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【核合意後のイラン】

2日にウィーンでOPEC総会が開かれました。長年仕切ってきたサウジアラビアのヌアイミ前石油相のいない初の総会で、個人的に注目していましたが、イランの反対もあって生産調整で合意にいたりませんでした。ま、予想通りですね(≧∇≦)

原油価格を決める重要な要素がサウジアラビアvsイランの対立の行方。なぜイラン側が経済制裁解除後もいきり立っているのかという国内事情がよく分かるのがThe EconomistのIranian politics after the nuclear deal, Who’s in charge?(核合意後のイラン政治、仕切っているのは誰か?)の特集。

サブタイトルは「最高指導者は改革派の大統領の行動を制限している」です。ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

車であふれ、みすぼらしい(down-at-heel)イランの首都テヘランで今、新たなキャンペーンが展開中だ。黒いターバンを身につけたイランの最高指導者ハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)の写真の横には、"resistance economy(抵抗する経済)"というスローガンが並ぶ。イランは、西側との最悪の対立のころの孤立主義と決別できないようである。

イランの核開発問題をめぐって去年7月、イランと欧米など関係6か国は合意に達した際、改革派による宗教保守派への発言力が強まると期待していた人たちは、再考を求められている。

ハメネイ師は、核開発の大幅な制限に同意すれば、欧米側の経済制裁が解除され、国際金融システムに復帰することで低迷した経済を刺激できると説得されたが、これまでのところ現実はほど遠い。反発が始まったのだ (The backlash has begun)。

実際、イランの原油の輸出は、1月の経済制裁の正式解除のあと、60%増えた。イランと西側の企業ミッションは相互に派遣されているが、イランは収益を取り戻し、暫定契約を本契約に結び付けるのに苦労している。

ケリー国務長官は、イランとの貿易は法律上問題ないと主張するが、米財務省の高官は、アメリカと"touch(接触)"するイラン貿易は、革命防衛隊(Revolutionary Guard)と関係する団体の関与があれば、アメリカ固有の経済制裁に抵触する恐れがあると言う。ドルを使った取引も対象である。イランの不明瞭さを考えると、一定の規模の企業はどれも対象かもしれない。

大手銀行は、2014年に起きたBNPパリバが受けた90億ドル(約9900億円)の巨額の罰金に恐れをなし、鉄板の約束がない限り(cast-iron assurances)、いっさいのかかわりを絶っている。

ベルギーに本部を置く、SWIFTと呼ばれる銀行間の国際的な資金決済ネットワークは、イランと再接続されたが、休眠状態にある。あるイランの政府高官は、「誰も使わない新設の高速道路のようなものだ」と表現する。イランを訪問する時には、大量のキャッシュを持参しないといけない。国際的なクレジットカードが使えないのだ。

イランに関心のあるファンド・マネージャーは、1年前、核合意の大筋が見えた段階で喜びに満ちていたが、今では取引のなさに失望している。テヘランを訪れるアメリカの投資家は、反発を恐れて名刺すら置いていかない。

イランは、不安定な地域の中では安定していて、教育水準が高く、道路網が整備されているにもかかわらず、西側の多くの企業は依然として、イランを有害(toxic)だとみなしている。アメリカ大統領選挙の前に変化を予想する向きはない。その先も変わらないかもしれない。

最高指導者のハメネイ師は、ハッサン・ロウハニ大統領(Hassan Rohani)が率いる政府に反発しているように見える。ロウハニ大統領は、核合意によって速やかに500億ドル(約5兆5000億円)相当の投資がもたらされ、外国で凍結された資産が速やかに解除されることで、8%の経済成長を達成できると主張した。

イラン中央銀行のヴァリオラ・セイフ(Valliohllah Seif)総裁は「核合意の直後に各国との銀行との関係が回復されると思った」と話す。

多くのビジネスマンはハメネイ師の嘲りに同意する。「国際金融社会の復帰をなぜ交渉しなかったのか?どの銀行が凍結された資産を送金するのか?いつまでにいくら?」と金融アナリストはあきれ返る。

ハメネイ師の側近は、ロウハニ大統領の無能さを批判し、アメリカの罠に陥ったのでないかと疑う。

ハメネイ師は、大統領を抑制しようとしている(the supreme leader is seeking to rein in the president)。先月予定されていたロウハニ大統領のベルギーやオーストリア訪問は急きょキャンセルされた。

