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世界を破綻させた経済学者たち



 ジェフ・マドリック著「世界を破綻させた経済学者たち」。
 NYTの経済評論家が経済学を斬ります。
 2008年金融危機と続く大不況の戦犯は「正統派」経済学者たちだと。
 ケインジアンの立場からMフリードマンの自由放任主義をボロカスに叩きます。
 スゴい。

 Aスミス、マーシャル、ワルラス、パレート、リカード、ミル、フリードマン、サミュエルソン、アロー、ルーカスなどの偉人や、ぼくが教科書として学んだフィッシャーやドーンブッシュらが頭ごなしに否定されているのは、禁じられた強い酒を飲んでいる気分であります。

 ニクソン、レーガン、クリントン、ブッシュ、オバマら各政権と、FRBのボルカー、グリーンスパン、バーナンキが、経済学説(特にフリードマン)のせいでどう間違ったかを丁寧に説きます。

 日本も歴代首相・日銀総裁と学説との検証をしてほしく存じます。


 サッチャーの民営化、レーガンの規制緩和も長期的には失敗と断じます。
 ケインジアンには、そこも失敗かぁ。

 だけど、逆に実証的に肯定できるケースとは? 
 ニューディールや1950~60sの軍事ケインズ主義?
 1930sのドイツ?
 だとして、それはそれでいいんでしょうか?


 グローバリゼーションも批判します。
 豊かな国々が発展した環境は、関税廃止、政府不介入、変動相場制とは反対に、高い関税、政府の産業投資、通貨価値の固定だったとする。
 TPP熱の高い今これをどう解すべきでしょうか。

 その上で、シンプルで美しい理論の対極にある、ケースバイケースの汚い経済学が良い、特定の時期の特定の国に適した政策が賢明、と説きます。
 青木昌彦先生のコメントをお聞きしたいものです。


 刺激的なのは、科学としての経済学に対する批判です。
 経済学の実証は真の科学に要求される水準に達していない。
 現実の世界で予測と正反対の結果が生じても逃げ道が用意されている。
 物理学の理論は実験と分析の結果を受けて変更されたりするが、経済学はそうなっていない。
 つまり、科学ではない。経済学者は失敗しても名声に傷がつかない、と説きます。

 解説の松原隆一郎さんも、見えざる手、セイ法則、インフレターゲット等の理論は科学ではないといいます。実験や検証で理論が点検されることはなく「知的無責任」だと。
 経済学者の思想潮流はイデオロギーの「コンセンサス」で、ケインズのいう「美人投票」だと。
 これまた痛烈であります。

 しかし、だとすると、政策立案者は勘や信心で仕事しているんであって、経済学という科学を導入するのではなくて、自らに都合のいいチョウチンを探してきてかざしているということですかね?


 本書に対しては、新古典派からもマネタリストからも合理的期待形成学派からもマル経からも、批判があるでしょう。
 それはそれで読めば説得力がありそう。
 だけど、履歴に経済学部卒などと残る者としては、その不安定さ、なんとかならんかね、と思います。出身地が安定していてくれんと、気持ちがざわつくもんですから。

 でも、こうしてたまに経済の本を手に取るのも乙なもんです。
 ここんとこ安保法制を巡る憲法論で、法学者ってこんなに割れててええんかと思っていたんですが、経済学も似たようなものなのか、と気づいたりしてですね。

 経済学者のみなさまのご健勝を心から祈念致します。

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