隊としてもケアについては重点項目として対策を講じ始めています。

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