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- 2016年06月08日 05:00
やっつけの社員研修が死ぬほど勿体ない理由。 - 後藤和也(産業カウンセラー/キャリアコンサルタント)
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先日、東京都府中市役所が「ゆとり世代を叩き直すため」という意図で若手職員を自衛隊に入隊させる研修を実施した、という記事を目にした。ネット上では「不名誉なレッテル貼って業務と関連の薄い研修にぶち込むって、普通にパワハラ」「マネジメントの問題を新人に転嫁するのは最悪」等の非難が殺到している。
ただし、担当者によれば「ゆとり世代の職員に市が特段困っている、という訳ではないとしている。また、研修は『災害救助』を目的としており、大人数を泊まりで受け入られる場所として、府中市にある航空自衛隊が適切だと判断した」(前掲記事)とのことである。
しかしながら、自社の社員を自衛隊に体験入隊させる研修、というのは案外重宝されているようだ。ある企業では、まさに「ゆとり世代をびしっと」させるため、自衛隊を活用した研修を行っているという(京都新聞「「ゆとり世代びしっと」新入社員研修自衛隊の体験入隊活用増」2016/06/05)。自衛隊への研修委嘱については、精神論的で時代遅れという批判はありながらも、一定のニーズがあるとも言えるだろう。
社内研修を外注することについては賛否両論あるだろう。それぞれの会社の風土や理念は様々であり、研修会社に丸投げするのでは研修効果は高まらない、というのが代表的な批判だ。
しかしながら、現場では様々なスキルが求められ、研修ニーズも多岐にわたる。さらには、会社の規模によっては専任の研修担当部門がなく、特に中小企業においては、通常の総務や人事労務の業務を担当しながら、一方で研修の企画をしているのが実態だ。担当者としては手いっぱいであり、複数の研修をオーダーメイド的に組み立てる余裕もないだろう。専門家の手を借りながら研修を実施することは、多くの企業にとっては現実妥当な判断だと思われる。
筆者はかつて、国の役所に人事交流として在籍していたことがある。その際、産業カウンセラー等の有資格者ということもあり、「心の健康」「ハラスメント防止」等の研修の企画を数多く担当していた。「産業カウンセラーなんだから、頼りにしてるよ」という上司の言葉もあり、かつてないくらい仕事に燃えていたことを記憶している。「役人には負けまい」と、生意気ながら意気込んでいたものだ。
そんな時、筆者は管理職対象のメンタルヘルスの研修内容の企画を担当することとなった。行政屋が思いつかないようなクリエイティブな内容にしようと、流行の心理療法やコーチングの技法について織り交ぜながら、専門のカウンセラーを講師に研修案を提案した。
まさにクリエイティブ、と自負していたところ、上司から返ってきた言葉は「心理療法が大事なのは分かる。ただ、参加者が現場に戻って、この研修内容を、どう使うんだろうね」というものであった。物珍しい研修内容は最大瞬間風速的な盛り上がりを見せる。原案どおり実施したらアンケート結果も上々であったはずだ。
しかし、確かに学んだ内容を現場でどう生かすのか。現場の監督者が部下に対し心理療法をどのように行えるのか。恥ずかしながら、研修後のイメージについてなんら考慮していなかったことに気付かされた。「研修によって社員の行動が良い方向に変化したか。」「それによって組織の生産性は高まったか(組織の生産性向上に寄与したか)」ということが、研修効果の一つの評価軸となる。当たり前といえばそれまでだが、見失いがちな真理である。
■自衛隊での研修とは
東京都府中市が「ゆとり世代の若手職員を鍛え直す」という意図で、入庁3年目の職員を航空自衛隊で2泊3日の研修を行うことを決めたというのだ。
記事によると、研修の対象になるのは入庁3年目の事務職、技術職、保育士職のすべての職員50人。6月の平日3日間を使い、航空自衛隊府中基地で災害時の救助活動やあいさつ、行進などの基本動作の訓練を行うという。
