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アングル:「新興国懸念」に市場は懐疑的、大量資金流出を克服

[東京 3日 ロイター] - 6月に米利上げがあったとしても、それが新興国発の経済危機の引き金を引く可能性は小さいとの見方が、市場で台頭してきた。新興国経済は昨年来の大量資金流出を克服し、底堅く推移。先進国に比べ金利の高い債券の魅力もある。

伊勢志摩サミットで安倍晋三首相は、新興国リスクに対して強い危機意識を示したが、市場では、マネーの巻き戻しが起きても、その「震度」は大きくならないとの指摘が多い。

<1980年代以来の資金流出にも耐性>

国際通貨基金(IMF)が4月に発表した新興国への資金の流れに関する調査結果では、2015年に国内総生産(GDP)の約1%の流出超となった。2008年のリーマン・ショック時や2013年のバーナンキ・ショック時でも、年間ベースでは資金流入超だった。年間での流出超は1980年代以来、初めての現象。

「中国を初めとする新興国経済が不安定な中で、米国が利上げ局面に入った。ダブルのショックが資金流出を加速させた」と、2015年の状況についてある国際金融筋は指摘する。

ただ、新興国経済は大崩れしなかった。IMF集計による新興国の実質GDP成長率は、リーマン・ショック直後の2009年の3.0%を上回る4.0%を確保。株価も、iシェアーズMSCI新興国市場ETF(上場投資信託)<EEM>でみて、リーマン・ショック当時に比べ、下落幅は半分程度にとどまった。

IMFは、1980年台や1990年の新興国からのマネー流出と異なり、2010年から続くマネー流出のマクロ面への影響は「劇的なものではなかった」と指摘している。外貨準備を含む対外資産や、自国通貨建ての対外債務の増加など、国際金融への統合の進展や、為替相場の柔軟性向上などが背景にあると分析している。

今春には、マネーの流れも回復。国際金融協会(IIF)の調査では、新興国向け株式・債券の投資資金は、3月に流入超に転じた。「米利上げペースが鈍化するとの見方が広がり、資金流出が和らいだ」と、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査部主席研究員、廉了氏は指摘する。

同時期には日欧の中銀が金融緩和を進めており、緩和マネーが債券を中心に新興国に流入した面もあるという。先進国が軒並み超低金利からマイナス金利に落ち込む中、新興国の高金利は一段と魅力を増していることも、新興国へのマネー回復の背景だ。

<米利上げは緩やかとの見方>

早期の米利上げが視野に入ることで、あらためて新興国からの資金流出、経済の落ち込みが警戒される可能性があるが、ニッセイ基礎研究所・シニアエコノミスト、上野剛志氏は「年初ほどには下振れリスクは強まらない」とみる。

資源国経済に影響する原油は、米国などでの生産調整が進んだ一方、中国やインドなどで需要が拡大基調にあるとの国際エネルギー機関(IEA)の分析もある。中国経済は、インフラ投資の活発化や財政支出前倒しで、景気の下振れ懸念に和らぎもみられる。

新興国の経済ファンダメンタルズは国ごとのばらつきはあるものの、総じて改善方向にあるとして、SMBC日興証券・新興国担当シニアエコノミスト、平山広太氏は「景気復調を先取りしながら、株式市場は底堅さを増していくのではないか」と見ている。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマン・通貨ストラテジスト、村田雅志氏は、米国が利上げに動いたとしても、1回あたり25ベーシスポイントにとどまるとして「新興国の金利が相対的に高い状態が続く限り、過度にパニック的な新興国通貨売りは起きない」と指摘している。

JPモルガン・チェース銀行・為替調査部長、棚瀬順哉氏も、資金流出の動きは限定的とみる。3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で対外要因への配慮が示されたことで「新興国での大規模な資本流出や経済混乱が生じかねない状況下では、米国は利上げをしないということだ」という。

<くすぶる中国リスク>

もっとも、リスクが消えたわけではない。中国経済は下振れ懸念が和らいできているが、不動産市場ではバブル崩壊のリスクがくすぶる。6月の米利上げ観測の強まる中でドルが上昇し、事実上、ペッグされている人民元の上昇を防ごうと、同国政府は5年ぶりの低水準に基準価格を設定した。

BBHの村田氏は、米利上げに向けて「リスク回避のポジション調整で、短期的には、ある程度の資金が新興国から出ていくことは避けられない」と指摘する。

データ上でも、その兆しは現れつつある。IIFの調査で5月は、流入超がゼロ付近に縮小した。「米早期利上げの思惑によるドル高で資金流入が再び抑えられた可能性がある」(三菱UFJR&Cの廉氏)と見られている。

ドル高進行の中で人民元安が進んでいることも、昨年のリスク回避局面を連想させるとの声も根強い。バークレイズ銀行の為替ストラテジスト、門田真一郎氏は「中国の経済指標は強いとまではいえない。年初のような景気減速懸念が出ないかには注意が必要だ」と指摘している。

(平田紀之  編集:伊賀大記)

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