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「子どもの貧困対策プロジェクト」―全国100カ所50億円投下―

日本財団は、株式会社ベネッセホールディングス(以下、ベネッセ)をはじめとする各分野の第一人者とともに、子どもの貧困問題の有効な解決策を実証する「子どもの貧困対策プロジェクト」を開始し、その第一号拠点を埼玉県戸田市に開設することとなりました。

わが国の子どもの貧困率は、1980年代から一貫して上昇傾向にあり、今日では6人に1人の子どもが貧困状態にあるといわれております。こうした世帯で育つ子どもは、医療や食事、学習、進学等の面で極めて不利な状況に置かれ、将来も貧困から抜け出せない傾向があり、子どもの貧困問題への対応は喫緊の課題となっています。

日本財団は、特別養子縁組支援や児童養護施設出身者への奨学金設置、障害児への学習支援など、様々な「生きにくさ」を抱える子どもへの豊富な支援実績がございます。子どもの貧困問題については、この対策を新たな重点支援分野として掲げ、各分野の第一人者で構成するプロジェクトチームの立上げを進めてまいりました。昨年より、子どもの教育・生活分野で長年の実績と豊富な知見を有するベネッセを中心に、本プロジェクトチームでは子どもの貧困問題の有効な解決策の検討と具体化に取り組み、埼玉県戸田市にその第一号拠点を設置する運びとなりました。第一号拠点で、本事業の有効性を検証し、全国への展開を目指します。

以下、記者会見での私の挨拶です。

                   ****************

2016年5月23日(月)
於:日本財団ビル2階


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ベネッセホールディングスの福原さんと

皆様ご承知のように、日本財団ではパラリンピックサポートセンターをはじめ、あらゆる分野の障がいを持った人たちへの支援を行っています。また、今は熊本の被災地でも懸命に努力していますが、災害救援活動や高齢者の支援は50年以上に亘ってやってきた組織です。しかし昨今、子どもの貧困問題についての報道が数多く取り上げられるようになりました。

子どもの貧困の状態は以前よりひどくなってきています。日本財団の調査によりますと、貧困を放置した時の経済的損失は一学年で2兆9千億円にもなります。障がいを持った子どもの問題に関しては以前から取り組んで参りましたが、「子どもの貧困問題」の解決というのは、まさしく国民的な関心事です。

極端な例を申し上げるのは如何かとは思いますが、日本財団の職員が面談をした折、将来何になりたいかということを聞いた時「うちは生活保護でお父さんも生きてきたから、僕も生活保護でいくんだよ」という答えが2、3あったと聞き、愕然としました。夢も希望も持てないで、その日暮らしの子どもたちが多数存在しているという非常に深刻な状況を改めて痛感し、これをどう解決するかを考えました。

私も長い人生を歩んで参りまして、子どもの頃を思い起こしました。私の場合ですが、学校が終わって帰り、お米屋さんや畳屋さんの前に行けば必ず中学1年生くらいから幼稚園の子どもたちが集まって遊びに耽っていました。生傷が絶えませんでしたが、足に擦り傷を作ると隣のおばさんが赤チンキを持ってきてすぐ塗ってくれたり、オキシドールを塗られて泡が吹いて痛いのを我慢した記憶もございます。遊んでいる子どもたちがちょっと遅くなると「早くおうちに帰りなさい」と近所のおばさんに叱られ、翌日にはまた集まって遊ぶという幼少期を過ごしました。

経済が成長し、非常に多様化した社会の中で、それぞれの家庭も個人も細分化をされてしまい、子どもたちにとっては今や学校と自宅、この2つにしか居場所がない時代になってきているのです。そういう意味でも第3の居場所を作る必要があるのではないかと思います。

第3の居場所というのはどういうところかと申しますと、コミュニティの中心になるような施設、居場所です。勉強を教えてもらったり、大学生のお兄さんたちとキャッチボールや縄跳びをしたり、鉄棒なども設置してちょっとした運動をしたり、「あそこに行けば仲間がいる」「お兄さんがいる」「話ができる」場所なのです。