入庁3年目は「一部の職員には自分が何をすべきかを見失ったり、積極性に欠けたりする傾向がある」のだそうで、市職員課は「規律に厳しい自衛隊の訓練を通じて、ゆとり世代があまり経験していない上下関係を学び、チームワークや積極性などの向上につなげたい」と説明したという。
キャリコネニュース「「ゆとり世代職員を自衛隊で鍛え直す」?――「ブラックすぎる」と大炎上中の府中市に真相を聞いてみた」 2016/05/27
ただし、担当者によれば「ゆとり世代の職員に市が特段困っている、という訳ではないとしている。また、研修は『災害救助』を目的としており、大人数を泊まりで受け入られる場所として、府中市にある航空自衛隊が適切だと判断した」(前掲記事)とのことである。
しかしながら、自社の社員を自衛隊に体験入隊させる研修、というのは案外重宝されているようだ。ある企業では、まさに「ゆとり世代をびしっと」させるため、自衛隊を活用した研修を行っているという(京都新聞「「ゆとり世代びしっと」新入社員研修自衛隊の体験入隊活用増」2016/06/05)。自衛隊への研修委嘱については、精神論的で時代遅れという批判はありながらも、一定のニーズがあるとも言えるだろう。
■外部講師は一般的である
社内で研修を企画するに当たり、自衛隊とは言わないまでも、外部機関に研修実施を依頼することは今や一般的になっている。ネットで検索すれば企業からの依頼で研修講師を派遣するいわゆる研修会社が無数にヒットする。講師個人が登録しており、直接「これは!」という講師にアポイントを取ることができるサイトも数多く存在する。社内研修を外注することについては賛否両論あるだろう。それぞれの会社の風土や理念は様々であり、研修会社に丸投げするのでは研修効果は高まらない、というのが代表的な批判だ。
しかしながら、現場では様々なスキルが求められ、研修ニーズも多岐にわたる。さらには、会社の規模によっては専任の研修担当部門がなく、特に中小企業においては、通常の総務や人事労務の業務を担当しながら、一方で研修の企画をしているのが実態だ。担当者としては手いっぱいであり、複数の研修をオーダーメイド的に組み立てる余裕もないだろう。専門家の手を借りながら研修を実施することは、多くの企業にとっては現実妥当な判断だと思われる。
■社内研修のそもそもの目的とは
では、そもそも社内研修の目的とはなんだろうか。何をもって研修の価値や効果を測定すべきだろうか。この根源的な問いに対し、これが正解、というものを示すのは難しいが、筆者の経験から一つの妥当解をお示ししたい。筆者はかつて、国の役所に人事交流として在籍していたことがある。その際、産業カウンセラー等の有資格者ということもあり、「心の健康」「ハラスメント防止」等の研修の企画を数多く担当していた。「産業カウンセラーなんだから、頼りにしてるよ」という上司の言葉もあり、かつてないくらい仕事に燃えていたことを記憶している。「役人には負けまい」と、生意気ながら意気込んでいたものだ。
そんな時、筆者は管理職対象のメンタルヘルスの研修内容の企画を担当することとなった。行政屋が思いつかないようなクリエイティブな内容にしようと、流行の心理療法やコーチングの技法について織り交ぜながら、専門のカウンセラーを講師に研修案を提案した。
まさにクリエイティブ、と自負していたところ、上司から返ってきた言葉は「心理療法が大事なのは分かる。ただ、参加者が現場に戻って、この研修内容を、どう使うんだろうね」というものであった。物珍しい研修内容は最大瞬間風速的な盛り上がりを見せる。原案どおり実施したらアンケート結果も上々であったはずだ。
しかし、確かに学んだ内容を現場でどう生かすのか。現場の監督者が部下に対し心理療法をどのように行えるのか。恥ずかしながら、研修後のイメージについてなんら考慮していなかったことに気付かされた。「研修によって社員の行動が良い方向に変化したか。」「それによって組織の生産性は高まったか(組織の生産性向上に寄与したか)」ということが、研修効果の一つの評価軸となる。当たり前といえばそれまでだが、見失いがちな真理である。
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