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なぜ「手術数」だけで病院を選んではいけないのか - 天野篤

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心室細動を起こす人の9割は心臓に異常がある

先日、タレントの前田健さんが路上で倒れ、44歳の若さで急逝されました。前田さんには不整脈の持病があったと報じられています。恐らく、心室細動と呼ばれる不整脈を起こし意識を失ったのではないかと思われます。

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順天堂大学病院副院長・心臓血管外科教授 天野 篤

心室細動は、心臓のポンプ機能部分である心室が異常に早く不規則に脈打ち、けいれんを起こしたような状態になる病気です。ポンプ機能が破綻するためにそこがけいれんを起こすと脳や全身に血流が行かなくなり、数秒で意識を失い、一刻も早くAED(自動体外式除細動器)などで電気ショックを与えて心肺蘇生を行って、少なくとも数分以内には脳血流を再開しなければ死に至ります。前田さんの場合は、通りがかりの人がAEDを実施したと報じられましたが、残念なことに救命にはつながらなかったようです。

前回、私が心房細動になったという話を書きましたが、心室細動と心房細動は一文字違いではあるものの、別の不整脈です。心房細動は、肺から血液を一度受けてポンプである心室に送り出す心房が不規則に収縮する状態です。そのために血液のドロドロ状態や一時的な心拍出量低下が重なると血栓ができやすくなります。大きくなった血栓が脳や腎臓へ飛ぶと脳梗塞や腎不全を起こして一大事になりますが、心房に異常な電気信号が発生して動悸が激しくなったからといって、心室は独立して働いているので、全てすぐに命に関わるわけではありません。しかし、心室細動のように心室がけいれんしてポンプ機能が失われた状態になると、血流が途絶えてしまいすぐに命に関わる恐れがあるのです。

心室細動を起こす人の9割は、狭心症、心筋梗塞、弁膜症、心筋症など、心臓に何らかの異常のある人です。心室細動を起こした後、助かるかどうかは、周囲に人がいてAEDを使ったり救急車を呼んでくれたりするかなど、ある意味、運に左右される部分があります。残りの1割は遺伝的な要素や成長に伴って心臓の構造が変化することが関与していることが多いので、比較的若年者(多くは40代くらいまで)に発症します。中高年で突然死を予防するためには、動脈硬化を防ぐことが大切なことがお分かりになると思います。また、動悸・息切れ、失神したことがあるなど気になる症状がある人は、複数の心臓疾患が混在している可能性もあるので、かかりつけ医や循環器科を受診して、心電図、心臓超音波検査などを受けて、定期的な管理や必要な治療を受けましょう。

そして、もしも、心臓病でカテーテル治療や外科手術を受ける際には、一刻を争うような場合は別として、病院を選ぶことが重要です。その目安になるのが、カテーテル治療や外科手術の症例数です。心臓外科手術や冠動脈カテーテル治療に関しては、症例数をもとにした病院ランキングが、本や雑誌などでたびたび登場しています。病院ランキングは、病院や医師を選ぶ際の参考になります。

心臓外科手術数は病院の実力に比例する理由

特に、心臓外科手術については、外科医とそのチーム、病院の症例数は実力に比例します。がんに対しては、診断と治療を両方外科医が行うことも多いのですが、心臓治療に関しては基本的に、診断や治療方針の決定は循環器内科医が行います。循環器内科医は、外科手術が必要だと判断して心臓外科医に手術を依頼するわけですが、外科手術が終わって紹介した患者が亡くなってしまったり状態が悪くなって帰ってきたりすれば、その外科医には患者さんを紹介しなくなります。医師は誰しも患者さんに元気になってほしいので、同じ病院内でさえ、心臓外科医の腕が悪いと、その心臓血管外科には患者さんを紹介しなくなるくらいシビアな世界です。逆に、結果がよければ、循環器内科医は、他院の心臓外科医であってもどんどん患者を紹介するようになります。

最近は循環器内科医がカテーテルで狭心症・心筋梗塞の治療を行うだけでなく、弁膜症の治療まで行うようになったことから、治療実績や評判の高い施設、医師を以前にも増して意識しているようです。自分たちの手に負えないか、患者さんがそのような施設を希望されれば、ごく自然に任せられる施設への紹介を行っているように思います。つまり、治療実績が高く、症例数の多い心臓外科医は、実力のある循環器内科医からの評価が高いということを意味します。

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