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刑の一部執行猶予制度スタート2

一部執行猶予の制度によって、裁判で言い渡される刑に新たな選択肢が加わりました。とはいえ、一部執行猶予の適用は、従来からの執行猶予(今後は「全部執行猶予」と呼ばれることになります)とは異なる考え方で判断されるといいます。

覚せい剤の単純使用や所持の事件を例にとって、考えてみましょう。
全部執行猶予、一部執行猶予を付けることができるのは、懲役・禁錮3年以下の刑を言い渡す場合、とされています。覚せい剤の単純所持や使用の事件の第一審では、被告人のほとんどが懲役3年以下の刑を言い渡されているので、覚せい剤事件で裁判を受ける被告人は、基本的に、この制度に当てはまることになります。

●ステップ1・・・全部執行猶予とするか、実刑相当か

この段階では、従来通り、刑事責任の重さによって犯した罪に相応する刑が決められ、全部執行猶予とするか、実刑相当かが判断されます。

■全部執行猶予
[対象]
全部執行猶予の対象になりうるのは、基本的に、懲役・禁錮の前科のない初犯者か、前科はあってもその刑の執行終了から5年以上が経過した者(準初犯者)です。
ほかに、執行猶予中の再犯者に対する再度の執行猶予と呼ばれるものがありますが、新たに科される刑が懲役・禁錮1年以下の場合に限られるため、覚せい剤事犯の再犯事案では懲役1年以下の判決が言い渡されることがごく少なく、これが適用されるケースはまれです。
[全部執行猶予適用の要件]
上記の対象に適合する被告人の全てに、全部執行猶予が言い渡されるわけではありません。刑法では「情状により」判断されるとあります。
たとえば、前刑の執行終了から5年以上が経過した被告人は、いわゆる準初犯者として取り扱われますが、実務上では薬物事犯の懲役前科がある場合、5年程度の経過で全部執行猶予が付されることは極めてまれです。

<実刑相当の事案>については下記の判断過程へ

●ステップ2・・・実刑相当の事案について、一部執行猶予の可否を判断

一部執行猶予制度は、再犯防止や改善更生の観点から、一定の期間施設内処遇を行った上で、その効果を維持・強化するため、相応の期間、社会内処遇を行うことが有効であると考えられる場合に、刑期の一部を執行猶予とするものです。

たとえば、懲役2年、うち6月を2年間の保護観察付執行猶予、と言い渡された場合であれば、
まず1年6月を刑務所に収容されて服役した後、釈放され、その後は社会内で過ごしますが、猶予される6か月の刑期に対応して2年間の執行猶予期間が定められているので、釈放後の2年間は執行猶予中という緊張感のある立場に身を置くことになります。保護観察がつけられる場合は、その期間を通じて保護観察所の監督下を受けることになります。

今回、新たに導入された一部執行猶予は、法律の上では下記の2タイプです。
①刑法27条の 2第 1項が定める刑の一部の執行猶予
・・・・・主に初めて実刑判決を受ける者を対象とする制度
②薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予
・・・・・薬物使用等事犯者であれば、累犯者でも対象となる制度
覚せい剤の単純所持・使用事件の被告人であれば、執行猶予中であっても、複数回の前科があっても、一部執行猶予の対象となるわけです。

■刑法27条の 2第 1項が定める刑の一部の執行猶予
[対象]
ここで対象となるのは、わかりやすく言うと、
・初犯者および準初犯者であるが、情状によって全部執行猶予が付けられなかった者
・執行猶予中の再犯者
ということになります。
[一部執行猶予適用の要件]
刑法は「犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」に刑の一部の執行を猶予することができると定めています。

■薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予
[対象]
この制度の対象となるのは「薬物使用等の罪を犯した者であって、刑法第27条の2第l項各号に掲げる者以外のもの」とされています。つまり、覚せい剤などの規制薬物に関して非営利犯罪を行った被告人であれば、
・懲役、禁固の前科があってもよい
・懲役刑、禁錮刑の執行終了から5年以内であってもよい
ということです。
ただし、上記の刑法第27条の2第l項の対象者は、刑法の規定が適用されるので、この法の対象にはなりません。
[一部執行猶予適用の要件]
法は「犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内においても規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」に、刑の一部の執行を猶予することができるとしています。
刑法の規定と比べて、薬物依存の改善による再犯防止の意図がさらに強く打ち出され、この趣旨に沿って、一部執行猶予が言い渡される際には、必ず保護観察が付けられ、薬物処遇プログラムの受講が義務となります(更生保護法第52条の2第1項)。

●具体的には、どんな人が対象なのか

非営利の薬物事犯者であれば、執行猶予中であっても、複数の前科があっても、基本的に、一部執行猶予の言渡しを受ける対象となるのが、この新制度です。
しかし、新たな制度が導入されてしばらく、一部執行猶予判決が言い渡された事例の報道が相次いでいるとはいえ、その裏には、新制度の導入後も従来通りの刑が言い渡されている多数のケースがあることを見落としてはいけません。

覚せい剤の単純所持や使用事件は、どこの地方裁判所でも連日のように審理されていて、毎日全国で数十人の被告人が判決を言い渡されていますが、一部執行猶予の判決を受けた被告人は、そのごく一部に過ぎません。

具体的に、どんなケースで、どのような被告人にこの新制度が適用されていくのか、その動向を見極めるには、もう少し様子をみることが必要でしょう。

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