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社労士が考える「良い会社」を見分ける5つの観点とは? - 榊 裕葵(社会保険労務士)

私は事業会社で8年働き、また、社労士として仕事を始めて約5年になった。

■「良い会社」の5つの観点

独立前は自分が勤める会社を深く見つめ、独立後は、おそらく百社を超える経営者の方とお話をさせて頂いたと思う。

様々な実務経験を積んでいく中で、「良い会社とはこのような会社なのではないだろうか」という一定の類型化が頭の中で整理されてきたので、私自身の備忘も兼ね、この機に、記事にしてみようと考えた。

私の中では、「良い会社」を5つの観点に分けて整理したので、順番に紹介したい。

■「健康に働ける」は最重要

第1は、健康に働ける会社である。

どんなに給料が高い会社であっても、どんなに社会的知名度がある会社であっても、自分自身が健康で働き続けることができなければ意味はない。

やはり、最も重要なことは労働時間が適正な範囲に収まっているかということであろう。厚生労働省の基準では、月の残業時間が45時間を超える状態が慢性化していると、過労死のリスクが高まるとされている。

一時的な繁忙期は別にして、毎月の残業時間が月45時間以内におさまっているかが、社員の健康管理に配慮している会社かどうかの一つの基準になるであろう。

また、定期健康診断が法律に基づいて年1回、定期的に行われることはもちろん、社員数50名以上の事業所であれば、ストレスチェックや、安全衛生委員会が組織され、社員が、安全かつ健康に働くことができるための議論や取り組みが行われていなければならない。

産業医に対する考え方も、会社の健康管理に対する温度間を図る尺度になるであろう。

社員数50名以上の事業所であれば産業医の選任は法律上の義務である。この点、産業医が単に選任されているというだけではなく、社員に産業医の存在が周知され、必要に応じ気軽に相談できるような体制が構築されていることが本質的には重要である。

■セクハラ・パワハラに対する会社の姿勢

第2は、セクハラ、パワハラのない会社である。

通常の会社であれば「性的行為を強要する」とか「殴る、蹴る」といったような、刑法にも抵触するようなあからさまなセクハラやパワハラは少ないであろうと思われる。

しかしながら、問題になるのは、無自覚なセクハラ、パワハラである。

上司が「これくらいはコミュニケーションの範囲だ」とか「これくらいは教育指導の範囲だ」と考えていても、客観的な基準に照らし合わせると、セクハラ、パワハラに該当する場合が少なからずある。

加害者の上司本人は無自覚なので、あからさまセクハラ、パワハラよりも表面化しにくく、被害者が精神疾患に陥ったり、最悪の場合には、自殺をして遺書などで発覚する場合もある。

このような、無自覚のセクハラやパワハラを予防するためには、会社が管理職向けの研修を開催するなどして、どのような行為がセクハラやパワハラに該当するのかを周知する必要がある。

それでもセクハラやパワハラを繰り返す管理職は、どんなに優秀であったとしても、異動や降格、場合によっては解雇が検討されるべきである。

逆に、被害者の立場になる恐れがある若手社員や女性社員に対しては、セクハラやパワハラで悩んだ場合の相談窓口の周知や、悩みがあればためらわずに申告をすべきことを教えるべきであろう。

セクハラやパワハラの防止は、「何がセクハラ、パワハラなのか」という基準を社内で周知して共有することと、万一被害を受けた場合は申告をしやすい体制を作ること、そして、セクハラやパワハラを許さない企業文化をつくることが重要であり、これらのような取り組みに力を入れている会社は良い会社ということが言えるであろう。

さらには、顧客からのセクハラやパワハラから社員を守ってくれる会社か、という観点も重要である。

顧客のために誠意を尽くすことはビジネスとして当然のことだが、暴言や土下座の強要など理不尽な要求から社員を守るのも会社の責務である。

社員を犠牲にしてまでの「顧客第一主義」は、明らかに「行き過ぎ」である。

■ワークライフバランスの尊重

第3は、私生活が尊重される会社である。

ワークライフバランスという言葉は既に市民権を得ているが、家族や私生活を大切にできる余裕がなければ良い仕事はできない。

労働時間がとにかく長すぎるという会社は、そもそも「健康に働ける」会社ではないという点でアウトだが、残業や休日出勤がいつも突発で、私生活上の予定が立てられないとか、家族や友人との約束がキャンセルばかりになってしまうというのでは、働きやすい会社とは言えないであろう。

