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スズキ不適切燃費測定事件とダスキン事件はどこが違うのか?

スズキ社の不適切燃費測定問題と、平成14年に違法添加物の混入した豚まんを販売して11名の役員に5億7000万円の損害賠償責任が(株主代表訴訟で)認められたダスキン事件はどこが違うのだろうか・・・と、5月31日の記者会見を新聞で読みながら考えていました。どちらも海外では認められているものの日本では違法とされている商品やルールを活用していた点で同じですし、どちらも消費者に被害が全く出ていない(身体の安全や財産の安全が脅かされたわけではない)という点でも同じです。社内で違法性の認識を抱いていた社員が存在することも同じです。

スズキ社が5月31日にリリースした「排出ガス・燃費試験に係る不適切な事案に係る調査指示に対する国土交通省への報告内容について」も読みましたが、不適切な燃費測定の原因は明らかに内部統制システム構築義務違反です(法規認証部の機能不全によるルールの運用義務違反、内部監査部門の不存在)。内部統制システムの整備義務に問題があれば経営トップの経営判断原則が妥当しますが、運用義務違反となりますと、(経営者の裁量権の範囲が狭くなりますので)かなり問題が大きいのではないかと。ダスキン事件もリスク管理義務違反が善管注意義務違反の根拠となっておりましたので、こちらも(同じとは申しませんが)かなり似た構図です。

さて「提訴リスク」はどうなのでしょうか。組織ぐるみで不正を隠していたのがダスキンの経営陣ですが、スズキ社はそのようには見受けられません。あくまでも効率経営を徹底した企業が、その反動で社内のごく一部において不正に走ってしまったというストーリーです。つまり、スズキ社の場合は(いまのところ)社員による不正ということで「一次不祥事」ですが、ダスキンのケースは明らかに「二次不祥事」が問題になっています。株主ほかステークホルダーに「こんな組織は許せない」といった気持ちにさせて「敗訴覚悟で訴訟を起こそう」という動機付けがそれほど強くはないように思えます。ただ、「たとえ燃費測定法が不適切だったとしても、実際の燃費には影響ないのだから、いままでどおり広告、販売は続けます」といった姿勢はどうなのでしょうか?「これだけのことをやっておきながら、燃費に問題がないから販売を続けるっておかしいのでは?」と考える方も多いでしょうし、現に5月の売上は10%以上の落ち込みという結果が出ています。裁判の勝敗にかかわらず、会社や役員が裁判を起こされるリスク・・・つまり「提訴リスク」を抱える要因が存在するようにも思えますが、皆様はどうお考えでしょうか。

ところで上記5月31日のスズキ社のリリースには、再発防止策が7つほど示されていますが、再発防止にあたり、私は重要な不備があると思います。というのは、5月18日の会見で、同社の会長さんが(不祥事を受けて)「善意でやったとなると、人情的には考えなくてはいけない」と発言されたものを、同31日の会見では撤回して「法に従い、適切に対処いたします」と言い直されました。私も18日の会見は(ホンネとしてはわかりますが)かなりマズイなぁと感じました。このような会長さんのホンネを社員が知ったとなると、いくら「どんなことでも話し合える雰囲気作りが大切だ」と会社が示しても「ああ、やっぱり会社のために不正をしても結果さえ出せば許される体質なのか・・・、不正をみつけても、これを通報して馬鹿をみるのは私なのだな・・・」と認識してしまいます。

社員の方々にとって、まず大切なのが自分の生活、そして次に大事なのが自分の所属する部署の平穏、そして3番目に大切なのが会社の利益です(これはまず間違いないところだと確信しています)。違法性を認識していたスズキ社の社員の方が「それほど重大な問題だという意識はなかった」と証言されているそうですが、それはまさに自分に課されたミッションをこなすことのほうが会社の利益を守ることよりも重要だからです。この現実から目をそむけることはできないのであり、どんなに立派な内部統制を構築しても、かならず不祥事は起きます。ただ、どんな企業も一次不祥事は防げないけれども、(組織を破たんに招くような)二次不祥事だけは防ぐ・・・、そういった気概を経営者は持って、具体的な方策を検討することが必要だと考える次第です。

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