記事

真実は“黙っている人の声”にあり? - 塚崎公義 (久留米大学商学部教授)

1/3

世の中で起きている事を正しく理解するために必要な事は何でしょうか?「正確な情報を集めることと、それを的確に分析すること」でしょうか。誤った情報や虚偽の情報を排除する事は容易ではありませんが、さらに難しいのは、黙っている人の声を聞くことだと、筆者は考えています。

満足している人は黙っている

 筆者が教室で講義をしている時、「暑いからクーラーを入れて下さい」という学生がいたとします。クーラーを入れるべきでしょうか? 筆者はそうは思いません。声をあげなかった学生は、現状に満足しているから黙っているだけかも知れないからです。もしも筆者がクーラーを入れたら、残りの学生から「寒い」というブーイングを受けるかも知れないわけです。そこで筆者は、学生に「クーラーを入れて欲しい人は挙手して下さい」というアンケートを採ることにしています。

 教室のクーラーであれば、アンケートを採るべきだと気付くことができますし、アンケート自体も容易ですから、大した問題にはなりませんが、世の中には難しいケースが少なくありません。

 政府が農産物の輸入自由化を計画すると、農家の人々が必死に反対運動を行ないます。彼等にとっては死活問題ですから、当然のことです。しかし、筆者を含む非農家の人々は、積極的に賛成運動をする必要が無いので、黙っています。政府が計画しているのですから、わざわざ運動をする必要が無いからです。こうした場合、政府としては「農家が反対している一方、特に賛成の声が聞こえて来ないから、自由化計画は中止しよう」と考えるべきでは無いでしょう。

 もっとも、農産物自由化問題の場合には、これとは別の要因も考える必要があります。それは、非農家にとっては重要な問題ではない、という事です。自由化のデメリットは少数の農家が大きな打撃を被るわけですが、自由化のメリットは大勢の非農家が少しずつ享受します。従って、必死になって自由化を推進したいと思って行動する人がいないのです。

 こうした事を考えずに政府が自由化計画を中止したり、さらには関税を引き上げたりすると、次の選挙で与党が大打撃を受けるかもしれないので、要注意です。

あわせて読みたい

「経営学」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。