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【核なき世界の夢と核の悪夢】

オバマ大統領は被爆地広島で「アメリカのように核兵器を保有する国は、恐怖の論理から逃れ、核なき世界を追求する勇気を持たないといけない。私が生きている間にこの目標実現できないかもしれないが、たゆまぬ努力が悲劇が起きる可能性を小さくする」と述べましたね。

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The Economistの最新号に掲載されたNorth Korea’s nuclear program, A nuclear nightmare(北朝鮮の核開発、核の悪夢)を読みながら、オバマ大統領が語った核なき世界という夢を思い出しました。

記事のサブタイトルは「国際社会は、北朝鮮の核に対する野心にもっと真剣に向き合わないといけない」。

途中に出てくる小見出しのFat boy(太った少年)は、Fat man(長崎に投下された原爆のニックネーム)とLittle boy(広島に投下された原爆)を、金正恩の容姿を念頭に置いて組み合わせたもので、巧み。

内容は、ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

バラク・オバマは、核なき世界を情熱的に訴えて大統領の職を始めた。大統領として最後の年となることし、現職大統領として初めて被爆地広島を訪問

オバマ大統領は、核軍縮と核の不拡散を進めた。2010年にはロシアとの新たな核軍縮条約=新STARTに署名した。一連の核セキュリティーサミットを開催した結果、核兵器や核物質がテロリストの手に渡ることを回避するのに一役買った。

何よりも、去年7月、イランの核開発を大幅に制限することでイランと合意に達した。

しかし、明らかに失敗した分野がある。北朝鮮である。オバマ大統領の任期中に北朝鮮の核開発とミサイル開発は、着実にいっそう危険な状態となった(On Mr. Obama’s watch the nuclear-weapons and missile program of North Korea has become steadily more alarming)。

北朝鮮の核ミサイルは、韓国と日本をすでに脅かしている。今から8年以内にニューヨークに対する攻撃も視野に入る。

オバマ大統領は北朝鮮問題の優先順位を二の次とした(Mr. Obama put North Korea on the back burner)。次期大統領には、そんな余裕は与えられない。

■The other Manhattan project(北朝鮮によるマンハッタン計画=米国の原爆製造計画)

核兵器の使用がタブーな場面が3つある。拡散を防ぐための政策、最初に核攻撃をしないという規範(特に核を保有していない国に対して)、そして抑止。北朝鮮はすべてをめった刺しにした。

歴史上、国富をここまで核開発に費やした国はない。北朝鮮は約20の核兵器を保有していると見られる。約6週間ごとに新たな核兵器を開発。ことしの弾道ミサイルの実験はかつてないペースで行われている。

1月に行った地下核実験を北朝鮮は水爆だと主張する(実際には、高性能な原爆と見られる)。その後、4月には射程4000キロの中距離弾道ミサイルの実験に3回失敗した。とは言え、北朝鮮の技術者は失敗から学ぶ。最終的には成功する可能性が高い。

北朝鮮は国際的なルールにいっさい縛られない。世襲独裁者のキム・ジョンウン(金正恩)委員長は、強制収容所で裁判や希望のないまま、大勢の国民を強制労働させている。キム氏は、頻繁にソウルを「火の海」にすると主張する。核兵器は北朝鮮のアイデンティティと国家存続に欠かせないのである。

核抑止は、国家が合理的に行動するということが前提にある。しかし、キム氏はあまりに不透明で、どういう決定プロセスなのか分からないため、北朝鮮に核を抑止させるのは困難である。政権が崩壊する直前に核攻撃を仕掛けることだって否定できないだろう。

キム氏の予測不能性、冷酷残忍性、そして脆弱性の組み合わせが各国の政策決定者をいらいらさせる。大人のようにふるまってほしいと国際社会は思っている。

ことし3月、国連は北朝鮮に対する制裁を強化した。中国は北朝鮮による愚弄や挑発に激高した(核実験が行われるまで知らなかったくらいだ)。中国は、金融取引の制限や密輸取り締まりのための船舶の捜索といった措置にも合意した。

しかし、中国はキム氏の転覆を望んでいるわけではない。国境を接する北朝鮮の崩壊は、中国への大量の難民流入を意味し、中国を在韓米軍から守る緩衝地帯を失うことにもなる。

北朝鮮の貿易の90%が対中国である。中国は今後も、北朝鮮産の石炭と鉄鉱石を輸入するだろう(代わりに燃料油や食料品、生活用品を輸出)。条件は、その代金が軍事に使われないことだが、そんな強制力はない。

中国に守られる限り、キム氏は処罰を受けることなく核開発を続けることができる。経済制裁が抑止になるとは考えにくい。むしろ、中国がさらに厳しい経済制裁を導入する前に核兵器のアップグレードに拍車がかかるかもしれない。

このため、オバマ大統領は北朝鮮ではなくイランに注力したのは理解できる。イランの宗教指導者は、原油と天然ガスの輸出に依存しているがゆえに、イランのエネルギー輸出に対する制裁や国際金融システムからの切り離しが、効果を発揮したのだ。このロジックは北朝鮮には通用しない。

キム氏を止められるものは、ないのか?中国式の経済改革や韓国との和解によって、"nukes first(核第一)"主義を棚上げするかもしれない。グッドアイディアだし、キム氏も経済改革にいくらか関心を示していた。しかし、核兵器の廃止と引き換えに国民により良い生活を与えることはないだろう。

キム氏の指導体制に対する北朝鮮のエリートの不満がクーデターを引き起こすかもしれない。後継者は、国内外の自らの地位を向上するためにイラン式の合意の用意を示すかもしれない。可能性はある。しかし、キム氏はこれまでのところ、自らの独裁を脅かすあらゆる勢力を踏みにじってきた

最後の望みは、より強固な制裁が体制の崩壊、ひいては韓国との統一、さらには朝鮮半島の非核化につながることだ。それがベストな結末だろうが、同時にもっとも危険な案でもある。何よりも中国がまさにもっとも避けたい状況だ。

■Fat boy(ファット・ボーイ)

であれば、次期アメリカ大統領は何をするべきか?優先すべきは、ミサイル防衛の強化である。アメリカ陸軍が開発した新型の弾道弾迎撃ミサイルのTHAAD(Terminal High Altitude Area Defense missile=終末高高度防衛ミサイル)システムを韓国や日本に配備するべきだろう。

同時にアメリカは、中国の核兵器に対してこのレーダーが使えることから中国への説明が必要だろう。中国がより厳しい制裁を受け入れるよう巧みに誘導することもできるだろう。

これが当初は、核実験の凍結にしか結び付かなかったとしても、ないよりはましだ。キム体制の予期せぬ崩壊はいつでも起きうるので、アメリカは北朝鮮が核兵器を使う前に押収するか破壊するか練り上げられた計画が必要だ (Because a sudden, unforeseen collapse of Mr. Kim’s regime is possible at any time, America needs worked-out plans to seize or destroy North Korea’s nuclear missiles before they can be used)。

これには中国の協力、せめて黙諾が不可欠である。あまりに明確で危機的な事態なので、アジアのほかの地域では衝突するアメリカと中国も、北朝鮮問題では新たな協力方法を早急に見つけなければならない。

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