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日本は小中学校にお金をかけ過ぎか?

 武蔵野市教育委員会は、小中一貫教育を進めたいとの意向を示している。背景には教育的な効果だけではなく、財政問題もある。
 そこで、国の動きを見てみると、日本は小中学校、特に教員にお金をかけすぎと財務省が指摘していることが分かった。

 この指摘は、新聞報道もあったのでご存知の人も多いかと思うが、平成26年10月27日の財務省財政制度等審議会 財政制度分科会であったものだ。
 財政制度審議会は、予算編成など国の財政のあり方について検討することが役割で、『特に財政制度分科会が提出する「予算の編成等に関する建議(意見書)」は、予算編成に影響を与えるため注目されている』(HatenaKeyword)という。

 この日の資料を見ると、日本の小中学校向け公財政支出を在学者一人当たりで見るとOECD平均よりも高く、特にG5諸国の中では高水準であり、国民負担率が低水準であることをふまえれば、日本の小中学校には十分に手厚い予算措置が行われている。(画像参照)。

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 在学者一人当たりの教員給与は、対GDPで比較すると国際的に高い水準であり、児童生徒数が減少していくなかでも教職員の加配が続けられ、平成元年と比較して約1.4倍に増えている。

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 一方で、小一プロブレムの対応が必要とされ平成23年から小学校1年生を40人から35人学級へ引き下げたが、不登校は変わらず、いじめや暴力行為は少し増加している。このことから「小一35人学級」に明確な効果があったとは認められず、厳しい財政状況を考えれば、40人学級に戻すべきではないか。小一を40人学級に戻した場合、教職員数は、4,000人減少し約86億円の財政効果があると示されていた。

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 今の教育問題を考えると、教員数が少ないこと。教育への財源が振り向けられてないことが、そもそもの問題と考えていたが、この指摘はそうではないとしている。
 財政支出を少なくすることが仕事とも言える財務省主計局の審議会なので、そのまま鵜呑みするわけにはいかないが、気になる視点だ。

■教員の忙しさの理由

 同じ資料には、教員負担を軽減するために教員数を増やすべきか の論点があり、注目すべきデータが示されていた。

 よく知られているのは、日本の教員の年間勤務時間(小:1883時間、中:1883時間)は、小中学校ともに、OECD平均(小:1671時間、中:1667時間)を上回っているということだろう。教員が忙しいから、子どもに向き合う時間がなくなり教育に力を注げないという実態を反映しているデータだ。

 忙しさは認めているのだが、この資料には別の見方も示していた。それは、授業時間と授業以外の時間との割合だ。

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 資料によると、日本の教員の年間授業時間は小学校で731時間、中学校で602時間。
 OECD平均は小学学校で790時間、中学校で709時間であり、平均を下回り、OECD調査対象30ヶ国中23位と低水準となっている。
 そのため、教員を増員しても効率的な解決策にはならないと結論づけている。授業時間は別の問題とは思うが、興味深いデータだ。

 さらに興味深いのは、日本では授業以外の事務作業等(授業準備、職員会議、一般事務作業等)に多くの時間が充てられているデータも示されていたことだ。

 教員の負担感を軽減し、より児童生徒に向き合う時間を確保するためにも、事務作業等の時間を短縮するための取組み(業務の合理化・外部化、外部専門人材の活用、教職員一人一人の能力向上等)が必要としていた。これは理解できる指摘だ。

 しかし、さすが財政制度等審議会というべきか分からないが、結論としては教員を増員しても効率的な解決策にはならないとして、教職給与の引き下げ、定数の効率化が必要であり。35人学級から40人へ戻すべきではないかと提案されていた。

■学校統合も提案

 財政制度分科会は、教職員の人件費だけでなく、施設が多すぎることも指摘している。公立小中学校の学級数が標準規模(適正規模)に満たない学校が半数を占めており、小規模校を統合することで、教職員人件費をはじめとしたコスト縮減につながり、国としても、取組みを支援すべきではないか、と提案されていた。

 文科省は小中学校の適正規模は、小中学校ともに12学級以上18学級以下を標準としている。地域事情によりこの数字をそのまま当てはめることはできないとしても、これが指標となっている。

 武蔵野市の場合は、小中学校の適正規模を下記のようにしている。

 ・小学校:各学年おおむね30人以上
 ・中学校:各学年2学級以上かつ各学級おおむね30人以上

 この適正規模を下回らないように未然に防ぐため、小学校は6学年6学級、中学校は3学年6学級になった場合に、通学区域の見直しや統廃合を検討するとしている。(武蔵野市学校施設整備基本方針)。
 武蔵野市の現状で言えば、5中と6中が7学級、本宿小と関前南小が10学級となっており、このままでいくと対象になるかもしれない(平成26年度事務報告書より)。さらに、校舎の建替えも今後必要となる。建替えるのではあれば、統合、あるいは小中一貫教育校が検討されるのは、財政面からすれば当然の帰結だろう。

■今後の見通しとまずやるべきこと

 この審議会の後、「平成28年度予算の編成等に関する建議」がまとめられたが、そこには、審議会で提案されたことがほぼ同じに書かれていた。27年度予算にはすでに学校統廃合への予算を厚くしているが、さらに積極的に分析・発信となっており、進めていきたい意思が伺える。


リンク先を見る「平成28年度予算の編成等に関する建議」には、2060年度までの長期の財政の姿を展望したグラフがある。ここには、教育費と社会保障費の伸びが比較されていた。将来の財政危機、もしくは破綻が一目で分かる。
 


 政権は消費税増税を先送りする意向だが、財政問題を考えるとどうなのかとも思ってしまった。教育費を削減しても、とても間に合わないのが現実ではないかだろうか。

 話はそれてしまったが、教員が忙しいことは財務省も認識しているのであれば、教員を増やすことは財政的に難しいというのであれば、この負担減を最優先にすべきと思うが、具体策はここにはない。

 負担軽減は武蔵野市でも検討されているが、機械式のタイムカードを導入することを議会には報告されているが、それだけで解決できるのだろうか。財政面を考えることは必要だが、最優先されることは何か。まずは負担軽減ではないか。ここを重要視しないことに教育の大きな問題点がある。

■教育は政治選択

 費用削減の背景には、日本の財政の厳しさがあることは分かる。

 資料には、文部科学省・財務省は、平成18年6月に自民党歳出改革PTにおいて、義務教育費国庫負担金を約430億円縮減する旨の資料を提出。平成20年度から23年度までの間に約210億円の縮減を実施したが、平成24年度以降縮減の取組みが行われていない。依然として教員年収は一般行政職年収を約8万円上回っており、未実施となっている約220億円分の縮減について早急に実施すべきではないか」とまで書かれており、さらに、進めるべきだとの提案もある。

 35人学級は民主党政権で行われたもの。現在では争点にはなっていないが、今後の選挙結果によっては、40人学級に戻るのだろう。戻る、戻らないは、有権者しだいともいえる。
衆参W選挙はなくなったが、参議院選挙では問われるのだろうか。施設を含めた教育費削減を進めていくか、他の道を探るのか。教育内容はどうあるべきか。武蔵野市でも考えなくてはならない政治課題だが、その背景には国の考えもあることは忘れてはならない。

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