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安倍首相の外交手腕奏功 ―日米の信頼回復と欧州諸国の中国観を正す― 屋山太郎

理事・政治評論家屋山太郎

  伊勢志摩サミット(G7)の一連の動きを見て、安倍晋三首相の外交手腕が見事に成功していると感じた。そもそも安倍氏が政権に就いた時点の日本は (1) 倒産一歩手前の債務超過 (2) 日米関係は最悪 (3) 欧州やASEANからも“売り”の状態だった。それを見事に跳ね返した手腕は歴代首相の中で出色だった。

 当初の安倍首相の課題は (1) オバマ大統領にいかに日本を認識させるか (2) 中・韓の“歴史認識”攻撃にどう対処するか (3) 外交空間の拡大― の3点だった。

 安倍氏が政権をとった後、訪米した時には会談わずか1時間半、晩餐会もなしという冷遇だった。これは民主党時代に日米関係を損ったうえ、安倍政権を“右寄り”とオバマ政権が判断したことによる。その判断の中には日本は中・韓相手に無用の喧嘩を売っているという“誤解”もあった。

 安倍首相は中国・韓国に対して「大戦の謝罪をしろとか、慰安婦問題を蒸し返すなら会談しなくて良い」と“土下座外交”の終わりを告げた。この仕返しに朴槿恵・韓国大統領の“告げ口外交”が始まるわけだが、安倍氏は委細構わず、欧州の主要国、ASEAN10ヵ国、中東を駆け巡った。年間50回を超す外遊は稀有の多さだ。

 13年2月22日に安倍首相は米戦略国際問題研究所(CSIS)で「日本は帰ってきました」(JAPAN IS BACK)と宣言したのは「日米同盟に息を吹き込むよ」というセリフだった。

 実際に国内では同盟を確立するために特定秘密保護法(13年12月成立)、国家安全保障戦略(13年12月閣議決定)、国家安全保障局の設置(14年1月)などを成立させた。これらはいずれも、どの内閣でもできなかったものだ。これらの実績を示すことによって、米国の“安倍を見る目”は様変わりした。

 日米関係の仕上げは安倍首相の15年4月29日の米議会上下両院合同会議におけるスピーチだろう。ここで安倍首相は日米関係を「希望の同盟」と名付けた。演説中何回もスタンディング・オベーションが起こり、万雷の拍手で終わった。

 安倍首相は日米の同盟関係を揺るぎないものとした後、伊勢志摩サミットに臨んだ。安倍氏は特に中国を議題とし南シナ海における行動の異様さを訴えた。

 欧州諸国は中国を普通の国として見ているから、中国に対する脅威感は殆どない。その中で安倍氏は「国際法の遵守」という観点から切り込んで、支持を得た。中国包囲網が築かれ、強くなりつつある。

 中国と対立したのは安倍氏の方から仕掛けたわけではない。中国はつとに「太平洋2分割」論を唱えていた。本当に2分割されれば日本は中国の覇権の中に取り込まれることになる。

 日本の外交はそれを恐れて中国にヘイコラしていた。日本が切り返さなければ、中国は国際政治、国際経済の面から、世界に混乱をもたらすだろう。安倍氏の「希望の同盟」は40年先、50年先を見据えたものだ。

 外交成功の秘訣は政権を長く保つことも必要だ。

(平成28年6月2日付静岡新聞『論壇』より転載)
屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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