イラン中銀のセイフ総裁は、今月初旬、ロンドンの会議で「是非、自分の目で確認しにきてください」と投資家を誘ったが、大統領府の招待で訪れても、ハメネイ師の周辺に会合がブロックされると言う。革命による孤立主義の終焉を望む市民の思いにとどめを刺すように、ハメネイ師は最近、英語教育を批判した。

ロウハニ大統領は、屈するつもりはない。国民を代表するのは自らであるという信任のもと、大統領の最近の発言は、まるで野党党首のようにも聞こえる。副大統領とともに、"resistance economy(抵抗する経済)"とは距離を置く。英語教育の美徳と国際経済と関わりを持つことの重要性を説く。

この結果、イランのニュースはちぐはぐである。最新の通商合意を祝う見出しの横に、最高指導者の西側の植民地主義に対する強烈な批判が並ぶ。

ロウハニ大統領側は、ハメネイ師が死亡するか表舞台から去らない限り、状況は何も変わらないと思っている(ハメネイ師は76歳で、前立腺がんを患っていると見られている)。それでも状況は改善しないかもしれない。

次の最高指導者を選ぶ専門家会議のトップにテヘランの保守強硬派のアフマド・ジャンナティ(Ayatollah Ahmad Jannati)を選出したと今週報道された。

イラン商工会議所の1人は「ロウハニ大統領は、経済改革を信奉するが、ピラミッドの下まで浸透しない」と言う。

大統領派は2月の議会選挙と4月の決戦投票で躍進したが、それでも国民議会の過半数を握っていない。80人から85人の独立系議員が決定権を持っていて、状況に応じてハメネイ師に賛同することもあればロウハニ大統領に賛同することもある。

それでも明るい兆しはある。ハメネイ師に近い昔ながらの議員のうち、4分の3が議席を失った。国民議会の議員のうち、初めて女性が聖職者の数を上回る

ハメネイ師は、ロウハニ大統領の前任の保守強硬派のアフマディネジェナド(Mahmoud Ahmadeinejad)から改革派のハタミ( Muhammad Khatami)まであらゆる権力闘争に勝ってきた(ハタミの名前は今なお、印刷が禁じられている)。しかし最高指導者は以前と比べて機嫌が悪いように見える。

ロウハニ大統領は、政界の実力者のアリ・アクバル・ハシュミ・ラフサンジャニ(Ayatollah Ali Akbar Hashemi Rafsanjani)の支持を得ている。

ロウハニ大統領の海外遊説を台無しにしようと行われた弾道ミサイルの実験のあと、ラフサンジャニ師は、イランはミサイル実験をしているひまがあったら対話をした方がよいとツイートした。いらっといたハメネイ師は「ミサイルではなく対話こそが未来だという輩は、無知か裏切り者だ」と反撃した。

状況があまりに悪化していることから、ロウハニ大統領が来年2期目を目指すことをハメネイ師が認めないのではないかという見方すら出ている。ハメネイ師が自ら選んだ監督者評議会の委員が立候補を阻む可能性がある。

ハメネイ師の悩みは、代わりとなる候補者がいないことだ。自分に近い候補者を擁立するため、アフマディネジャド元大統領との溝を埋めようとしている。かつての国民的な人気の復活に期待しているようだ。

イランの中流階級は、原油高による財政を浪費したことをアフマディネジャドのせいだと見ているが、それでも貧しいイラン国民は充実した社会福祉や寺院の修復を覚えている。

イラン革命防衛隊の外国支部司令官のガーセム・ソレイマーニー(Qassem Suleimani)も大統領候補として名前が挙がっている。彼は、イラクやシリアでスンニ派との戦いの先頭に立ち、改革派のみならず保守強硬派からも人気がある。

しかし、政治の道に入れば、革命防衛隊は信頼厚い司令官を失うことになる。

有権者が関心を失う可能性もある。前回の選挙では大挙して投票したイラン国民だが、ハメネイ師の最近の行動は、イランの将来を決めるにあたって選挙がいかに力を持たないかを示す結果となっている。国内からの変革もあまり望みが持てない。

テヘランのバザールの路地でしわくちゃの売り子が台車を引いてお茶を売っている。シャーの王朝といまの指導者を比較してくれた。国民のことなんて考えちゃいない。彼らは、高い地位につくために闘争しているに過ぎない。

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