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東日本大震災の轍を踏むことなく熊本地震の復興策を

(リベラルタイム 2016年7月号掲載)
日本財団 理事長 尾形 武寿

一千年に一度と言われた二〇一一年の東日本大震災からわずか五年、今度は熊本地震が起きた。東日本大震災で今も二十万人が避難所生活を強いられている中での新たな大災害である。

地震に伴う地割れや山崩れは、人が住んでいなければ単なる地表の変化で終わる。相次ぐ大災害は、安易に大地を切り拓いてきた人類の営みに対する「神様の警告」かもしれない。  
熊本地震は四月十四日の震度七の激しい揺れで始まり、二日後のマグニチュード(M)七・三、震度七の「本震」で被害が一挙に拡大した。気象庁の説明で「前震」という言葉を初めて知ったが、長く続く余震の多さは尋常でない。

日本財団では地震発生から一週間後、総額九十三億円の緊急支援策を打ち出しており、その実施方法などの打ち合わせを兼ね、被災地を計三回訪れた。

熊本空港周辺の街並みを飛行機の窓から見下ろすと、屋根にブルーシートを被せた民家が延々と続き、半数以上がシートを被っている印象。大津波で家も車もすべてが押し流された東日本大震
災とは別の形の被災地の姿を見た気がした。

益城町や熊本市に入ると、完全に倒壊した民家や道路の亀裂が目立ち、天守の瓦ばかりか、しゃちほこも滑り落ち、重要文化財の櫓や塀、さらに「武者返し」と呼ばれる石垣も崩落した熊本城の痛々しい姿に目を見張った。

被災地の復興は何よりも「人命」が第一。阪神淡路大震災(一九九五年)以来、計四八回に上る被災地支援を教訓に、緊急支援策では死者・行方不明者の遺族・家族に対する弔慰金・見舞金、被災地で活動するNPOや災害ボランティアに対する支援金、倒壊した家屋に対する見舞金などを前面に、熊本城の復興・再建に向けた三十億円の支援も盛り込んだ。

支援策をまとめるに当たり、人命第一の原則からも、熊本城支援は第二、第三の支援策で打ち出すべきではないか、といった意見も出た。

しかし打ち合わせで、「城の再建なくして復興なし。タイミングよく支援をアナウンスいただき我々も県民も元気が出た」(蒲島郁夫熊本知事)、「西南戦争で焼けた本丸を一九六〇年、市民が自分たちの金を持ち寄って再建した。誰もが自分たちの生き様を重ね合わせて熊本城を見ている」(大西一史熊本市長)といったお話を聞くにつけ、第一次支援策に盛り込んでよかったと思っている。

その後の調査で、熊本城の被害は当初予想をはるかに上回ることが判明しており、どう修復・再建に取り組むか、震災復興の大きな柱の一つになるのは間違いない。

政府は東日本大震災の復興は着実に進んでいると言う。しかし甚大な被害を受けた宮城県石巻市出身の筆者には、遅々として進んでいないようにしか見えない。

岩手県から茨城県まで南北五百キロにも及び、生活習慣も文化も違う広大な被災地を一律に扱い、ほぼ同一の復興計画を進めた結果だと思う。

復興の基本の一つは、被災者の災害前の生活を極力、取り戻す点にある。熊本地震は東日本大震災に比べ被災地域は限定され、大津波も原子力発電所事故もないが、一方で多くの被災地が東日本大震災と同様、過疎に直面している。

3万戸を超える民家が全半壊しており、政府、自治体が東日本大震災の轍を踏むことなく、被災者に寄り添った復興支援策を早急にまとめるよう望みたい。その上で我々も民の立場から、可能な限り復興に協力したいと考えている。

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