- 2016年06月21日 09:22
ISテロ部隊がシリアを出発か仏とベルギーで襲撃画策と報道 - 佐々木伸 (星槎大学客員教授)
ベルギーの有力紙デニエール・ウールはこのほど、ベルギーの治安当局の情報として、過激派組織「イスラム国」(IS)の工作員グループがベルギーとフランスでテロを起こすためシリアを出発した、と報じた。14日にフランスで警官とその妻を殺害したIS信奉者はサッカーの「欧州選手権を墓場にしてやる」と予告していることもあり、両国の治安機関の緊張は高まる一方だ。
米ファスト・フード店も標的か
同紙によると、ベルギー、フランスの治安当局は緊急のテロ警報を出し、このテロ工作グループがトルコからボートでエーゲ海を渡ってギリシャに入る計画であることが分かったという。グループは旅券を所持していないとされるが、ISはこれまでもギリシャやイタリアで偽造旅券を入手していたことが知られている。
これらグループは欧州で、ベルギーとフランス向けの2つの小グループに分かれる計画で、すでに武器を入手している可能性もある。警報は「テロが切迫している懸念がある」と指摘している。フランスではパリが狙われている、という。
同紙はテロの標的として、ブリュッセルのショッピング・モールや、米ファスト・フード店、警察署などが含まれる、としている。治安当局が入手したこのテロ情報がどの程度、確度の高いものであるかは明らかではないが、ISの“ラマダン・テロ”の呼び掛けに応じてすでにフランスではテロが起きており、軽視するのは禁物だ。
フランスで14日起きた警官襲撃について、オランド大統領は「疑う余地のないテロ行為だ」と断定しており、ISに忠誠を誓う呼応テロだったことがはっきりしている。
この事件ではパリ郊外イブリーヌ県マニャンビルに住む警察幹部とその妻が刺殺された。犯人はラロッシ・アバラ容疑者(25)で、モロッコ系移民だ。警官隊に射殺される前、一時、この幹部の自宅に立てこもった。
同容疑者は事件の最中にフェイスブックにテロ現場や被害者の遺体などの映像を掲載。ISの関連通信社であるアマク通信がこの映像をネットに流した。アバラ容疑者は映像で、現在フランスで開催中のサッカーの「欧州選手権を墓場にしてやる」と不気味な予告をし、さらに警官やジャーナリストらを殺害すると宣言した。
立てこもっている間の警察とのやりとりで、数週間前、ISの指導者アブバクル・バグダディに忠誠を誓ったことを明らかにし、「不信心者を殺せ」というバクダディの指示に従って行動した、と自慢した。
空爆への復讐が動機
米フロリダ州オーランドのナイトクラブで、米国史上最悪の銃撃事件を起こしたオマール・マティーンもフェイスブックに書き込みをし、バグダディに忠誠を誓っていたことが明らかになっている。
マティーンは「米国の空爆によって罪のない女や子供が殺されている。今度はISの復讐を味わうがよい」と記し、テロの動機がISに対する爆撃の報復であることも鮮明になった。
問題は、マティーンにしろ、フランスのテロ実行犯アバラにしろ、“危険人物”として捜査当局から監視対象にされていた経緯があることだ。ノーマークの人間が事件を起こしているのではなく、当局がしっかり監視を続けていれば、テロを未然に防止できた可能性があるのだ。
マティーンは2013年に職場の同僚にイスラム過激派を称えるような発言をするなどして連邦捜査局(FBI)の調べを受け、約1年間、テロ監視リストに載せられたが、その後、リストから外された。14年にも米国人の最初のIS自爆犯との関連で調べられたが、嫌疑不十分で不問にされている。
フランスのアバラも13年、パキスタンで戦う戦闘員を徴募しようとして逮捕され、3年間の実刑判決を受けた。しかもアバラは親類の1人がシリアに向かったことが明らかになった後、盗聴監視の対象者になっていた。
昨年11月のパリの同時多発テロや3月のブリュッセルの同時自爆テロでも監視対象者が事件で大きな役割を果たしていた。人員不足や24時間の長期監視は不可能であるという事情があるにせよ、米国とフランスの直近の2つの事件を防げなかったのは、一連のテロの反省を生かし切れなかったため、との批判は強い。ISテロ部隊の欧州潜入に関する捜査も含め、新たなテロの発生をなんとしても阻止しなければならない。
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