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「社畜」は辛いが、組織って素晴らしい - 塚崎公義(大学教授)

就職活動中の学生に、組織で働く事のメリット、デメリットなどを考えてもらうための文章を記しました。若手サラリーマンにもお読みいただければ幸いです。

■サラリーマンに辛い事が多いのは当然

学生から社会人になると、辛い事が多いと感じるものだ。それは当然だ。今までは、社会に食べさせてもらっていた「お客さん」だったのが、これからは社会の一員として恩返しをしていく立場になったのだから。しかし、そこは気の持ちようだ。ようやく一人前の大人になり、社会から必要とされ、社会の役に立っている、ということを意識して生きれば、こんな素晴らしい事は無い、とも思えるだろう。

サラリーマン(家畜との対比で社畜と呼ぶ人もいるので、タイトルではそう記した)が辛いのは、仕事の量ももちろんであるが、自分で仕事を選ぶことが出来ないし、何よりも付き合う相手を選ぶ事が出来ないことである。アルバイトであれば、仕事が選べるし、店長が嫌な人だったら辞めて別のアルバイトを探せば良いが、サラリーマンは会社に命じられた仕事をせざるを得ないし、嫌な上司や同僚がいても、逃げるわけには行かない。無理難題を押し付けてくる取引先とも上手に付き合っていかなければならない。

当然、仕事帰りに上司や顧客の愚痴を言いながら一杯飲む回数は増える。財布にも健康にもよろしくない。「ストレスを溜めると健康に悪いから、ストレス解消をしているのだ」と自己弁護する事も不可能ではないが(笑)。

そんな事を考えていた新入社員時代(銀行勤務なので、新入行員時代とも言う)、先輩から素晴らしい御話を伺った。「君の給料の半分はヤケ酒を飲むためにあるのだから、大いに飲みたまえ」というのである。

■組織の看板があるから仕事が出来る

先輩いわく「君が銀行員ではなく、自分で銀行を作ったとする。預金を集めて回っても、誰も預金してくれないだろうから、君は商売が出来ない。すると、収入は今の給料の半分あれば良い方だ。ということは、今の君の給料の半分は、嫌な上司や取引先と付き合っていることによって得られたものなのだから、もともとヤケ酒を飲むためのものなのだ」

すごく納得した。それ以来、嫌な上司や取引先の顔が給料袋や居酒屋のビールに見えて、ストレスを感じずに仕事が出来るようになったのは、非常に大きなメリットであった。先輩には感謝してもし切れない(笑)。

しかし、先輩の言葉を本当に理解したのは、銀行を離れてからであった。筆者は銀行の調査部で景気見通しを担当している期間が長かったので、マスコミから景気見通しを聞かれたり原稿執筆の依頼が来たり、忙しくしていた。当時は駆け出しの調査部員だったので、たいしたコメントや原稿も書けなかったにも拘らず、である。

銀行を離れて大学教授になり、景気見通しなどの文章をホームページなどに記してみたが、マスコミからの取材や原稿執筆依頼はほとんど来なかった。駆け出しの調査部員だった頃よりは多少マシな予測ができ、文章も書けるはずなのだが・・・。

筆者は大学から給料をもらっているので問題は無いが、独立して文筆業で食べて行こうと思ったら、とても大変な事だとつくづく思っている。そう考えると、当時の給料の半分(あるいはそれ以上)は、組織の看板を背負っていた事によって仕事をさせていただけた、その対価であったのだと思い知らされているのである。

■組織には分業のメリットも

組織には、様々な部署がある。分業体制が出来上がっているのである。経済学の教科書を開くまでもなく、分業には様々なメリットがある。たとえば給料計算は、1人分処理するのと100人分処理するのでは、100倍の時間がかかるわけではない。しかも、100人分処理していれば習熟して一層効率的に仕事がこなせるようになる。

それ以上に重要なことは、不得意な事をやらなくて良い、という事である。筆者はコンピューター関係が大変苦手であるので、コンピューター室の方々には大変お世話になったが、おかげで筆者の仕事は大いにはかどった。今は、コンピューター関係の事も自分で何とかしなくてはならないので、小さなことでも四苦八苦して大いに時間を浪費しているのは、大変口惜しいことだ。

■ノウハウは組織に蓄積される

ゲームでも工作でも、一度やってみると反省する事が多く、「次はこうやれば上手に出来るはず」という発見が多いはずである。これがノウハウである。学園祭で焼き鳥を売ってみると、要改善点が山ほど出てくるはずであるが、それを全部改善した後の姿が営業している焼き鳥屋なのである。何気なく焼き鳥屋で飲食をしていては気づかない、膨大なノウハウが蓄積しているはずである。コンビニでも、売上高管理や発注や配送や陳列や、膨大なノウハウが蓄積しているに違いない。

そうとなれば、君が仮に起業を目指していたとしても、企業に就職して様々なノウハウを習得することには大きなメリットがあるはずである。小売店を開きたいと思っているなら、まずは小売企業に就職して、数年間働いて、ノウハウを学ぼう。起業を考えるのは、それからで充分だろう。

というわけで、学生諸君、起業する気があってもなくても、サラリーマンというのは素晴らしいものであるから、是非とも就職活動、頑張ってくれたまえ。

【参考記事】
■就活の手を抜くと、過去の自分を恨んで生きる事になる(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48827988-20160614.html
■銀行という職場の体験記(1)(塚崎公義)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12149636451.html
■大学教授が教える、本当に役に立つ就活テクニック(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48796600-20160609.html
■就活は企業との相性だから、落ちる以上に受けるべし(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48827663-20160613.html
■就活生の保護者は、一歩下がって伴走すべき (塚崎公義)
http://sharescafe.net/48838747-20160615.html

塚崎公義 久留米大学商学部教授

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