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「QE2後の世界」を描き切れずにいる世界、「復興低減」に突き進む日本

24日の米国相場は、ギリシャの与党・全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の幹部が来週行われる緊縮財政法案の採決で反対票を投じる意向を表明したことなどからギリシャ債務危機に対する懸念が再燃、イタリアの一部銀行株の急落を受け株式市場は3日続落。為替市場でもユーロがドルに対して3日続落となった。NYダウとS&P500指数は過去8週間のうち7週間で下落。金融市場が「QE2後の世界」を描き切れていない姿が浮かび上がって来ている。

金融市場が「QE2後の世界」を描き切れない大きな要因は、主要国の多くが大規模な財政赤字を抱えて財政政策が殆ど打ち出せないことに加え、金融政策においても金利、量的緩和両面での限界が見えて来ていること。こうした現実的な制約も加わり、欧州の財務危機に加え米国の景気鈍化懸念、日本の震災の影響など大きな課題に対する政治の対応は、極めて近視眼的な対処療法の繰り返しになって来ている。対処療法的な政策の繰り返しでは、構造的な問題を殆ど解決することは出来ないことは、日本が「失われた20年」で証明して来たこと。

足下の金融市場においての大きなテーマの一つとなっているギリシャ問題も、緊縮財政法案が可決しようがしまいが、現実問題としてギリシャのデフォルトを避けることは極めて難しいのは誰が見ても明らかである。ベニゼロス財務相は、ギリシャ政府は総額280億ユーロ(約3兆2000億円)の緊縮計画を完全に実行する決意があり、不足分は一連の新たな税や増収策、それに今年の4億ユーロの追加支出削減で賄うという方針を示している。しかし、足下の経済成長率がマイナス5.5%の国のこうした財政緊縮政策で、2009年時点で対 GDP比15.4%に達している財政赤字を2015年までに同1%に出来るかと言えば、その答えは「NO」以外にあり得ない。

EUや IMFはギリシャの「デフォルト回避」に向けて策を弄しているが、金融市場にとって大きな関心は、既に「ギリシャがデフォルトするか否か」ではなくて、「ギリシャが何時、どの様な形でデフォルトするか」に移り始めている。金融市場が政治に期待しているのは、最も金融市場への影響が少ない形でデフォルトさせてくれることである。

将来が見通せない状況は日本も同様。日本では震災から3ヶ月超が経過してようやく東日本大震災復興基本法が施行され、同時に政府の復興構想会議から「復興の提言」という答申が出された。始めから増税ありきの前提で始まったこの会議の結論は、予想通り「臨時増税提言」であった。

巨額の債務残高を抱える日本では、過剰な財源論が正義であるかのように伝えられている。確かに、財政の無駄を削減するという観点から財政規律を求めるというのは必要なことである。しかし、復興に関して財源論を持ち出すのは可笑しなものである。
もし復興会議の提言が正当なものであれば、それに基づいた復興によって新しいインフラ、新しい地域が生まれ、それに伴って新しい価値が創造され、そこから新たな税収等が生まれるはずである。従って、復興の財源を既存の「基幹税の臨時増税」に求める必要はないはずである。換言すれば「基幹税の臨時増税」に財源を求めるということは、「復興の提言」は新しい価値を創造するものではないということを自ら認めるものである。

ギリシャはこの1年デフレ政策で財政再建を図って来た。その結果は「経済成長率マイナス5.5%」である。「日本はGDP比で200%以上の公的債務を抱えている」という事実だけをことさら誇張し、デフレに苦しむ日本経済をデフレ政策で再建することは出来ないという事実を封印するかのような風潮は、日本経済復興の大きな足枷である。ギリシャの現状を将来の日本の姿と重ね合わせるかのような報道は盛んだが、過去の日本でも、最近のギリシャでも効果を発揮しなかった財政再建策を金科玉条の如く扱うのは公正さに欠ける報道である。

「基幹税の臨時増税」に財源を求める「復興の提言」は、政府の政策対応の遅さと共に、日本経済の「復興の低減」に繋がる大きなリスクである。

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