[ブリュッセル 27日 ロイター] - 欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合は25日、未明に及ぶ長時間協議の末にギリシャの債務軽減で合意したが、ユーロ圏にギリシャ債務減免を強硬に求めていた国際通貨基金(IMF)が折れ、支援枠組みへの参加に前向きな姿勢に転じる上で決定的な役割を果たしたのは、協議の場にいないラガルド専務理事だった。
IMFはギリシャの債務は持続不可能だと主張し、ユーロ圏がギリシャ債務を再編しない限り第3弾となる今回の支援枠組みに加わらない方針を示していた。一方、ドイツのショイブレ財務相など一部のユーロ圏当局者は、モラルハザードを引き起こしかねないとして債務減免を拒否していた。
ユーロ圏の複数の当局者によると、協議ではIMF内部でトムセン欧州局長と他の当局者がいつになく緊迫したムードに包まれ、意思の疎通が難しくなっていることに驚かされたという。特に合意を最終的に受け入れる前に、トムセン局長がラガルド専務理事に連絡を取るのに数時間も待たされたのが目を引いた。
また別のユーロ圏当局者によると、協議場の外の廊下で専務理事と10分間の詰めの電話協議を行ったトムセン局長は「苛立っているようにみえた」。局長は合意の受け入れに反対したが、意見が通らなかったようだったという。
IMF当局者は、対応が遅れたのはカザフスタンを訪問中のラガルド専務理事と連絡を取るのに手間取ったのが主な理由だと説明。協議の前に事前の調整を行っており、「専務理事は欧州局長の立場を全面的に支持している」として、ラガルド氏とトムセン氏の間で意見対立があったとの見方を否定した。
ユーロ圏は、ギリシャはユーロ圏に加盟しており破綻を回避することはできるとして、IMFに債務減免について甘い扱いを求めている。またIMFの対ギリシャ融資の返済についても、それほど懸念する必要はないと主張している。
こうした点に関して一部のIMF当局者は合意成立後に記者団に対して、ギリシャへの追加融資の実行には必要な条件を満たす必要があると指摘した。
しかし複数のユーロ圏当局者は、末端の職員がどう考えようと、ラガルド専務理事が深夜の電話会談でトップレベルの言質を与えており、IMFの支援枠組みへの参加は確実だとみている。
ある欧州筋は「真の実力者はラガルド氏だ」と話した。
複数のEU当局者は、今回の合意はラガルド氏が日本で20―21日に開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長やショイブレ財務相と会談した際に事実上決まっていたとみている。
別のユーロ圏当局者は「IMFは支援枠組みに参加すると考えている。参加前には秋に可能な手立てについて集中的に話し合う必要がある。しかし大丈夫なはずだ」と話した。
(Jan Strupczewski記者)