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- 2011年05月23日 00:12
「どこが最悪か」という視点
日本で東京電力向け融資の「債権放棄要請」が波紋を呼んでいるが、欧州でもギリシャの「債務再編」が大きな問題となって来ている。
ユーログループのユンケル議長は、国有資産の売却加速と一段の歳出削減を盛り込んだ支援パッケージの一環として、欧州がギリシャに対し債務減免を伴わない「リプロファイリング(返済延長)」を検討する可能性があると述べた。
これに対してECBのトリシェ総裁やバイトマン・ドイツ連邦銀行総裁は、ギリシャが債務の償還期限を延長した場合、ギリシャ債はECBのリファイナンスオペの担保として不適格になる可能性があると発言。
6月にも予定されているEUのギリシャ支援策協議を控え、ギリシャの「債務再編」に対して、欧州金融当局者と政治家の間で意見が対立していることが明らかになった。
さらに複雑なのは、政治家の間でも各国で意見の違いが存在していること。ドイツのメルケル首相は今月16日に行われたベルリンの学校での講演で、恒久的な救済メカニズムである欧州安定メカニズム(ESM)が導入される2013年まで、ギリシャおよび他の国々は「債務再編」に原則的に踏み切ってはならないと主張。「債務再編」が行われた場合はユーロ圏債券市場から大規模な資金の逃避が起こると警告し、金融市場で囁かれていたドイツがギリシャに対する「債務再編」を促しているとの観測を完全に否定した。
そのうえで、2013年までは、債権者は任意で対応するべきとの考えを示し、ギリシャとポルトガルについては、債務負担を軽減し競争力を引き上げるために、民営化を進める必要があると述べた。
こうした金融当局者と政治家の意見対立の構図に割り込んで来たのが格付け機関。フィッチは20日、ギリシャの格付けを、投資適格を4段階下回る「B+」に引き下げた上で、一段の引き下げ方向で見直す「ウォッチネガティブ」に設定した。さらに同社は、EU当局者が検討している「ソフトな」債務再編(リプロファイリング(返済延長))でもデフォルト(債務不履行)と見なすと表明した。
これまで「リプロファイリング(返済延長)」がCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のイベント条項に当るかは意見が分かれて来たが、フィッチは明確にイベント条項に該当するとの見解を示した格好。
CDS 市場への影響を考えると、ギリシャ国債の「リプロファイリング(返済延長)」の可能性は、メルケル首相が拘るユーロ圏で発行されるすべての新発債に集団行動条項(CAC条項 )が適用される2013年7月まで低下したと考えられる。これは既存のギリシャ国債保有者にとっては朗報であり、ギリシャを中心とした金融システムの動揺を一時的に抑える効果はあるかもしれないが、ギリシャ経済の回復を確実に遅らせるものである。経済がより弱体化した2013年以降は、CAC条項の適用により何時債務再編が行われるか分からない状態になるので、ギリシャが金融市場から資金調達をすることがほぼ不可能な状況が続くことに変わりはない。
米国のFOMCでQE2が期限の6月末で打ち切られることがはっきりしたこともあり、金融市場の焦点は再び欧州に向き始めている。そうした中で、ギリシャ問題での意見対立や、S&Pによるイタリア信用格付けアウトルック(格付け見通し)の「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」への引き下げ(現在の「A+」の格付けは据え置き)、20日にドイツ連邦銀行(中央銀行)が示した、ドイツ経済は「爆発的な」滑り出しとなった年初のペースから減速し今後数カ月で成長の勢いがやや弱まるとの見通しなど、欧州に関しては悪材料のオンパレードとなっている。
直近発表された米国の経済指標も芳しくないものが続いている。しかし、欧州ではギリシャ問題が一段と政治色を強めて来ている上、日本では東日本大震災を錦の御旗に掲げた「超法規的措置」が乱発される可能性が高まって来ており、「分析可能」という点で米国は欧州や日本に比較して間違いなく安全資産となって来ている。
ドル円相場は依然として歴史的円高水準での小動きに終始しているが、主要6通貨に対するICEドル指数は5月に入り3.4%強上昇(ドル高)に転じて来ており、金融市場の「ドル安とその副作用による一次産品価格の上昇局面」には変化が生じて来ている。
