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極めて深刻な尖閣諸島接続水域侵入事案

 中国海軍とロシア海軍の艦艇が、我が国の尖閣諸島の接続水域に侵入したということです。領海内ではないとはいえ、極めて憂慮すべき事態であり、厳重な警戒が必要です。

 これは当然のことながら偶然やミスではなく、意図的な行動と考えなければなりません。米軍機への中国軍機の異常接近なども発生していたことを考えれば、考えられる背景としては次のようなものかと思われます。

 まず第一に、アメリカにおいて大統領選挙の構図が固まる中で、またいわゆる「トランプ現象」で明確となったアメリカ国民の間で強まりつつある孤立主義的傾向というトレンドの中で、アメリカのアジアへのコミットメント、日米同盟へのコミットメントを試す動きというものです。

 中国にとっても、ロシアにとっても、アメリカが東アジアで軍事的な影響力を維持することは、非常に邪魔なことです。アメリカとそのアジアにおける最大の同盟国日本の関係を揺さぶり、またアメリカの地域における影響力を長期的に低下させることが、中国、ロシアにとっては最も望ましいシナリオです。

 その一番のテストケースが尖閣諸島であり、またおそらく台湾海峡の問題ということになります。

 中国とロシアが連携しているのか否かはわかりませんが、少なくとも中ロ両国が、「共通の利害」を持っているということは客観的に見て妥当な分析だと思われます。

 そして、第二に、南シナ海については「航行の自由」などの観点から、伊勢志摩サミットでも大きな議題となり、その他の国際会議でも議論され、国際社会全体として、問題認識を共有してきているますが、一方で東シナ海の問題がその陰に隠れてしまって国際社会での問題認識の共有ということでは一歩遅れを取ってしまっているという点があるのではないかと思われます。

 国際法的には南シナ海以上に東シナ海の状況のほうが明確で、日本の中間線の主張に100%理があるが故に、そして実効支配を日本がしているが故に、日本は国際社会で問題が存在していないという立場を取り続けています。実際、日本政府として国際社会に対しても、南シナ海の問題に言及することのほうが多いかもしれません。

 その結果として、私も最近いくつかの国の高官・トップリーダーと話す機会がありましたが、日本以外の国においては、南シナ海の問題のほうが東シナ海の問題よりもはるかに認識されていて、「東シナ海については、日本もあまり一生懸命主張していないので問題が深刻ではないのだろう」といった誤解が生じてしまっている現実があります。

 その間隙をついて、中国やロシアが今回の行動を起こした可能性が高いと思われます。

 このような背景で引き起こされた今回の事案ですから、おそらくこれから、中国やロシアはさらに挑発行為をエスカレートさせていく可能性が高いと言わざるを得ません。

 中国の艦艇が領海内に侵入する、あるいは民間人が尖閣に上陸するといった挑発行為が今後起こる可能性が高まっているという認識の下で、日本としても、あらゆる可能性に対応できるよう、自衛隊・米軍の警戒レベルを上げ万一の時の対応ができる体制を作っておくというハード面、万一の場合に対応できる法的整備と世論形成、トップリーダーの覚悟といったソフト面、その両面での備えを強化することが必要です。

 「太平の眠りを覚ます蒸気船」ではありませんが、米国の動向も世界的に注目される中で、国際社会との連携強化とともに、われわれ日本人が日本の国を海外の侵略的行動から護るということを真剣に考えるきっかけにせねばならないくらい深刻な事態、それが今回の中国海軍の艦艇の初の尖閣諸島接続水域侵入事案なのではないでしょうか。

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