また、緊急時に備え、会社の携帯電話を持たされるというのは良いとしても、当たり前のように終業後や休日でも携帯に上司などから連絡がくるというのは問題である。

「社員の時間は24時間会社のものだ」と考えるのは会社のエゴであり、そのような会社で働いていると、社員は会社の束縛からどう逃げようか、ということばかり考えるようになってしまい、良い仕事ができるはずがない。

社員の私生活に最大限の配慮をしてくれる会社だからこそ、逆に社員も、勤務時間中は会社のために誠心誠意、全力で働くわけである。

育児休業や介護休業に関しても、「法律上そうなっているから仕方ない」と渋々取得させるのではなく、育児や介護は誰もが直面する可能性のあることなのだということを認識し、社内の仕事の見える化や、相互にフォローし合える体制が構築されており、社員が、育児休業や介護休業を気持ちよく、安心して取得できる会社は、間違いなく良い会社ということが言えるであろう。

■公平な会社であること

第4は、公平な会社である。

社員が公平に処遇されていると感じなければ良い仕事はできない。

その場限りの判断では、「あの人は許されたけど、私はダメだった」というような不公平感が生まれるので、就業規則や内規がきちんと整備されていて、「就業規則にはこう書いてあるので、今回の扱いはこうなります」というような、公平な対応をしてくれる会社では社員の不平不満は生まれにくい。

人事評価でも、主観を完全に排除することは不可能であるが、少なくとも客観的な評価基準が示されており、昇給や賞与の際には、上司から評価の理由について説明があるような形が望ましいであろう。

また、ここでいう「公平」には、「問題社員を放置しない」という観点も含まれる。

遅刻や欠勤が多い、休憩時間でもないのに煙草ばかり吸っている、アウトプットがほとんどない、という勤務態度であるにも関わらず、「社長のお気に入りだから」とか「年功序列だから」というような理由でそのまま放置放任され、降格や降給がなされないような場合、真面目に仕事をしている他の社員のモチベーションはどんどん下がってしまう。

例外をつくらず、信賞必罰の人事が行われる、ということも「公平」の観点に含まれる。

■本当の意味での「成長」が得られること

第5は、本当の意味で成長できる会社である。

求人広告などでもよく、「当社で働けば成長できます」というキャッチフレーズを目にする。

だが、そもそも「成長」とは何なのだろうか。

私は、「成長できる」の意味を、実際に転職するかどうかは別として、「ヘッドハンターや転職エージェントと面談したとき、より高い条件で転職できるような経験を積めるか」が「成長」の基準だと考えている。

社内で評価が高まれば、確かに自分も成長したように感じるが、それが客観的な意味での成長なのか、それともその会社内で世渡りが上手くなっただけなのか、は意識しないと勘違いしてしまうことがある。

その会社にとって都合のよい人間になることを「成長」と称するのではなく、どこに行っても通用する客観的な経験を積むことができる会社が、本当の意味で「成長できる会社」と考えるべきであろう。

経営者の視点からすると、「成長してその社員が辞めてしまったら、当社の損失ではないか」と感じるかもしれないが、その社員がさらに成長できる仕事を与えることができれば、転職せずに長く勤めてくれるはずである。

逆に社員の立場からすれば、「次々に自分が成長できる仕事を与えてくれる会社」が良い会社であるということになるであろう。

■結び

このような5つの要素を全て兼ね備えた会社を探し求めるのは「青い鳥探し」なのかもしれないが、就職活動や転職活動をしている方の会社選びのポイントとして参考になれば幸いである。

私自身も、経営者としてはまだまだ駆け出しであるが、自分が経営する社会保険労務士法人を、この5つの要素を兼ね備えた職場にしていきたいと思っている。

《参考記事》
■社会保険の未加入企業は「逃げ切り」ができるのか? 榊 裕葵
http://aoi-hrc.com/shakaihoken-mikanyuu
■社員を1人でも雇ったら就業規則を作成すべき理由 榊 裕葵
http://aoi-hrc.com/blog/shuugyoukisoku-sakusei/
■独立するなら学びたい、AKB48のキャリアウーマン岩佐美咲の仕事術 榊 裕葵
http://sharescafe.net/47686063-20160201.html
■軽井沢スキーバス転落事故。国が本気にならなければ悲劇は繰り返される。榊 裕葵
http://sharescafe.net/47553437-20160118.html
■東名阪高速バス事故、11日連続勤務は合法という驚き 榊 裕葵
http://sharescafe.net/45556859-20150715.html

榊裕葵 ポライト社会保険労務士法人 マネージング・パートナー
特定社会保険労務士・CFP 

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