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参院選では「この国の在り方論」をー自分基準で候補者や政党を選ぶヒント(その2 憲法と安全保障)

 6月5日に行われた沖縄県議会議員選挙、翁長知事を支持する県議会与党が改選前よりも議席を積み増して圧勝、県議会野党である自民党は参院選を前にして手痛い敗北を喫した。

 平成27年版防衛白書によれば、沖縄には我が国に設置された米軍基地(在日米軍施設・区域(専用施設))のうち74%が所在する。言うまでもなく、沖縄県と米軍基地問題、在日米軍問題は切っても切れない関係にある。沖縄県民にとってこの「問題」とは、①在日米軍の軍人・軍属らによって凶悪なものを含め度重なる犯罪が引き起こされていること、②同じく平成27年版防衛白書によると、在日米軍が県内の227㎢もの土地を使用しているため、経済発展が大きく阻害されていること、③したがって沖縄経済は在日米軍に大きく依存せざるをえないことの3つに大別できよう。

 米軍基地問題、在日米軍問題といえば、このうち①と国と沖縄県の対立がずっと続いている米軍普天間基地の辺野古移転問題を想起する人が多いのではないだろうか。確かに、首都圏にいて、その関係のニュースが流れるとすれば、最近ではこの二つが中心である。しかし、在日米軍は横田、座間、横須賀等、首都圏近郊にも駐留しており、凶悪犯罪のみならず、その存在によって首都としての機能が削がれ、また発展の可能性にも、沖縄ほどとは言わないものの、キャップがはめられてしまっている部分がある。(その最大にして最も分かりやすい例が、首都上空にある横田空域である。)

 つまり、米軍基地問題、在日米軍問題は我が国全体として考える必要がある問題であるということである。(聞いてみれば当たり前かもしれないが、各論に陥らないよう、ここでは強調しておきたい。)

 さて、この問題の下地になっているのは、日米安全保障条約と日米地位協定である。このうち、日米地位協定は裁判権を中心に治外法権規定を含み、在日米軍人・軍属による凶悪犯罪に対して、日本の警察や裁判所を事実上「なすすべもない」状態にし、被害者や被害者家族を、諦めてはいないものの事実上「泣き寝入り」状態に追いやっている。

 直近に起きた、元海兵隊員の軍属による女性殺害・遺棄事件を引き金にして、日米地位協定の改定を求める声が高まっている。政府はこの声を受け止めてはいるようではあるが、あくまでも運用で改善という従前からのアメリカ側の姿勢を変えさせるところまで押し切ることができるかと言えば、その点については及び腰のようである。

 現政府、つまりは安倍政権であるが、この政権の安全保障観は、日米同盟を軸にしてアメリカへのこれまで以上の協力によって、我が国の安全保障を強固なものしようというもの、簡単に言えばそういうものである。政府の平和安全法制は、まさにそのためのものである。その観点からは、日米地位協定の改定というものは、日米同盟の強化に反するものになりかねず、選択肢にはなりえないだろう。

 今回の参院選において、この日米地位協定の改定への姿勢は争点の一つとはなるだろう。ただし、賛成派であっても反対派であっても、考えるべきは同協定の改定という枝葉の部分ではなく、我が国の国防・安全保障をどうしていくのかという点であるはずである。それには正しい国際情勢認識が前提となる。(この点については、残念ながら、与野党ともにリアリズムに欠ける議員は数多くいる。少なくとも、政府の平和安全法制の前提となっている国際情勢認識は誤りである。この点については、拙稿「安保法制施行を受けて日本の安全保障について改めて考えてみるー政府法制では茹でガエルになります」を参照されたい。)

 さらには、この国の在り方をどうしていくのかという点についての考察が必要であり、本来であればこれこそが争点となるべき事項である。具体的に言えば、国士であった政治家や官僚の尽力も虚しく戦後70年以上一貫して続いてきた対米従属に終止符を打って、真の独立国となるのか、それとも対米従属を続け、それを強化し、アメリカの保護国の地位に甘んじ続けるのか、の選択である。無論、そう簡単に対米従属を終えることができるものではないが、最初の一歩を踏み出すのか否かということである。

 そしてこのことは憲法改正という点にもつながる。憲法はまさに国の在り方を規定したものであり、これに基づいて個別の具体的な制度が組み立てられている。

 さて、現在の日本国憲法、敗戦後のアメリカによる占領下で、日本の歴史的背景や社会、文化等を無視して、GHQの若手の将校が数日で作ったものである。日本政府や国民の意思に関係なく無理矢理押し付けられたものであるから改正すべしとの声が近年、特に現在の安倍内閣になってから強くなってきている。

 一方、そうした改憲の声の高まりを受けて、特に安保法制(政府の言う平和安全法制)の審議を契機として、立憲主義や平和主義を唱える憲法第9条護を護れとの声も大きくなってきている。

 しかし、残念ながらそこには、日本国はかくあるべしという議論は見られない。(もちろん、西部邁氏ら真正保守の論客の方々は、この点を基礎に置いて論陣を張っておられるが。)

 国の在り方を論ずることなく憲法改正の議論をしても何の意味があろう。真正保守の方々を除いて、改憲派は押し付けられたとは言うものの、彼らから対米従属を改めようという声を聞いたことがない。

 護憲派は、その多くが戦争法(安保法制に対する彼らの呼称)は憲法第9条の平和主義に反し、これを破壊するものだと、同法への反対を主張している。(自民党はこの「戦争法」を廃止の是非も争点としたいと考えているようだ。)彼らは憲法第9条を護れと、熱狂的な新興宗教の信者のように唱えるが、一体この国の在り方をどう考えているのだろうか?おそらく「平和国家」だと答えるだろう。しかし、「平和国家」というだけで、国の在り方といえるのだろうか?自主防衛力についての議論が欠如した状態で「平和国家」と言っても、対米従属の下での擬似的な平和の継続を渇望しているようにしか思えない。(つまり、9条を護ってアメリカ様に護ってもらうのだから自衛隊なんていらないと言っているのと同じということ。)そして、「対米従属の下での」という点においては、「戦争法」賛成派となんら変わらなくなってしまう。

 憲法改正にしろ安全保障にしろ、全てはこの「国の在り方論」に最後は行き着く。否、そもそもそこから議論を始めなければいけないはずである。今回の参院選、国の在り方をしっかりと論じることができ、そこから理路整然と主張ができる候補者は、与野党問わず何人いるのだろうか?

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