記事

やっつけの社員研修が死ぬほど勿体ない理由。 - 後藤和也(産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)

2/2

■研修実施に当たり大切なこと

つまるところ、研修の実施に当たって必要なことは「過去の分析、現状の把握、将来の予測」という視座であろう。職場が抱える問題について、何が要因であり、何が不足しており、どのようにして必要な資源を提供し改善を図るか。研修という形で仕掛けを考えることが肝要だ。そのようなち密な分析なくして、研修全体の青写真は描けまい。

そのためにも、研修のスピリットの部分は肝要である。それなりのポストの人間が参加者に直接語りかけることが一つのキーポイントとなる。例えば新たな人事評価制度実施についての研修を行うとすれば、「なぜ新しい評価制度を取り入れるべきなのか」「そのことにより組織にどのようなメリットがあり、どのように職場が変容するのか」といった核たる部分について、人事担当役員や人事部長が直接説明することで、現場の人間は納得し、たとえ一時的に負荷が増大しようとも、「やってやろう!」とモチベーションを保つことができる。

外部講師の活用についても、社内のキーパーソンが伝えるべき内容と、専門家に教示を乞うべき内容の仕分けを行い、一連のカリキュラムが有機的に連動する流れを構築するべきだ。上述の人事評価制度の例で言えば、制度導入の趣旨や根幹部分については社内の人間が直接伝え、一定のコンセンサスを得たうえで、「傾聴法」や「ハラスメントとならない指導法」など、専門家の視点で現場のニーズが高い内容を実施すれば、研修効果は相乗的に高まる。「○○先生にすべてお任せ」ではなく、全体の流れの中で「○○先生を上手に使う」位の気概が、研修担当者には求められている。

繰り返しとなるが、場当たり的なカリキュラムを組んでも、有名人講師や巷で流行しているビジネススキル等を華々しく扱えば、それ相応の満足感を得ることはできる。しかし、それは最大瞬間風速的なものであり、「ためになったけど、現場では使えないよね」というむなしい研修になりがちだ。だとすれば、わざわざ仕事の手を休め、人を集めた甲斐というものはあるまい。その時間分の生産性を下げるだけの結果となってしまう。

■魂を揺さぶられる研修企画のために

冒頭の話に戻るが、若手社員を自衛隊に入隊させること自体が悪なのではない。ただ、「若手がたるんでる(気がする)から、自衛隊にでも入れておけ」とか「自社研修で厳しく指導するとパワハラといわれるから、自衛隊に丸投げしてしまおう」などという意図が数%でもあるとすれば、その発想自体が悪なのである。

若手がたるんでる、とするならば、その要因は「ゆとり」なる入社前の教育歴にあるのか。それとも入社後にモチベーションを保てない何かがあるのか。そもそも、若手社員に求める能力はどのようなもので、何の軸でその能力開発を支援したいのか。どのような指標で評価するか。最低でもこれらの分析を経たうえで研修を実施するならば、批判があったとしても、堂々と抗弁できるだろう。

「とりあえずやりました」という研修となってしまうならば、まさに、仏を作って魂入れず。関係するすべての人間の時間と労力が無駄になってしまう。研修はムードで企画するものであってはならない。ち密な分析と熱いスピリットのもとで実施したいものだ。研修とは、「自社をこのような良い方向に変えていきたい」という、企業側の熱い思いを直接伝える仕掛けでもあるのだから。

【参考記事】
■我々が就活生を応援すべき理由。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/48765717-20160604.html
■「みんな同じで、みんな良い」社会の暑苦しさとは。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/48677243-20160524.html
■東日本大震災の被災経験から伝えたい「震災時のメンタルケア」。 (後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/48415928-20160421.html
■「育休でもボーナス満額」で男性の育休取得は促進されるのか。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/48294119-20160406.html
■ハローワークでサービス残業が起きた理由。(後藤和也 産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
http://sharescafe.net/48104775-20160316.html

後藤和也 産業カウンセラー キャリアコンサルタン

あわせて読みたい

「マネジメント」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。