- 2016年06月04日 01:13
米5月雇用統計は惨憺たる数字、6月利上げ織り込み度は急落
2/2フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比微減の1億2314万人と2ヵ月連続で減少した。パートタイムは0.2%減の2790万人と、3ヵ月連続で減少。増減数ではフルタイムが0.6万人減、パートタイムは1.4万人減となる。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は週平均労働時間が34.5時間へ伸びたとはいえ雇用が鈍化したため、前月比で若干の低下と4月の0.2%の低下と合わせ2ヵ月連続で低下した。労働時間が延びなかった割に平均賃金が堅調で、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比0.2%上昇し前月の0.1%を上回った。
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-△
今回は前月に続き9.7%と、少なくとも2008年5月以来の低水準に達した2月の水準に並ぶ。ただし、不完全失業者数は前月比7.8%増の643.0万人だった。
2)長期失業者 採点-○
失業期間が6ヵ月以上の割合は全体のうち25.1%と、前月の25.7%を下回り2009年3月以来で最低を更新した。平均失業期間は26.7週で、前月の27.7週を下回り2009年9月以来の低水準。6ヵ月以上の失業者数は前月比8.4%減の188.5万人と直近で最低を更新した。
3)賃金 採点-○
今回は前月比0.2%上昇だったとはいえ、前年比も2.5%上昇と2009年7月以来の高水準を達成した1月や4月、さらに2015年12月の2.5%に並んだ。週当たりの平均賃金は、前年同月比2.2%上昇の880.30ドル(約9万5000円)にとどまり、前月から鈍化した。生産労働者・非管理職は前月比0.2%上昇の21.49ドル(約2320円)円で、前年比は2.4%上昇。週当たりの平均賃金は前年同月比2.4%上昇の722.06ドル(約7万8000円)だった。
非管理職・生産労働者の平均時給、管理職を含む全体の伸びとほぼ整合的。
リンク先を見る
(作成:My Big Apple NY)
4)労働参加率 採点-×
今回は62.6%となり、前月の62.8%から低下。1977年9月以来の低水準だった2015年9−10月の62.4%を視野に入れた。軍人を除く労働人口は0.3%減の1億5847万人と、2ヵ月連続で減少した。労働人口の減少を受けて、非労働人口は0.7%増の9471万人と2ヵ月連続で増加。労働参加率の低下に合わせ、労働力が市場に戻ってくる流れが一服した。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番のジョン・ヒルゼンラス記者の署名による「雇用統計で6月利上げの可能性後退も、7月が視野(Hilsenrath: Jobs Shortfall Makes June Rate Rise Less Likely, but July Still on the Table)」と題した記事を配信。6月14〜15日開催のFOMCでは6月23日にBREXITを問う英国の国民投票が実施されるため、7月26〜27日開催のFOMCで追加利上げを行う可能性があると伝えた。
バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミストは、結果を受け「通信大手ベライゾンのストライキが足を引っ張り、NFPの業種別では情報で大きな落ち込みが見られた」と説明した。事前に米労働省が3.5万人の押し下げを予想していたことと、整合的である。しかしそれ以上に大幅に減速しており、「労働市場は景気後退シグナルを点灯しつつあるようだ」と指摘。1960年以降に経験したリセッションでは、NFPが景気回復サイクル平均値を下回り続ける場合が多く「今回で、平均値を下回ったのは過去4ヵ月のうち3回」に及んだという。従って「6月利上げの可能性は消えた」と予想。さらにFedは「少なくとも雇用統計の改善を2ヵ月連続で見届けたいはず」と見込んだ上で、今後の雇用統計の数字次第では「7月26〜27日開催のFOMCはおろか9月14〜15日開催まで追加利上げを見送る羽目になり、結局12月の1回のみとなりうる」と結んだ。
——文句なしに、弱い数字を叩き出した米5月雇用統計。筆者としましては、米10年債利回りが前日終値ベースで約1週間ぶりの1.8%割れを迎えた点が気になっていたのですよ。米2−10年債利回りスプレッドも5月17日に94bpまで縮小してから拡大の兆しを見せていなかったので、いくら日欧がマイナス金利を導入しているからとはいえ、不気味だと感じていた次第です。まさか、ここまで弱い数字が飛び出すとは・・。
個人的には、労働市場の減速は納得がいきます。以前からしつこくお伝えしたように、米1−3月期決算では次々とリストラが発表されました。業績リセッションに落ち込むなかで、採用が活発化するはずはありません。また米5月新車販売台数の勢いに翳りが見え、かつ米1−3月期家計調査でも自動車ローンの未払い率が上昇しているところをみると、米雇用統計での数字とは裏腹に賃金の伸びは限定的で家計は財布の紐を固めつつあるように見えます。米4月個人消費支出だって前月比でこそ伸び率が顕著でしたが、前年比ではそれほど目覚ましくありませんでした。何より、米4月小売売上高は前年比ですと見栄えが良いとは決して言えません。小売売上高のうちこれまで牽引役だった外食が減少に転じるなか、雇用統計ではNFPのうち食品サービスが圧迫され2015年平均を下回り続けているのも懸念材料です。
今回の結果を受けて、利上げ織り込み度は前日の21%から4%へ急低下しました。6月利上げ観測の後退で米株の下げ幅はNY時間の午前11時50分時点で45ドル程度にとどまっていますが、週明け6日に予定する米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の発言であらためて方向性を探ってくるのでしょう。
- My Big Apple NY
- ウォールストリート発のアメリカ情報サイト



