ジェンダー関連の炎上の中でも不可解な炎上だった。一般社団法人テレコムサービス協会の「ICT女子プロジェクト」である。
そもそも募集意図がよくわからない
サイト内にあった説明によれば、「ICT女子プロジェクト」とは、「全国津々浦々でICTを用いて活動する女性(ICT女子)を発掘し、彼女達に一層の活躍の場を提供するための取組」。この一環として「ICT48」というグループ、総勢48名(3人×16チーム)のメンバーを募集した。
炎上の大きな理由は、このグループの応募資格が「2016年7月1日時点で13歳~24歳」の女性限定だったこと。さらに応募用紙にはアップと全身両方の写真を大きく貼り付ける仕様だった。
年齢差別であり、実際の業務とは関係ないはずの容姿で判断されるかのような応募用紙であり、炎上要素はふんだんにある。しかし、これまでのジェンダー系の炎上案件と一線を画すのは、そもそもなぜこの内容で子どもを含めた若い女性限定で集めることが必要なのか、まったくわからない点だ。
採用されたメンバーはチームに分かれて「新たなビジネスモデルを発掘し、研究会が主催する発表会への参加を競う」という内容だったらしい。この説明から感じるのは、ICTについて真面目に考え、行動してくれる人材である。なぜ、年齢や容姿が重要だと思わせるような募集を行ってしまったのか。
また、サイト内では「公式応援団」をアイドルグループ「アップアップガールズ(仮)」が務めていることも紹介されており、わざわざ新たにアイドルグループのオーディションを連想させるような仕掛けを行う意図がわからない。
このコーナーで取り上げた、H.I.Sの「東大美女図鑑」騒動や「美しすぎない合同説明会」は、企画側が女性に対する一種の「性的役割分担」を感じさせる点が問題だった。「ICT女子プロジェクト」も結果的に女性の年齢差別、外見偏重につながる部分が糾弾されているのだが、その前にプロジェクトの説明と募集内容の隔絶がすごすぎる。ジェンダーの問題以上に、プロジェクト自体の説明の下手さ、企画の詰め方の甘さに根本的な問題がありそうで、企画者の意図を真面目に考えようとするほど混乱してくる。
オッサンは女子の好きなものを想像できない
プロジェクトと募集内容の、ちぐはぐ感。ICTに真面目に興味のある女性は、年齢制限や写真重視な応募書類を見てモチベーションをそがれそうだし、反対にアイドル活動を目指す女性にとって、「ICT(情報通信事業)の新たなビジネスモデルを発掘」というような条件は重たく感じられないだろうか。ICTに興味関心が高く、さらに自分の容姿でも勝負したい13~24歳の女性というのもどこかにはいるかもしれないが、48人(以上)公募するというのは、なかなかのチャレンジに思える。
「批判殺到「ICT女子プロジェクト」サイトが“白紙”状態に 担当者「中止や撤回ではない」」(ITmedia)によれば、担当者は「企画の意図をうまく伝えることに失敗し、アイドルグループの募集をしているような表現になってしまっていた」と説明したという。
記事内にはこのほかにも、「実態面や報酬面でもアイドルグループでは全くない」「『48』とついているが、人数制限はなく、『応募していただければ誰でも歓迎』」といった説明がある。これらから推測できるのは、「ICT女子プロジェクト」が「ICT48」として募集していたのは、ICTを活用しての情報発信に興味のあるボランティアの若い女性たち、といったところなのではないか。不器用で不慣れな打ち出し方が、この炎上を招いてしまったのではないか。
……いや、少し擁護めいたことを書いてはみたが、やはりキツイ。最大限、好意的に考えて導き出される答えは、「ICTという言葉に興味を持たない女子を集めるためには、女子の好むアイドルオーディション形式にすればいいんじゃないか?」というオッサンの発想だ。アイドルオーディションに興味を持つのは、一部の女子と一部のオッサンなのに。「最近、○○48ってつける企画が流行っているから」だったとしても、話題が古い。ノリ遅れている。スピードが重視される情報通信事業で、こんなノリ遅れがあっていいのだろうか。とても悲しい。悲しい炎上案件だった