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特集:ヒラリー・クリントンは勝てるのか

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少し先に「当確」を決めたドナルド・トランプ候補に続き、今週はヒラリー・クリントン候補も代議員数が「マジックナンバー」に到達し、民主党大統領候補の座を確実なものにしました。これで2016年選挙は、2人の候補者に絞られたことになります。
  「究極のベテラン政治家」対「政治未経験の不動産王兼テレビ司会者」という両極端の争いとなります。他方、ご両人はほぼ同世代で、ニューヨークに地盤があり、いわゆる「セレブ」であることなど共通点も少なくありませ。大統領候補にしては珍しく、「好きというより嫌いという人の方が多い」という点もそっくりです。両者の戦いは、米大統領選の歴史に残る「激しい」「汚い」ものになりそうな気がします。

●日米関係はいよいよ盤石か?

  6月7日の、前日に行われた「日経・CSISシンポジウム」の要約が掲載されている(激動する東アジアと米国の指導力)。今年で3回目となる「富士山会合」(6/4-5)で訪日した米政府の知日派要人たちが、日本側の有識者とともに北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出を論じている。メンバーには、リチャード・アーミテージ、カート・キャンベル、ジョン・ハムレといった「毎度お馴染み」の面々が揃っている。
 特に今年は、6月4-5日にシンガポールでシャングリラ会議が行われ、6-7日に北京で米中戦略・経済対話が行われている時期に重なった。南シナ海の問題で中国が集中砲火を浴びているときに、日米の安保人脈が東京で一堂に会しているわけだから、中国から見ればいかにも気になるところであろう。6月9日未明、中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島の接続水域に出没したのは、あるいは「腹いせ」であったのかもしれない。

特に今年は、6 月 4-5 日にシンガポールでシャングリラ会議が行われ、6-7 日に北京で米中戦略・経済対話が行われている時期に重なった。南シナ海の問題で中国が集中砲火を浴びているときに、日米の安保人脈が東京で一堂に会しているわけだから、中国から見ればいかにも気になるところであろう。6 月 9 日未明、中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島の接続水域に出没したのは、あるいは「腹いせ」であったのかもしれない。 シンポジウムでは、ミシェル・フロノイ元国防次官が基調講演を務めている。いかにも将来を見越しての布石という感がある。フロノイ氏は 2010 年の QDR を担当し、かねてから「将来の国防長官候補」の呼び声が高かった1。2014 年にヘーゲル長官が退任した後にもチャンスがあったが、残り 2 年しかないオバマ政権で務めるよりは、クリントン政権下での「女性初の国防長官」就任を目指したようである。それにしてもペンタゴン内部でも、こんな風に女性幹部が育成されていることには、つくづく感心するほかはない。

米国の安全保障専門家が、超党派でこれだけの質と量で東京に勢揃いするということは、日経新聞の見出しにある通り「日米の結束、さらに深化」という状況を顕著に示しているといえよう。ただしあいにくなことに、これらはすべて「来年、クリントン政権が誕生した場合」に使える人的資産である。トランプ政権誕生の場合は「宝の持ち腐れ」、あるいは「無駄な投資」になってしまいかねない怖さがある。

案の定、「米国の大統領選挙と日米関係」のセッションでは、こんな発言が飛び交っていた。

キャンベル氏 「クリントン氏は優れた人物だが、選挙活動でうまく伝わっていない部分がある」

アーミテージ氏 「クリントン氏は政府内の人から見るとすばらしいが、一般有権者からの人気は足りない部分がある」

前者は第 1 期オバマ政権で、クリントン国務長官の下で「アジア重視政策」(リバランシング)を起草した東アジア・太平洋担当国務次官補であり、後者は第 1 期ブッシュ政権でパウエル国務長官を支えた副長官である。二大政党の重鎮が揃って、「ヒラリーを支持」、というより「ヒラリーを心配」している。ちなみにアーミテージ氏は、今年 3 月時点で「トランプ氏が指名されたら、クリントン候補に投票する」考えを示している2

トランプ氏について、両人は次のようにコメントしている。

アーミテージ氏 「トランプ氏は全てのことをおカネで計れる、商取引のように見ている。ただ学習はしていくと思う。それに全ての政策を大統領の思い通りにできるわけではない。かつてカーター元大統領が中韓米軍を引き上げる方針を示したことがあったが、下院や国防総省などが反対し、実現しなかった」

キャンベル氏 周りが助言すればまともな行動ができる。共和党の候補指名を確実にしてからしばらくたって態度が穏健になった。ただそれでも彼は米国が築いてきた制度を危険にさらすだろう」

察するにお二人は外交・安保政策のプロとして、こういうときに定番の公式見解、節度ある楽観論(もしくは現実論)を述べている。だが本音の部分では、2016 年選挙は途方もないギャンブルに思えているのではないだろうか。

●支持率?オッズ?どちらが優勢?

それでは真面目な話、「トランプ対クリントン」の勝敗確率はどれくらいなのだろうか。 全国規模の世論調査を見ると、両者は怖くなるくらい接近している。6 月 9 日現在で、クリントン 44.0%対トランプ 42.0%とわずか 2 ポイント差である。

もっとも世論調査には、電話を使っていること、実施機関によるバイアスがあること、「今日が投票日だとしたら…」という仮定がつくことなど、いろんな面で限界がある。また「全国レベルの調査結果」は、一般投票総数(Popular Vote)には反映されるかもしれないが、「各州の選挙人総取り競争」(Electoral College)という大統領選挙の結果に直結するとは限らないという問題点もある。

そこでいつもながらの本誌の方針は、「ギャンブラーに訊け」である。上は英ブックメーカーによるオッズだが、6 月 9 日時点でクリントン候補は少し上がって 4 対 11、トランプ候補は少し下げて 9 対 4 となっている。日本式のオッズに直すと、単勝 1.36 倍と 3.25 倍となり、結構な大差となっている。この程度には、クリントン候補が優勢と見ることが許されよう。ただしギャンブルの現場では、この程度の差が逆転することはめずらしくない。依然としてクリントン候補は、「死角のある本命馬」と見るべきであろう。

サンダース候補の可能性も少しは残っていて 17 倍。さらに、「司法省が、メール問題でクリントン氏を起訴する確率がゼロではない」という事実を反映して、立候補していないバイデン副大統領がわずかなオッズでカウントされている。

逆に共和党内では、他の候補者はすっかり消えてしまった。トランプ候補は早々と代理人の過半数を獲得し、党内の幹部たちも手の打ちようがなくなった。既にライアン下院議長も、先週、しぶしぶながら「トランプ支持」を打ち出したところである。

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