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こうして子どもたちは「空気と責任の不在」を学ぶのかも~「組体操」の継続

■「組体操」そのものが意味不明

組体操をこの春も行なった学校はやはりあったそうだ。8段とか9段とか、僕はこの組体操記事はこれまでほとんど読まなかったのでよくわからないが、事故があったあともアクロバチックな演技は繰り返されたとのこと(記事 学校リスク研究所 内田良2016年06月19日 07:27巨大組体操つづける学校 自治体禁止でも実施、最高段数を記録、頂点から垂れ幕)。

子ども時代はいやいや運動会に参加していたが、高校からはほぼそれ系の授業には出席せず高校以降は基本的に集団での運動は避けてきた僕にとって(あ、ひきこもり支援NPOでスタッフとしてソフトボール大会には出ていたが、あれはビール飲みながらのおふざけスポーツ大会だった)、この「組体操」そのものが意味不明の行為だ。

だからそれが8段だろうが9段だろうが、その中身にはまったく関心がない。関心があるのは、あっさり中止できなかった学校が1/3は存在し、その中止できなかった理由にある。

上で参照した記事にはこうある。

【学校は、校内での意見交換はもちろんのこと、校長会や教育委員会においても丁寧に議論を重ねたうえで、ときに新たな安全対策(マットを敷く、補助教員を増やすなど)も取り入れたりしながら、巨大組体操を継続した。多くの場合において、学校の暴走でもなく、行政の怠慢でもなく、学校と行政が熟議をした末の選択であった。】

■「合意によるボトムアップ」

やはりここでも「熟議」がなされている。熟議し、同意し、全体で決定がなされると、それは公的に承認されて誰も止められなくなる。

それが少し前に事故を起こした演目であっても、熟議の中でテクニカルな解決が図られそうだという「空気」が形成されて同意された時、会議のメンバーたちが仮に「なんか変だぞ、今年はやめておいたほうがいいのでは?」と思っていたとしても、それは決定されてしまう。

おもしろいのは、一会議レベルでの決定ではなく、記事によると、それは、校内・校長会・教育委員会等、複数の段階とレベルで構成された会議体によって議論されたということだ。

まさに、複数の階層の「熟議」の結果、「組体操が中止できない」という決定が導き出されている。

これは、池田信夫氏の言う「合意によるボトムアップ」であり(霞ヶ関のリゾーム構造)、それを参照して僕が書いた「あなたの仕事は止まるか」という記事の核心だった(あなたの仕事は止まるか)。

この「決定」においては、「中心」をなかなか発見することが難しい。各階層で熟議され、なんとなくの合意か仕方なくの多数決かはわからないものの、とりあえずの決定がなされる。その決定の瞬間は、誰が強引に進めたというのでもないだろう。

最後には、これだけ「民主的に」議論したのだから手続きは尽くされたということで、決定される。それが、会議構成員がみな首を傾げるようなものであったとしても、決められてしまう。

■中心がいない

その決定には、「中心」がいない。各階層のリーダー(校長等)が引っ張ったものでもないだろう。それなりに会議では資料が用意され、それなりの議論(ほとんどは枝葉末節だろうが)が時間をかけてなされ、決定の時間が訪れる。

その時、中心がいない。

中心はおらず、代わりにあるのは、つまりは「空気」という空間だ。今回は「学校と組体操」がわかりやすいので事例に挙げたが、日本の場合、「わかっちゃいるのにやめられない」が多すぎる。

個人の嗜好レベルでは自由だが(いや、アルコールやギャンブルの依存症までいくと、個人でもやめないといけないか)、問題は「組織内決定における決定事項の継続性と、そこでの中心と責任の不在」だ。

これは、戦前の軍部や国会内で行なわれた様々な会議といった歴史的事象以外にも、また池田氏が上げるような現在の国会や官僚組織といった大きなレベルでの決定だけでもなく、今回とりあげた「まさか今年それを続けてしまってはマズイだろう」レベルの組体操決定会議以外にも、5人以上の人々が集まる組織であればどこでもどんなテーマでも見られる現象だ。

なぜか我々のガラパゴスな国においては、こんなふうに物事が決定されていく。それは、ずっとずっと前から行なわれてきた慣習や風習で、よほどそれを意識しないかぎり、それこそ「空気」のように物事は運ぶ。

だって、組体操はとりあえず今年くらいは中止にしておけばとりあえず無難なんだから、無難さを重んじる「日本」的にはとりあえず中止だろう。その、とりあえず感を凌駕するほどの、空気的決定というものが、この国にはある。

その代表が「学校」で、こうして子どもたちは「空気と中心と責任の不在」というものを学んでいくのかもしれません、トホホ。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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