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サイレントお祈りに打ち克つには - 増沢隆太(人事コンサルタント)

いよいよ6月を迎え、就活の学生にとって内定(内々定)が堂々と出始める時期になります。一方、当然のことながらすべての就活生が希望通りの企業から採用される訳ではありませんから、不採用となった場合はいわゆるお祈りレターやお祈りメールで知らされることになります。ダメ出しの通知をもらうのは誰でも嫌なもの。しかしそれ以上に就活学生が忌避するのが、その通知すら来ない「サイレントお祈り」だといわれます。

■ベッキー謝罪のミス

私はコミュニケーションの専門家として企業の危機管理などにも関与していますが、その流れで謝罪会見などが多発している今年は、多数のテレビ番組から取材を受けています。「謝罪のプロ」という肩書で出演もしました。

謝罪といえば多くの場合、その言い回しや態度、パフォーマンスなどのテクニックに関心を持たれるのですが、私の視点はそこではありません。コミュニケーションです。コミュニケーションの原則である目的達成こそ、謝罪においてもっとも大切なものなのです。

では謝罪の目的とはなんでしょう?それは事態収拾です。炎上している謝罪相手の激しい感情を鎮め、これ以上の損害や損失が広がらないように収めることこそ謝罪の最大の目的なのです。しかしベッキー事件やその他の謝罪会見の結果、ますます反発を呼んで反感の炎が延焼することが多発しています。これは謝罪というコミュニケーションの目的を間違っているからです。

特に注目されたベッキーさんの記者会見は、一方的にメッセージを伝えるだけだったため、大きな反発を呼んでしまいました。最近やっと直接テレビに出ましたが、とにかく謝罪をしたいという「自分の感情」や都合が先立ち、事態収拾という視点が抜けているのです。

■サイレントお祈り時に企業で起こっていること

採用見送りの知らせ、お祈りレターが嫌なものは当然ですが、サイレントお祈りでは、その名の通りそもそも知らせが来ません。結果として就活学生は自分が落ちたかどうなかわからず、ヤキモキしたままで据え置かれることになります。

エントリーシートや面接対策で少なからぬ時間とエネルギーを割いたにもかかわらず、このように何の知らせも送らずウヤムヤにするという企業側の態度は大きな反発を呼んでいます。この反発はもっともで、「近ごろの若いモノはなっとらん」とゆとり批判をしている企業自体がなっとらん訳です。

企業側の事情としては手が回らないというよりも、一定の規模のある企業、人気企業であれば、多くの場合それよりも採用計画による人数調整が一番大きな理由なのではないでしょうか。つまり「今年度〇〇人採用」という計画に沿って選考を進めていても、内定(内々定)辞退が起これば補充しなければなりません。

補欠候補もあらかじめ内定で囲うこともできますが、一度内定(内々定)を出してしまえば、それを企業側から一方的に破棄することはできません。そこで最後の一人や数人をめぐって、入社確定のぎりぎりまで攻防が続くのです。これがサイレントで据え置かれている時の企業の内情です。

当然のことながら、本当に欲しい、絶対に他社に取られたくない人材であれば即、内定を出しています。しかしそんな学生はめったにいるものではなく、ほとんどの場合一長一短で、最後の決定をしかねているのが実情なのです。

■正解がないビジネスの世界

全国の大学や就活イベントで講演をする際、学生であっても就職活動を機に、ビジネスセンスを身に着けるべきであると訴えています。大学など学生生活では必ず正解が用意されており、大学を卒業するには時間も単位も明確にそのゴール設定が決められています。

しかしビジネスの世界となるとそうはいきません。「これさえできれば採用」などあり得ないのです。偏差値ヒエラルキー頂点の大学であっても、一社からも内定が取れない学生は必ず毎年いますし、Fランと呼ばれる低偏差値の大学でも、人気企業に採用される学生は出ています。

特に高偏差値大学の学生は受験の成功体験に惑わされ、就活でも自己アピールで珍しい経験や特別な賞を取ったから採用されたといった幻想に惑わされます。就活はビジネスの世界のルールで行われるものであって、学生の世界のような唯一絶対の正解がないのです。いくらウケの良いエピソードトークを語ったところで、そのトーク内容で採用する企業はありません。ネタよりもビジネスセンスを感じさせるコミュニケーションができることが重要です。

■自分の心との戦い

ベッキー事件では、不倫した男性の奥様に直接お詫びをする前から、テレビ番組収録していたことが後で発覚しました。プロダクション社長の「まだ早いのでは」という意見も顧みず、番組で経緯を語ったことに、一定の評価はありつつも、いまだに正式な番組復帰も決まっておらず、私が謝罪の目的と定義した事態収拾が完了しているようには見えません。

いろいろな事情や理由があるのでしょうが、「謝罪したい」という自分の都合が優先されてしまった結果、本来の目的が達成できていないのです。サイレントお祈り自体、きわめて不誠実な行為ですし、企業のコーポレートブランドへの毀損になっていると思います。私が関係した企業では必ず結果は通知をすることを強く勧めています。

しかしその是非をいうより、学生自らが自分を守る術として、ビジネスセンスの訓練だと考えてはどうでしょう。ESや面接結果が来ようが来まいが粛々と活動を続けるのです。気になる気持ちはわかりますが、いったんその感情は脇に置き、ビジネスの世界の価値観を優先します。ビジネスでは契約だけが真実。ハンコやサインを交わした契約以外、どれだけ口頭で「君は採用間違いなし」とか「もう他社訪問は終わりにして」といわれようが、内定通知を書面でもらうまでは何一つ確定はしていないのです。

最悪なのは通知が来るまで次のアクションを起こさないことです。残念ながらビジネスの世界は誠実なだけで成果が出るとは限りません。タフになりましょう。就活はビジネスの世界で活躍できる訓練でもあるのです。理不尽さに耐え、その環境を克服できるようなセンス、行動力は確実に企業側に伝わるでしょう。ぜひサイレントごときに行動を縛られるようなことはやめましょう。今、目の前にある目標。内定獲得をするまで、止まっている余裕はありません。

【参考記事】
■「英語を勉強する」ために必要なモノ・・・・・戦略思考
http://shachosan.rm-london.com/?eid=826871
■ゲゲゲの水木しげるから学んだキャリア観「時機を待て」
http://shachosan.rm-london.com/?eid=850264
■内定辞退の作法。(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/44225940-20150411.html
■謝罪とは違う自己批判という名の処罰(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/47617269-20160125.html
■本当に必要?就活用マナー講座 (増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/48109814-20160317.html

増沢隆太 人事コンサルタント 株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役

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