もう少し夢を語らせて頂くと、今は老人も居場所がないのです。家庭の中に一日中いますと、奥様から大変なクレームが出るそうです。元気なご老人であれば、その第3の居場所に来て頂き、子どもたちに将棋や囲碁を教えたり昔話を聞かせてほしい。また、お母さんが夜働いていて食事が出来ないようなお子さんには食事も提供したいと考えています。近所の方々が食べ物などの届け物もしてくれるような、そしていただいた物に対して「ありがとう」という言葉が素直に言えるようになるといいですね。食事を通じて礼儀作法を覚えることもできるでしょうし、何よりも勉強もきちんとそこで教えてもらい宿題もできる。このような第3の居場所を作るというのが今回の「子どもサポートプロジェクト」といわれるものでございます。

昨年10月には政府そして経済界、メディアあるいは支援団体などからなる発起人が集まって「子どもの未来応援国民運動」という名の下に華々しくスタートしましたが、残念ながら未だに機能していません。政府もこの問題については深刻に受け止めていますが、依然動きはにぶいのです。

決して政府を批判する訳ではありません。大きい組織なので動き出すまでに時間がかかりますが、動き出せば大きく動いてくれると思っています。しかしその一方で、成熟した社会の中でそれぞれのニーズが多様化してきている今、民間の働きというものが行政でも大変重要視されるようになってきました。

そのような状況を踏まえ、我々はまず50億円の資金を使って全国100ヶ所の拠点を早急に作り上げることに致しました。それぞれの地方の特色を活かし、運営して下さる皆様の方針、方法論も取り入れて、画一的ではなく、地域にあった子どもサポートプロジェクトを作りたいと思っています。

この事業の共通のテーマは「未来の日本国を担う、そして世界に羽ばたく日本人を作る」ということです。そのチャンスを貧しくて生活が困難な家庭のお子さんたちにも平等に与える。これが国の基本であるべき姿だと考え、まずは民間レベルでスタートすることにいたしました。長い間、ベネッセホールディングスの福原さんとも話し合いを重ね、非常に専門的な幅広い知見をお持ちの福原様より「社としても大いに協力をしましょう」という大変力強いご協力を頂けることになりました。

この他に、今日は埼玉県戸田市の神保市長、特定非営利活動法人Learning for Allの李代表理事、そして慶應義塾大学 中室准教授もお見えになっています。我々の理想には十分には叶いませんが、神保市長が大変熱心でいらっしゃいますので、一号店は戸田市にお願いすることに致しました。神保市長自ら音頭を取って開所する場所も決まっていて、恐らく10月頃には完成すると思います。戸田市を拠点第一号として全国に呼び掛けてやっていきたいと考えております。

「子どもサポートプロジェクト」全国100ヶ所、50億円という資金を投入して、今申し上げたような子どもの居場所を作ると同時に、子どもに学校と家庭以外のところで様々なことを学ぶ機会を与え、そこで得た知識によって自分の将来を考え、自分がどういうことに向いているのだろうかということを探し当てることが、教育上大変重要なことだと思っております。

もう少しお話をさせて頂きますと、最近の若い皆様は一生懸命受験勉強をして希望の大学に入った後1割から2割は上級職を目指し、あるいは弁護士、会計士、建築家を目指して勉学に励まれる方がいらっしゃいますが、受験勉強から解放され2年間は遊んで過ごす人が大半で、3年生になってさぁ就職だ、どこに就職したらいいのだろうと迷ってしまいます。本来ならば子どもの時にその子の特徴が何であるかを見つけ出してあげて、「あなたは手が器用だから将来大工さんが向いていますよ」とか「君は非常に精密な絵を描けるのだから建築家になった方がいいのではないか」というような将来の道を探してあげるのも大変重要なことだと思うのです。

私はハンセン病の制圧活動で世界中を回っておりますが、途上国の子どもたちに「将来何になりたい?」と聞くと全員が手を上げます。そして、必ずお医者さん、看護婦さん、学校の先生と答えます。「どうして?」と聞くと「お父さんやお母さんを幸せにしたい」と、どんな山奥の子どもでも答えますが、日本でそういう声を聞く機会が非常に少なくなってきているということは誠に残念なことです。

まだ遅くはありませんし、やらなければならない仕事だと私たちは肝に銘じ、これから試行錯誤しながら只今申し上げた諸問題の解決のために活動を開始することを今日発表させて頂きました。ベネッセホールディングスの福原さんは100%我々の考えに同意をして下さいまして、一番大事な部分についてご協力を頂きました。

ありがとうございました。

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