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原爆を運んだ軍艦と映画「ジョーズ」の因縁 - パスカル・ヤン (著述家)

 サッカーの国際試合で、ときどきオウンゴールによって大事な試合結果が左右されることがある。南米では、引責殺人まで起きたことがあるようだ。サッカー以外でも、よかれと思ったことが、自虐点になることが時々ある。オバマ大統領の広島訪問を契機に原爆問題がまた話題に上ることが多くなったが、この広島・長崎の原爆に関して、日本は重大な自虐点をとられてしまっているのだ。

 そして、それをカバーするかのような、奇跡的なことをなし遂げた逸話もあるのだ。それらは、映画ジョーズのモデルとなった実話が、縦糸となってつながっている。資料の少ない話なので、間違ったらゆるしてほしい。昭和十年代の話だ。北海道の女満別空港に行ったことがあるだろうか。飛行機がまだ少なかったころ建設されている。当然、滑走路建設のノウハウはできていなかった。この技術をため込んだのは、至近の網走刑務所の受刑者とさていている。

戦艦レパルスとプリンスオブウェールズの撃沈

 その後太平洋戦争に突入。その結果は知っての通りだ。軍事作戦でも、艦船の時代から航空機の時代に移行していた。きっかけは我が国が作ったとされる。すなわち、真珠湾攻撃の成功と、我が航空機による英国の戦艦レパルスとプリンスオブウェールズの撃沈だ。

 そのときまで、戦艦は戦艦との戦いで勝敗を決するという常識があったが、覆ってしまった。その事実を一番学ばなかったのが、当事者の日本かもしれない。とはいえ、それを受けて、太平洋の中心に極東最大級の飛行場を建設したのがテニアン島。サイパン島から8キロの至近と、両島は事実上ペアとなっている。そんな島、知らないと言わないでほしい。

 広島・長崎の原爆はテニアン島から飛びたったB29によるものだ。さて、この飛行場は誰が作ったのであろうか。もちろん日本だ。建設したのは、横浜刑務所の受刑者とされているが、建設ノウハウをため込んだ女満別の飛行場を建設した網走組も多数いたと考えるのが自然であろう。

 何らかの理由で受刑者となり、大戦争で母国に貢献できなかった代わりとして、意識の高い建設が行われたとされている。

 しかし、テニアン飛行場が完成して、サイパンから帰国する際に、輸送船は米国の潜水艦攻撃に遭い、全員が遭難したとのこと。彼らは、自らが作った東洋一の飛行場から広島、長崎へのB29が飛び立つことになるのは知らなかった。知らなくてよかったのかもしれない。時節柄、あまり弔われることもなく、資料も少ないのかもしれない。ただし、飛行場が完成し、本土防衛の要だということで、その高揚感はかなりのものであったであろう。

ジョーズのモデルになった撃沈

 テニアン島に原爆を運んだ、米国重巡洋艦インデアナポリス号にもドラマがある。特殊任務で、米国本土から原爆をテニアン島に無事運び込み、任務を終了したことで安心していたのか、敗戦間際の日本海軍の潜水艦が数キロに近づいているのを知らなかった。インデアナポリス号は、3本の魚雷を被弾してわずか15分で沈没、千数百の乗員は5日の間漂流したそうだ。ここは、サメの海で、阿鼻叫喚の地獄絵となったのが、後に映画ジョーズのモデルとなり大ヒットすることになる。

 捜索騒ぎは終戦間際の日本にも聞こえていて、この重巡洋艦の遭難をうけてか、米軍の無線通信が活発におこなわれ我が国の通信部隊も傍受している。ただ事ではないと議論されていたようだが、まさか、自国の潜水艦が、一番の肝である原爆輸送の任務をうけた艦船を撃沈させたとは知らなかった。帰り船ではなく、原爆を輸送中であったら、広島長崎はなかったのだ。その場合、終戦もなかったのだろうか。とても気になる。

 原爆運搬の密使であるため、米軍のトップシークレットとされ、場所の特定ができず救助が遅れ、長く海上で浮いていたため、犠牲者も拡大したのだった。対潜水艦対策を怠り、犠牲者も多かったため、艦長は軍法会議にかけられている。終戦後、戦果を上げた日本側の潜水艦伊57号の艦長も米国に召喚されている。もちろん、戦時であり無罪であった。

 武士に情けか、対潜水艦対策で、ジグザグ運行をしていても、簡単に撃沈できたと証言したようで、そのおかげかインデアナポリス号艦長は無罪となった。しかし、後年、遺族の抗議に耐えきれなかったのか、サメの海で死んだ仲間を思ってか自死している。

神主として天寿を全う

 この伊57号は、有名な人間魚雷回天を積んでいたが歴戦の艦長は、状況から敢えて5本の通常魚雷を発射、3本を命中させている。しかし、艦長はこれが原爆を運んだ艦船だったとは知らなかった。

 知らずに仇討ちをしたことになる。知っていたら、数日前に、同じ海域を通ったときに仕留めているとの発言もあるようだ。これは自虐点ではないが、原爆の悲惨さを知って後の考えたことであろう。海軍兵学校卒のエリートの艦長はその後、弔いのために神職資格をとり、神主として天寿を全うしたという。

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