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脱「財政原理主義」〜良い借金、悪い借金

S&Pは、米国の長期格付け「AAA」について、アウトルック(見通し)を「安定的」から「ネガティブ」に変更した。「ネガティブ」は今後2年以内に3分の1の確率で格下げの可能性があるというもの。 近い将来に格付けが変更になる確率が高まっている場合に指定する「クレジットウオッチ」と比べると、実際に格下げになる可能性は低い。
S&Pが米国債のアウトルックを変更した理由は、「中・長期的な財政への試練にどう対応するかについて、米国の政策当局が2013年までに合意に達しないかもしれないという重大なリスクがある。もしその時までに合意に達せず、有益な措置が開始されない場合は、米国の財政状況は他の『AAA』格付け国(英、独、仏、カナダ)と比較して、大きく悪化することになる」というもの。

S&Pによる米国の長期格付けに見通しの引き下げを受けた金融市場の反応は、外国為替市場ではドルが主要通貨に対して昨年11月以来で最大の上昇、債券市場も瞬間的に下落(金利上昇)したものの直ぐに反発し、2年債と 10年債の利回りが3週間ぶりの水準まで低下と、完全に格付け機関の評価を無視した格好。

そもそも格付け機関の評価基準は曖昧なもの。日本を含め、外貨準備高世界上位5カ国の内1位の中国、 2位の日本、4位の台湾の3カ国 の格付けが揃ってAA-と、金融市場で財政危機が懸念されているスペイン(AA)よりも低く格付けされていることなどその象徴。また、現在財政危機に見舞われているポルトガルが、1年ほど前まで日本の直ぐ下のA+と高い格付けだったことを見ても、格付け機関の評価の信憑性は疑わしいと言わざるを得ない。 AA-に格付けされている日本国債が、AAAに格付けされている国の全ての国債よりも低い利回りで取引されていることからも明らかなように、格付け機関の格付けは金融市場から全く信頼を得られていない、というのが現実。

こうした現実を顧みず、日本では格付け低下に伴う金利上昇懸念を煽ることで、過度な財政再建論を掲げる「財政原理主義」が国民の間まで広く浸透してしまっている。何年にも渡る布教活動の成果によって、今では多くの国民が「財政再建の為の増税やむなし」という、政府にとって「物分かりのいい納税者」になってしまっている。

今回の復興債発行計画においても、「財政原理主義」の教義に基づき、その償還財源として「消費税増税」が取り沙汰されて来ている。デフレによって財政悪化に陥った日本が、増税というデフレ政策によって財政再建を図ろうとする姿は、ある意味滑稽でもある。

1000年に一度という震災とそれに伴う放射能汚染という、人類史上経験のない危機に直面したこの期に及んで、償還財源を担保しなければ復興債を発行しないという政府の姿勢も、その為に消費税増税も受け入れるという国民感情も、「財政再建原理主義」に汚染されたもの。
国家存亡の危機を迎えた今は、赤字国債であろうとなかろうと(実際には被災地を中心に新しい社会インフラが出来上がるので、その面から言えば赤字国債ではない)、国債を発行して復興資金を確保するべきではないのか。財政規律を保つために日銀引き受けを避けたいのなら、日銀が市場で国債を購入すれば良いだけのこと。復興債という名の借金は、借金をして浪費する「悪い借金」ではなく、新たな社会インフラを作ろうとする「良い借金」であることを国民は再認識すべきである。

「財政再建原理主義」は「子孫に借金を残すな」と主張するが、「(借金を恐れて)子孫に衰退した国を残す」というのでは、「角をためて牛を殺す」様なもの。金融市場で信頼を失っている格付け機関の格付けなどに神経質にならず、一日も早く「財政再建原理主義」から脱却し、政府と国民が一体となって日本の復興に全力を挙げられる体制を整えて貰いたいと切に願うばかりである。

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