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  • ヒロ
  • 2016年06月21日 10:00

英国の離脱派とトランプ氏の共通点

英国のEU離脱の行方が注目されますが、アメリカでドナルド トランプ氏が掲げる数々の主張と実は根が同じである気がしてなりません。

日経ビジネスに「書面一枚で営業利益5%増、本当は怖いTPP」という8ページにわたる記事があります。記事の内容はTPPやFTAは非常に複雑でその中身をよく理解しないとせっかくのメリットを生かせないという趣旨の内容です。が、私は全く違うことをそこで読み取りました。

記事ではユニクロの柳井会長が「アメリカはグローバル化の先兵なのに自由貿易を否定するような大統領は建国の精神に反する」とのろしを上げるところからスタートします。現時点ではどの大統領候補もTPPに反対であります。この記事の面白いのはこの後、リカードの「比較優位論」を持ち出し、自由貿易がなぜ困るのか、解説しています。

リカードの「比較優位論」は経済学部の一年生で勉強する内容だと思いますが、教科書では英国とポルトガルにおけるワインと毛織物の比較を題材にします。が、正直、これは現代の人にはピンと来ないのでわかりやすい例えを出しましょう。

私が事業の一環で利益率が20%の駐車場事業と利益率が3%のカフェの事業をしています。両方儲かっているのでそのままやればよいのですが、事業の司令塔である私は利益率の低いカフェにも一定時間割かねばなりません。それなら、いっそのこと、カフェのビジネスをやっている友人に売却し、駐車場事業に専念するほうがより効率的に仕事ができる、というのがかなり変形させた比較優位論の意味です。

ところが問題はカフェの従業員を友人のところで引き継いでもらえるかと思いきや、友人が俺のところにはスタッフがいるからお前のところの従業員は引き受けられないと断られるのです。かといってカフェの従業員を駐車場に転用できません。スタッフはここで路頭に迷うわけです。

アメリカが自由貿易を標榜できたのは戦後直後までほぼすべてなんでも優位に立っていたからであります。ところが日本が台頭し、繊維や鉄鋼など製造業の一部をアメリカから駆逐します。それでも大量消費時代を迎えブルーカラーの産業間のシフトは可能でありました。それでも次第に自動車、ハイテクとなるに従い製造業に携わる労働者には脱落者が生まれ、サービス業に転じます。

これはアメリカにおいて経済が拡大する過程において労働者の職の転換がある程度自国内で吸収できたとも言えます。ところが、過剰供給時代となり、労働者はその職が海外からのモノやサービス、人材攻勢で段々居場所が限られ、フラストレーションをためてきているのが現代の社会問題ではないでしょうか?

英国の離脱派は移民により職を失うことを恐れています。もともとロンドンには大量のマネーが入り込み、不動産が高騰し、非英国人が次々と高値で不動産を落札し、ロンドンにロンドンっ子なし、とまで言われたこともあります。つまり、広く扉を開けたが故のフラストレーションが生んだ離脱派のボイスなのだろうと思います。

同じことはアメリカの大統領選挙でもそっくりな状況が生み出されています。

冒頭の日経ビジネスの柳井会長のお言葉を返すならば「アメリカが自由貿易を標榜していた時代は終わり、かつてのわがままで孤立主義を貫くもう一つのアメリカの顔が台頭している」と言えないでしょうか?

英国にしてもアメリカにしても抱えるのは現代病。そしてこの病は開かれた世界から閉じる世界に変わろうとしているように見えます。仮にトランプ氏が大統領にならなくても、仮に英国がEUから離脱しなくてもこのようなボイスが世界中でブクブクと泡が立ち始めていることは確実に言えます。

AIやITといった技術の進歩は喜ばしい半面、多くの人を「置いてきぼり」にします。かつての電車は急行や特急で多くの駅に停まりましたが、今は新幹線、飛行機で目的地までノンストップの時代です。それはその間にいる多くを通過し、見向きもしなくなっていることで人々が鈍感になっているかもしれません。

SNSが普及したことでそれらの通過駅の声が今、英国やアメリカで思ったより大きくなっている、という社会現象なのでしょう。私は英国の国民投票は結果よりもこれほど拮抗した議論になっている世の中そのものにもっと注目すべきであると思います。

では今日はこのぐらいで。

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