ドル、ユーロ、円という主要通貨が共に脛に傷を抱えた格好になっている現在、投資家には「どこが有望か」という視点よりも、「どこが最悪か」という視点が求められる様になって来ている。
ユーログループのユンケル議長は、国有資産の売却加速と一段の歳出削減を盛り込んだ支援パッケージの一環として、欧州がギリシャに対し債務減免を伴わない「リプロファイリング(返済延長)」を検討する可能性があると述べた。
これに対してECBのトリシェ総裁やバイトマン・ドイツ連邦銀行総裁は、ギリシャが債務の償還期限を延長した場合、ギリシャ債はECBのリファイナンスオペの担保として不適格になる可能性があると発言。
6月にも予定されているEUのギリシャ支援策協議を控え、ギリシャの「債務再編」に対して、欧州金融当局者と政治家の間で意見が対立していることが明らかになった。
さらに複雑なのは、政治家の間でも各国で意見の違いが存在していること。ドイツのメルケル首相は今月16日に行われたベルリンの学校での講演で、恒久的な救済メカニズムである欧州安定メカニズム(ESM)が導入される2013年まで、ギリシャおよび他の国々は「債務再編」に原則的に踏み切ってはならないと主張。「債務再編」が行われた場合はユーロ圏債券市場から大規模な資金の逃避が起こると警告し、金融市場で囁かれていたドイツがギリシャに対する「債務再編」を促しているとの観測を完全に否定した。
そのうえで、2013年までは、債権者は任意で対応するべきとの考えを示し、ギリシャとポルトガルについては、債務負担を軽減し競争力を引き上げるために、民営化を進める必要があると述べた。
こうした金融当局者と政治家の意見対立の構図に割り込んで来たのが格付け機関。フィッチは20日、ギリシャの格付けを、投資適格を4段階下回る「B+」に引き下げた上で、一段の引き下げ方向で見直す「ウォッチネガティブ」に設定した。さらに同社は、EU当局者が検討している「ソフトな」債務再編(リプロファイリング(返済延長))でもデフォルト(債務不履行)と見なすと表明した。
これまで「リプロファイリング(返済延長)」がCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のイベント条項に当るかは意見が分かれて来たが、フィッチは明確にイベント条項に該当するとの見解を示した格好。
CDS 市場への影響を考えると、ギリシャ国債の「リプロファイリング(返済延長)」の可能性は、メルケル首相が拘るユーロ圏で発行されるすべての新発債に集団行動条項(CAC条項 )が適用される2013年7月まで低下したと考えられる。これは既存のギリシャ国債保有者にとっては朗報であり、ギリシャを中心とした金融システムの動揺を一時的に抑える効果はあるかもしれないが、ギリシャ経済の回復を確実に遅らせるものである。経済がより弱体化した2013年以降は、CAC条項の適用により何時債務再編が行われるか分からない状態になるので、ギリシャが金融市場から資金調達をすることがほぼ不可能な状況が続くことに変わりはない。
米国のFOMCでQE2が期限の6月末で打ち切られることがはっきりしたこともあり、金融市場の焦点は再び欧州に向き始めている。そうした中で、ギリシャ問題での意見対立や、S&Pによるイタリア信用格付けアウトルック(格付け見通し)の「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」への引き下げ(現在の「A+」の格付けは据え置き)、20日にドイツ連邦銀行(中央銀行)が示した、ドイツ経済は「爆発的な」滑り出しとなった年初のペースから減速し今後数カ月で成長の勢いがやや弱まるとの見通しなど、欧州に関しては悪材料のオンパレードとなっている。
直近発表された米国の経済指標も芳しくないものが続いている。しかし、欧州ではギリシャ問題が一段と政治色を強めて来ている上、日本では東日本大震災を錦の御旗に掲げた「超法規的措置」が乱発される可能性が高まって来ており、「分析可能」という点で米国は欧州や日本に比較して間違いなく安全資産となって来ている。
ドル円相場は依然として歴史的円高水準での小動きに終始しているが、主要6通貨に対するICEドル指数は5月に入り3.4%強上昇(ドル高)に転じて来ており、金融市場の「ドル安とその副作用による一次産品価格の上昇局面」には変化が生じて来ている。
ドル、ユーロ、円という主要通貨が共に脛に傷を抱えた格好になっている現在、投資家には「どこが有望か」という視点よりも、「どこが最悪か」という視点が求められる様になって来ている。



