- 2016年05月26日 10:00
【寄稿】急襲されたパーティー 中国在留外国人の検挙劇
2月のある寒い日の早朝、中国の警察当局は深圳であるパーティーの強制捜査を行った。このニュースは幅広く報じられ、英国の全国紙にすら掲載された。その晩、何百人もの外国人が拘束された。筆者もその1人だった。
筆者は長年、アジアで「リアル・ディール」というグループが主催する各種のパーティーに参加していた。チラシによると、今回のパーティーは4周年記念で、香港のDJ、フランキー・ラム氏が出演するものだった。筆者の友人の多く(中国人も、在留外国人も)は、こういったイベントを楽しんでいた。それは「レイブ(rave)」と呼ばれ、エレクトロニックミュージックが流れるイベントで、通常のナイトクラブの舞台とは異なる雰囲気を持つからだ。だが、筆者のガールフレンドも筆者も、このパーティーの結末がどうなるか全く予想していなかった。
イベントは、高速道路の高架下のトンネルで行われた。深セン市南山区のイケア(家具販売店)などが入るショッピングモールの近くを走る高速道路下の歩行者用トンネルだ。「イケアトンネル」と呼ばれるこの場所でパーティーが行われたのは初めてではなかった。DJの上がるステージは、トンネル内に設置された。
その脇では飲み物が売られていたほか、周囲では地元の業者が屋台を出して軽食を売っていた。参加していたのは数百人で、約半分が中国人、半分が外国人だった。一部にはダンスをしている人もいたが、大半は周囲を歩き回ってビールを飲んだり、知らない人と初めて出会ったりしていた。
予定より長くそこにいたガールフレンドと筆者は午前3時40分頃、角に座って米国人の友人と話をしていた。すると突然、自分たちに懐中電灯の光が当てられた。音楽も突然止まった。状況を把握するのに少し時間がかかったが、筆者は警察官たちが歩道上を進んで来ていることに気付いた。
中国では、大規模な人の集まりに通常、なんらかの許可が必要だ。深センはテクノロジー業界のハブとして知られている。エンジニア、デザイナーや起業家が集まっていて、欧米から来ている人も少なくない。リアル・ディールのレイブにはあらゆる職種の人々が集まっていたが、大半の人々はイベントが合法的なものだと思っていた。大々的に宣伝されていたからだ。それが無許可のイベントだということなど知る由もなかった。
同時に、強制捜査でパーティーが中止になるというのもこれまでに聞いたことがなかった。中国の規則は必ずしもいつも明快ではない。例えば、バイクタクシーは市内のあちらこちらで見かけるが、どうやら彼らは禁止されているようだ。少なくとも法律上はそうだ。警察はたまに市内の一部で取り締まりを行う。しかし、1週間もたつと復活しているのに気付く。通常通りだ。
パーティー会場にいた筆者は最初、人々が過剰反応をしていると思った。ガールフレンドと筆者がその場を立ち去ろうと歩き出すと、大勢の人々が走って自分たちを追い抜いて行った。
警官隊によるバリケードを見たとき、筆者はこれが深刻な事態であることに気付いた。トンネルの入口、歩道の出口、モールの駐車場の周辺など、会場の周り全てを警官の一群が取り囲んでいた。警官は大きなプラスチック製の盾と警棒を持っていた。銃を携行する上級警官は、拡声器を通じて英語と中国語でどなった。その場に座り、携帯電話のカメラを使うな、というのだ。
そのとき、筆者は警官に協力するしかないことを悟った。大半の人々も協力したが、警察と口論になってその場を去ろうとした人たちは手錠をかけられた。
筆者の友人は仰天して、「こんなことは今までになかった」と言った。
われわれは1時間近く地べたに座り、次に何が起こるのかと不安に思いながら過ごした。大半の人々は、全員を逮捕するには参加者の数が多すぎるだろうと思っていた。
だが最終的に、警察官たちは参加者たちを整列させ、会場の外にとめてあった十数台のバスに乗せた。筆者のバスにはガールフレンドと友人2人を含む50人ほどが乗り、警察署に連れて行かれた。そこで、ロビーの一角に仕切りを設け、そこから動かないようわれわれに告げた。警察はわれわれにパイプ椅子を用意し、パスポート情報を聞いてきた。在留外国人は常時パスポートを携行することになっている。だが、その晩は、パスポートを携行していなくても、パスポート番号を言うことができれば、叱責されることはなかった。幸運なことに、筆者はパスポート番号をちゃんと覚えていた。
警察官はわれわれの手に番号を書いた。筆者は43番だった。ある英語を話す警官は「逮捕はされない」が、24時間拘束される可能性があると告げた。
そして、薬物のテストが始まった。全員カップに尿をするよう告げられたが、プライバシーなどお構いなしだった。男性は背中を向けることができたが、全ての小部屋にはカメラが設置されていた。ガールフレンドは女性警官から監視されたという。全員が数字の書かれたカップとテストキットを持った姿で写真を撮られた。
結果はすぐに出たのだろう。なぜなら警察はすぐに筆者の米国人の友人1人を特定したからだ。この友人は静かに警察署の別の場所に連れて行かれた。その晩、われわれが再び彼の姿を見ることはなかった。友人は後日、大麻の陽性反応が出ていたことを認めた。
それは長い夜だった。朝日が差し込み始めると、人々は落ち着きを失っていった。英語、中国語、それにスペイン語の不平不満の声はだんだんと大きくなっていった。われわれはパイプ椅子に何時間も座らされて寝ることもできず、不愉快な思いをしていた。われわれは連行されなかったため、薬物のテストで陰性だったことが分かったが、いつここを出られるかを教えてくれる人はいなかった。すると、警察はようやく、パスポート番号を照会して、不法滞在でないかを確認していると告げた。
午前10時近くになって警察はわれわれの番号を呼んだ。この場を去ることがようやく許された。
言うまでもなくガールフレンドと筆者は喜んでその場を後にした。これ以上のトラブルに巻き込まれなくて良かったと思った。だが、まだ拘束されている友人のことがとても気にかかった。次の週になって、その友人が5日間拘束されたことを知った。友人のその後の説明によると、薬物対策のプレゼンテーションを見たり、味のない粥を食べたりしなくてはならなかった。友人の雇用主(駐在員向けのウェブサイトを運営する)は彼が拘束されているとの報告を受けた。それは彼にとって恥ずかしい話ではあったが、解雇はされなかった。もっと重要なことに、強制送還もされなかった。彼は「罰金を科されることさえなかった」と言う。これ以降、われわれにとっていつもの駐在員生活が再開した。
南山区のプレスリリースによると、その晩に拘束されたのは491人で、うち薬物テストで陽性反応が出たのが118人、不法滞在が93人だった(なぜ薬物テストで陽性だったにもかかわらず、その場を去ることができたとみられる人が25人いたかは不明)。拘留された93人のうち50人は外国人だった。
最初の苦難は去ったが、今後何が待ち構えているかは分からない。恐らく、拘留された50人の外国人の一部は、次回のビザ申請時に問題にぶつかるだろう。中国では、規則があいまいであることが多い。旅行者や駐在員にはアドバイスが沢山存在する。注意しても注意し過ぎることはない、というのだ。今回の強制捜査には恐らく、犯罪者を捕まえるのではなく、メッセージを送る狙いがあったのだろう。だとしたら、われわれはそのメッセージを確かに受け取った。
(注)筆者のレイ・ヘクト氏は深センに本拠を置く米国人作家。rayhecht.com でブログを書いており、小説「South China Morning Blues」(ブラックスミス・ブックスが出版)の筆者でもある。
By RAY HECHT
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