- 2016年06月18日 08:22
中東に必要な新秩序 オバマはやる気なし - 岡崎研究所
サイコス・ピコ協定の100周年
5月16日はサイコス・ピコ協定の100周年であった。英国のマーク・サイクスとフランスのジョージ・ピコが、オットマン帝国の分割についての秘密協定を結び、それがイラク、シリア、ヨルダン、レバノンの誕生となり、今の中東の血なまぐさい混沌につながった。
将来、スンニ派、シーア派、クルドを一緒にまとめたイラクとシリアは、現在の国境のまま集権的な国として維持されるべきか。レバノンはどうすべきなのか。
一つの意見は、イラク、シリアは国民国家として保持されるべきで、国境を新たに引くことはもっと問題を生み出すという。もう一つの意見は、イラク、シリアは単一国家として存続しえないだろうという。イラクのクルド地域の指導部は独立を目指している。ISは、シリアとイラクの国境を消すことを目的にしている。
アラブの指導者の何人かは、西側はこの議論に介入するなと言うが、他の人は外国による介入があってこそ中東は安定するという。
オバマ政権は「外側にいる」ことに徹しようとしている。利益を狭く定義し、これに焦点を当てている。イラクの中央政府、アバディ首相を支持し、モスル奪還に熱意を示している。
来年にも、モスルもラッカも奪還し、ISを敗北させられるかもしれないが、その後どういう政治構造ができるのか、コンセンサスはない。イラクとシリアが現在の形で残るという人は少なく、緩やかな連邦になるだろう。しかしオバマは新しい政治構造を作る気はなく、サイクス・ピコ協定に代わる政治構造が出てくるのには1年以上かかるだろう。
出 典:Jackson Diehl‘Obama’s minimalist Mideast muddle’(Washington Post, May 15, 2016) https://www.washingtonpost.com/opinions/obamas-minimalist-mideast-muddle/2016/05/15/4f8e5a8e-1861-11e6-924d-838753295f9a_story.html
今年はサイクス・ピコ協定締結100周年にあたります。オスマン・トルコ帝国が解体した後に国境を引いて、イラク、シリア、レバノン、ヨルダンという国家ができました。
上記の論説は、サイクス・ピコ協定100周年に際し、色々な人が意見を表明していることを紹介したに過ぎません。
しかし、この協定が中東地域の不安定の根本原因であると言う説は強く、かつ説得力があります。ボストン大学のフロムキン教授は“A peace to end all peaces”(第一次大戦中のスローガン:A war to end all warsをもじったもの)という本を書いて、そのことを強く主張しています。
ヨルダンはともかく、イラクもシリアもレバノンも、今は国家の体をなしていない状況にあります。
人為的に作られた秩序も100年も経つと
それなりの命、慣性を持つ
サイクス・ピコ協定で出来た地域秩序を変える時期が来ていると言う意見は強いです。しかし、新たな秩序をどういうものにするのかは大難問です。国境を新たに引いて今の国家に代わる国家を作ってもうまくいかないでしょうし、新秩序を地域に押し付けるパワーもないように思われます。結局のところ、今の地域秩序をベースに、かつての単一国家シリアやイラクを緩やかな連邦制または国家連合にしていき、諸宗派、諸民族の要望をできるだけ満足させていくしかないように思われます。地域秩序の革命的変更ではなく、漸進的変化、徐々に変化していくよりほかないのではないかと思われます。人為的に作られた秩序も100年も経つと、それなりの命、慣性を持つことになります。
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