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オバマが直面する最終テスト 中国 スカボロー礁の支配強化 - 岡崎研究所

ワシントン・ポスト紙が5月8日付社説で、中国がスカボロー礁に軍事基地を建設しようとしている件を取り上げ、これは中国の南シナ海での行動を増長させるものであり、オバマ政権が阻止できなければ同盟国の信頼を失いかねない、と強く警告しています。社説の論旨、次の通り。

 オバマ大統領は、アジアへのリバランスを外交政策の一つの柱としたが、任期最後の数カ月、中国からの重大なテストに直面するかもしれない。習近平はすでに、南シナ海の二カ所で埋め立てを進めている島を軍事化しないとのオバマに対する約束を破っている。今や中国は、スカボロー礁に基地を建設することを考えているようだ。オバマ政権がこの大胆な一歩を阻止できなければ、地域における米の影響力を強化すべく行ってきたことの多くが駄目になり得る。

 4年前に比から奪取したスカボロー礁の開発は、好戦的な中国の南シナ海における行動を多くの面でエスカレートさせよう。これまで、中国の埋め立て、滑走路建設は、中国が既に支配している、中国本土に近い島々で行われてきた。スカボロー礁は、中国から約500マイル離れている。そこに基地が出来れば、中国はレーダーとミサイルで、マニラと在比米軍に脅威を与え得る。

 最も重要なことは、この中国の冒険は、中国は近隣国との領有権争いの解決において国際法の遵守を拒否する、ということを具現化する点であろう。フィリピンはスカボロー礁の奪取に、国連の仲裁裁判所への提訴で応じたが、中国の行為は、習近平は中国の地域における主張を進展させるには暴力の使用も辞さないことを示唆している。

 オバマ政権は、中国の行動を変えさせようと努力してきた。フィリピンに対し数百万ドルの新たな支援をし、米軍のアセットを同国の5つの基地に駐留させる合意をするなど、フィリピンとの軍事協力を大きく拡大したことは、注目に値する。4月にカーター国防長官は、11日間の米比軍事演習を、「両国は合同海空パトロールを行う」と宣言して締めくくった。その直後、国防当局者は、米軍機がスカボロー礁付近を3回異なる日に飛行する、と発表した。

 問題は、これで十分か否かである。先月の議会の公聴会で、民主共和両党の上院議員がオバマ政権の限定的な「航行の自由作戦」について疑問を呈した。ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、ホワイトハウスは4月、スカボローをめぐる双方の「温度を下げる」ために、パトロールを1回取りやめた。

 ブリンケン国務副長官は、上院で「我々は中国に対し、陰に陽に、非常に精力的かつ積極的にメッセージを送っている」と述べたが、「中国の攻撃的な動きは、近隣国をますます怒らせ、懐疑的にさせ、米と緊密にさせ、包囲されることになるので、自滅的である」とのオバマ政権のお馴染みの分析も披露した。

 今のところは、それは正しいかもしれないが、オバマ政権が中国のスカボロー礁での建設活動を止めることができなかったならば、同盟国は米との同盟は役に立たないと結論付けるであろう。

出典:‘Dangerous rocks in the South China Sea’(Washington Post, May 8, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/dangerous-rocks-in-the-south-china-sea/2016/05/08/e961f34e-115b-11e6-93ae-50921721165d_story.html

 中国はスカボロー礁に軍事基地を建設しようとしているが、もし米国がこの動きを阻止しなければ、米国は同盟国の信頼を失うだろう、との本社説の警告は、的を射たものと言えます。

 今日、南シナ海において国際間のルールや国際法の遵守を拒否する形で、中国が一方的かつ独善的にとっている現状変更の動きを国際社会は放置すべきではありません。スカボロー礁では、中国はレーダーとミサイルの基地を建設中です。

腰が引けたままのオバマ政策

 米国は目下、「航行の自由」作戦をとっていますが、ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、ホワイトハウスは4月「スカボロー礁をめぐる米中間の温度を下げるために」、もともと予定していた米軍のパトロールを一回取りやめた、とのことです。このようなホワイトハウスのアプローチは、オバマ政権の方針が依然、全体として腰の引けたものであることを示しており、現状のままでは同盟国が米国との同盟は役に立たない、との結論をくだしても不思議はないという指摘はその通りでしょう。

 フィリピンのドゥテルテ次期大統領は、現アキノ大統領と比較して、対中国融和論者と見られており、中国がこの政権交代に便乗するような形で、国連海洋法に基づく仲裁裁判所の裁定時期を遅らせることもあり得ることは、特に警戒を要する点でしょう。

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