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バロメーターとなる中国経済に関する報道

週末の米株式相場は大幅下落。NYダウは172.45ドル(1.4%)下落の11,951.91ドルと、3月18日以来3ヵ月ぶりに節目の12,000ドルを割り込んだ。NYダウの週間ベースでの6週連続安は2002年10月以来約8年8カ月ぶりで最長。

株価下落の要因は、世界的な景気減速懸念。つい2週間程前の5月27日に出されたG8首脳宣言で、「力強さを得て、より自律的になって来ている」とされた「世界的な景気回復」は、その後発表された米国第1四半期GDP改定値や5月の米国雇用統計等々で完全に否定され、今では「いらいらするほど緩慢」というのが市場のコンセンサスとなってしまった。しかしこれは、この2週間に新たな材料が出たという訳ではなく、G8首脳宣言が出された時点で、既に景気見通しが楽観的過ぎたということ。(参考)⇒見え始めた「股裂き政策」の限界

G8首脳宣言の景気見通しが余りに楽観的なものになった裏側には、政治的(財政政策)に景気浮揚策が限界にあり、「気」という曖昧なものにすがる以外に無くなって来ているという先進国が抱える現実的な問題がある。

世界経済に対する悲観論台頭の大きな要因となっているのが中国経済。先週末のNY株式市場の下落に関しても「中国の5月の貿易黒字額が市場予想を下回り、世界景気の拡大ペースが鈍るとの懸念が台頭」したことが理由として挙げられている。財政危機を抱える欧州、雇用情勢を中心とした景気鈍化懸念が高まる米国、原発と政局不安で震災復興が遅々として進まない日本に、中国経済の減速懸念が加わり、金融市場は世界経済に対する自信を完全に失ってしまった様である。

2週間前のG8首脳宣言は楽観的過ぎたが、中国経済の失速まで持ち出した直近の金融市場は、過度な悲観論に振れ始めているのかもしれない。
少し前まで金融市場が抱いていた懸念材料は、中国の景気過熱とインフレ加速であった。中国PMIが頭打ちとなったことで、中国の景気減速懸念がにわかに高まって来たが、これは中国の景気過熱が収まり始めたという望ましい兆候と受け取ることも出来るもの。
また、輸入増加による貿易黒字の縮小も、指摘されている金利上昇要因という悪材料としてだけでなく、元高下での輸入増加は中国国内のインフレを抑える効果を発揮するものであり、過剰投資や外需主導経済の原因ともなっている中国の低い個人消費支出が是正されつつあることを示唆する好材料という面を持ち合わせている。

12日の日経新聞でも「中国でバブル懸念高まる」という記事が大々的に掲載されており、世界経済の最後の頼みの綱である中国経済がバブル崩壊の危機にあるかのような報道をしている。確かに、世界経済の牽引役となっている中国経済の減速は世界経済にとって懸念材料ではある。しかし、もともと中国政策当局は9%台の成長率を7%台に落とすことを政策目標に挙げており、経済成長スピードが鈍ることは始めから分かっていたこと。これを殊更強調することには若干の違和感を感じてしまう。

米国経済減速に対しては「ソフトパッチ(soft patch)」と曖昧な評価を好むマスコミも、こと中国経済減速については「ハードランディング(hard landing)」と厳しい視線を向ける傾向が強い。それが経済に対する両国の信頼度の違いなのか、共産党一党支配という政治体制に対する嫌悪なのか定かではないが、投資家に必要なのはこうした論調に惑わされない客観的な見方である。
選挙で選ばれた訳ではない共産党が一党支配を続ける国と、選挙を経ないで首相がコロコロと変わる国と比較した場合、政治体制の善悪は別として、政策の迅速性とその経済効果という面では大きな違いが生じる可能性は否定出来ないのだから。

中国経済に対する過度な懸念が行き過ぎたものなのか、それとも本当に顕在化して行くものなのか。市場の見方は常にオーバーシュートするものであるが、中国経済に対する報道の仕方は、それを計る重要なバロメーターとなりそうだ。先進国が財政・金融両面で手詰まりになる中、金融市場は好き嫌いを抜きにした中国経済の客観的分析力が今まで以上に求められる局面を迎えたようである。

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