記事

ウェブメディアがアジェンダセッティングするということ

 こんな記事を書いたこともあって、日本で一番『BuzzFeed』に厳しいと一部で呼ばれたこともあるParsleyです。ごきげんよう。

 日本版『BuzzFeed』は失敗すると思う理由

 個人的には、以前に書いた見立てを変えるつもりはない。とはいえ、1月の発足から半年近くが経とうとして、スタッフが増え、「おっ」と感じるコンテンツが見られるようになってきたことは認めなければいけない。元毎日新聞の石戸諭氏の、バラク・オバマ米大統領の広島訪問を受けて出された記事には、正直唸らされた。

 なぜ慰霊碑の向こうに原爆ドームが見えるのか? 世界的巨匠が託した思い

 原爆死没者慰霊碑から原爆ドームが見えること。オバマ大統領がその光景を目にするであろうこと。そして、広島市平和記念公園を設計した丹下健三の想いが何処にあるのかを詳らかにしたこの記事は、日本人が「ヒロシマ」「1945年8月6日8時15分」をどのように捉えてきたのか、さらにはこれからどのように伝えていく必要があるのか、読者に振り返り問いかける意味が込められているように思う。メディアの役割がアジェンダセッティングも含まれているとすれば、この記事はそれを充分に果たしている。

 ところで、この記事には実際に広島に訪れて取材された形跡はない。それを批判するのは簡単だ。
 しかし、複数の情報を整理して提示することが、単に見聞きすることを凌駕することもある。石戸氏は「オバマ大統領の見えるもの」というところから出発し、丹下の足跡を縦軸に据え、原爆ドームが解体されていたかもしれないという事実を交えて今見える広島の日常がなかったかもしれないというIFを読者に想起させる。そして、建築というものに込められた「平和」の願いを共有する。
 これだけのことを一つの記事にまとめ、そしてそれを読者に「読ませる」のがどれだけ大変か、私もウェブメディアでお仕事をさせて貰っている端くれとして感じずにはいられない。この記事は約3800字と8枚の画像で成り立っているが、読了率が下がらないギリギリの線。分量としてもギリギリの勝負をしている。

 現状、多くのウェブメディアは、テレビや雑誌、あるいは有名人のブログやTwitterのネットでの反応を追うことが多い。それはもちろんPVが取れるから。そういったリアクションは、それはそれで「報じる」に足るものだと個人的には考えているけれど、共感あるいは反発を増幅することは出来ても、そこから読者にとっての新たな知見を提示する役割を果たしているか、と問われると返答に窮してしまう。

 そういった意味からも。石戸氏と『BuzzFeed Japan』が「オバマ大統領広島来訪」を一人の建築家を軸にして日本人が考える平和とは何かを問うてみせたことは素直に素晴らしいと思う。
 これからはウェブメディアがアジェンダ・セッティングをガンガンやっていかなければいけない。だから、「ま、負けないから!」という気持ちを新たにしたのだった。



リンク先を見る丹下健三 伝統と創造 –瀬戸内から世界へ
posted with amazlet at 16.05.28
美術出版社
売り上げランキング: 497,846
Amazon.co.jpで詳細を見る


リンク先を見るTANGE BY TANGE 1949-1959/丹下健三が見た丹下健三
posted with amazlet at 16.05.28
豊川 斎赫
TOTO出版
売り上げランキング: 763,258
Amazon.co.jpで詳細を見る

あわせて読みたい

「ウェブメディア」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    エロい胸元 選挙ポスターが物議

    田野幸伸

  2. 2

    富岳 南海トラフ地震も予測可能

    SmartFLASH

  3. 3

    感染拡大要警戒 不安煽ると指摘

    内藤忍

  4. 4

    日本は中国批判を止め自衛せよ

    日本財団

  5. 5

    上沼番組の梶原卒業はパワハラか

    NEWSポストセブン

  6. 6

    紗倉まな コロナで親子関係改善

    村上 隆則

  7. 7

    北海道のコロナ対応に疑問相次ぐ

    畠山和也

  8. 8

    ほぼ意味を為さない東京アラート

    自由人

  9. 9

    東京の感染者100人超に慌てるな

    ABEMA TIMES

  10. 10

    籠池発言報じぬメディアの不都合

    名月論

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。